中国で4,000万人が涙した、文化大革命時代の“青春”

【しゃベルシネマ by 八雲ふみね 第601回】

さぁ、開演のベルが鳴りました。
支配人の八雲ふみねです。
シネマアナリストの八雲ふみねが、観ると誰かにしゃベりたくなるような映画たちをご紹介する「しゃベルシネマ」。

今回は、4月12日に公開された『芳華 Youth』を掘り起こします。


時代に翻弄された、若者たちの切なくも美しい青春ストーリー


『女帝(エンペラー)』『唐山大地震』などを手がけた中国を代表する映画監督、フォン・シャオガン。ヴェネチアやトロントなど数々の国際的な映画祭で映画賞を獲得した巨匠の最新作『芳華 Youth』が、日本でも公開されました。

中国では公開されるやいなや2週連続1位を獲得。1ヵ月で興行収入230億円という爆発的な大ヒットを記録しました。“4,000万人が涙した”という青春ラブストーリーには、実はフォン・シャオガン監督の並々ならぬ想いが込められています。


文化大革命、毛沢東の死、そして中越戦争など、本作の舞台は、国を揺るがす事件が立て続けに起こった1970年代。時代のうねりに翻弄されながらも、軍で歌や踊りを披露し兵士たちをときに慰め、ときに鼓舞する役割を担う文工団員として逞しく生きる若者たちの姿を、美しくも切なく映し出しています。

1958年生まれのフォン・シャオガン監督は、かつては軍の歌劇団である文芸工作団(=文工団)に所属し、その後、北京電視芸術中心でアート・ディレクターを務めたという経歴の持ち主。そんな自らの若き日に記憶を蘇らせ、同じく文工団に所属した経歴を持つ作家ゲリン・ヤンの原作をもとに満を持して映画化したのが、この『芳華 Youth』。フォン監督自身の青春が描かれていると言っても過言ではない作品なのです。


メインキャストには、あえて7人の新人を選んだというフォン・シャオガン監督。「彼らの未熟さと無垢さを求めた」というフォン監督の言葉どおり、当時の若者たちが持つ、純朴で真っ直ぐな美しさを、あますところなく再現しています。

若い出演者たちは、撮影の合間にフォン監督から文工団に所属していた頃の思い出話を聞くことも度々あったとのこと。彼らの証言によると、撮影中、過去の幸せな日々に思いを巡らせたフォン監督が、モニターの前で涙することもあったとか。監督にとってこの映画がいかに特別な存在であるかを伺い知ることができるエピソードです。


「長い年月を経て多くのことを忘れても、文工団での生活を忘れることはありませんでした。映画監督として60歳を迎えたとき、この作品を撮りたいと思いました」と本作への思いを語る、フォン・シャオガン監督。中国の激動の時代に、これほどまでに眩しい青春があったのかと気づかされる、まさに青春のときめきが凝縮された1作です。


芳華 Youth
2019年4月12日(金)から新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次ロードショー
監督・製作:フォン・シャオガン(馮小剛)
製作:ワン・チョンジュン(王中軍)&ワン・チョンレイ(王中磊)
脚本・原作:ゲリン・ヤン(厳歌苓)
音楽:チャオ・リン(趙麟)
出演:ホアン・シュエン(黄軒)、ミャオ・ミャオ(苗苗)、チョン・チューシー(英語名:エレイン・チョン)(鐘楚曦)、ヤン・ツァイユー(楊采ト)、リー・シャオファン(李曉峰)、ワン・ティエンチェン(王天辰)、ヤン・スー(蘇岩)、チャオ・リーシン(趙立新) ほか
??2017 Zhejiang Dongyang Mayla Media Co., Ltd Huayi Brothers
Pictures Limited IQiyi Motion Pictures(Beijing) Co., Ltd Beijing Sparkle Roll Media Corporation Beijing Jingxi Culture&Tourism Co., Ltd
公式サイト http://www.houka-youth.com/


八雲ふみね
映画コメンテーター・DJ・エッセイストとして、TV・ラジオ・雑誌など各種メディアで活躍中。
機転の利いた分かりやすいトークで、アーティスト、俳優、タレントまでジャンルを問わず相手の魅力を最大限に引き出す話術が好評で、絶大な信頼を得ている。
初日舞台挨拶・完成披露試写会・来日プレミア・トークショーなどの映画関連イベントの他にも、企業系イベントにて司会を務めることも多数。
トークと執筆の両方をこなせる映画コメンテーター・パーソナリティ。
八雲ふみね 公式サイト http://yakumox.com

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