周防正行〜サイレント映画時代、客は映画よりも“活動弁士”の話を聞きに行った

黒木瞳がパーソナリティを務める番組「あさナビ」(ニッポン放送)に、映画監督の周防正行が出演。最新作の『カツベン!』について語った。

ニッポン放送「あさナビ」

黒木)今週のゲストは映画監督の周防正行さんです。周防正行監督の最新作映画、「カツベン!」が公開中です。5年ぶりとなるオリジナル作品について、監督からお話を聞かせてください。

周防)日本に映画が入ったのは明治の終わりなのですが、そのときに「写真が動く」と言って、みんながびっくりしました。当時の映画はモノクロで、音もついていなかった。いままで動く写真を見たことがなかったので、一気に人気が広がるのですが、そのときにスクリーンの横に人が立って、映画の内容や、どうして写真が動いて見えるのかを説明していた人たちがいたのです。それが活動弁士、いわゆるカツベンと言われる人たちです。彼らの青春時代を、活動写真のアクションとユーモアのセンスでつくったのが今回の映画です。この映画を観ると、活動弁士の仕事ぶりもよくわかるけれど、初期の映画が持っていた楽しさもよくわかります。当時の映画にあるアクションやユーモアは、いまの映画とちょっと違うアクションとユーモアなのです。そこを楽しんで欲しいと思っています。

黒木)サイレント映画の横にカツベンという人が立って、説明したりセリフを言ったりするのですが、お客様の入りが如実にわかるのですね。面白いといっぱい入るし、面白くないとヤジが飛ぶ。

周防)カツベンは映画館の専属だったので、引き抜き合戦もあったのです。映画を観に行くというより、弁士の話を聞きに行くという感覚も強かったのだと思います。

黒木)やはりカツベンは、その時代のスターだったわけですね。

周防)そう言う人もいます。

黒木)そしていま、日本に十数人いらっしゃる。それも驚きなのですけれども。

周防)ずっとつないで来た人がいるのですよ。澤登翠さんという人が第一人者です。彼女の貢献は素晴らしいです。その師匠である松田春翠さんが、戦後日本でなくなりかけていたサイレント映画を集めてくれた。マツダ映画社というところには、たくさんの活動写真やフィルムが残っています。

黒木)この映画にもたくさん出て来ますが、そういうところから選んで監督が編集なさったのですね。

周防)再現しました。撮り直したのです。現存するものは、そっくりに撮り直しました。いちばん多いのは、撮られた記録はあるのに、フィルムが残っていないというものです。「こんな感じだったのだろう」と、僕が監督して撮りました。あと、この映画のためにどうしてもつくらなくてはいけない無声映画は、もちろん片島さんの脚本で僕が撮りました。『火車お千』という短編ですけれど、1本のきちんとした無声映画になっています。

黒木)そうなのですか?

周防)映画のなかでは一部分しか使っていませんが、短編映画として成立しています。

黒木)それだけで作品になっているのですか?

周防)はい。それを、いまの活動弁士さんに使って欲しいと思っています。

黒木)そういう上映会も今後、考えられると思いますけれども。『カツベン!』の主演は成田凌さん、共演は黒島結菜さん。清らかで本当に素敵な方ですね。

周防)そうでしょう。しかし、とても自信なさげで、「私はここにいていいのか」というような。可愛くてきれいで、そのままニコニコしていれば十分だろうと思う子なのに、きちんと青年らしい悩みがあったのですよね。それがこの映画のヒロインの役柄にぴったりだなと思って、彼女にお願いしました。

黒木)ぴったりでした。永瀬正敏さんもぴったりでした。他にも高良健吾さん、井上真央さんなど。大人になった真央ちゃんが見られますよね。

周防)井上さんには力を抜いて、遊んでほしいと思って。

黒木)音尾琢真さん、竹野内豊さん、そしてお馴染みの竹中直人さんや、渡辺えりさん、小日向文世さん。常連のキャストの方々も出演なさっていて、草刈さんも出演されているのですよね。

周防)ええ。探してください。

撮影・下村一喜

周防正行(すお・まさゆき)/映画監督

■東京・目黒区出身。1956年生まれ。
■立教大学在学中に、高橋伴明監督の助監督を務めるようになり、以降、若松孝二監督や井筒和幸監督の作品に助監督として携わる。
■1984年に小津安二郎へのオマージュを含んだピンク映画で監督デビュー。
■1989年に『ファンシイダンス』で商業映画初メガホン。
■1992年の『シコふんじゃった。』で、日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめ、最優秀監督賞、最優秀脚本賞を受賞。
■1996年には大ヒット作『Shall We ダンス?』公開。日本アカデミー賞で作品賞・監督賞・脚本賞など13部門を総なめ。
■2006年には痴漢の冤罪裁判を描いた『それでもボクはやってない』、2011年にはバレエ作品を映画として収めた『ダンシング・チャップリン』、2012年には終末医療を題材にしたヒューマンドラマ『終の信託』、2014年には花街で成長する舞妓の姿を描いた『舞妓はレディ』を監督。
■最新作は、2019年12月13日公開の『カツベン!』。大正時代に全盛だった無声映画を個性豊かな語りで彩った「活動弁士」が主人公。活動弁士を志す青年・俊太郎を成田凌が演じ、ヒロインを黒島結菜が演じる。

ENEOSプレゼンツ あさナビ(12月13日放送分より)
FM93AM1242 ニッポン放送 月-金 6:43-6:49

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