「銀行はなくなるかも」岸博幸らが予想する金融の未来

「銀行はなくなるかも」──そんな驚きの発言も飛び出した。8月26日、都内にて、慶應義塾大学大学院教授・岸博幸氏と「じぶん銀行」代表取締役社長・臼井朋貴氏が、金融の未来について対談した。

KDDIと三菱UFJ銀行が共同出資で設立したインターネット銀行・じぶん銀行がPMI(購買担当者指数)の提供に応じたことがきっかけで開催された今回の特別対談。金融のプロふたりが、キャッシュレス化や同銀行らが開発したAI(人工知能)外貨予測、今後の投資の形などを話し合った。

キャッシュレス化が進む金融業界。技術革新によって業界の壁はなくなり、異業種の参入も目立つ。銀行の差別化も難しくなり「お客様が金融を選ぶ時代になった」と臼井氏は言う。

金融とITを組み合わせた「フィンテック」が今後の鍵を握る。元産経官僚の岸氏は「金融の世界は僕的な表現を使えばクソな業界だった。規制が厳しく、銀行や証券など分かれていて、過去は殿様商売だった」と話す。しかしデジタル技術が“侵食”し、メガバンクは「変わらざるを得なくなった」。フィンテックにより、金融業界のビジネスモデルはここ10〜20年で大きく変わると主張した。

もっと金融を身近なものに──。同銀行とフィンテックベンチャー「AlpacaJapan(アルパカジャパン)」が共同開発した「AI外貨予測」は金融を楽しんでほしいとの思いが込められていると、臼井氏は言う。同機能は分かりやすい「顔文字」で外国為替相場を表現。上がる予想は笑顔、下がる予想は困り顔だ。「的中率は70%」と臼井氏は胸を張る。

岸氏も「フィンテックの先駆け」と同銀行を評価し、「AIの起用は金融への参加に足踏みしている人たちのハードルを下げてくれる」と支持した。

同銀行は7月1日より、PMIの提供を始めている。PMIはGDPの先行指数で、日本経済発展の状態と見通しを評価する。製造業やサービス業の購買担当者による新規の発注を指数化したもので速報性が高い。国内インターネット銀行としては初の試みだ。

プロ向け指標のイメージが強いPMIだが、同銀行は金融リテラシーが低い一般ユーザーに向け、今後は取り組んでいくという。岸氏は「この指数を一般の人が分かるようにしてもらえば、金融投資をする際に大きな参考になる」と期待を込めた。

両氏は、投資を含めた資産運用を多くの人に勧める。日本特有の「貯金しとけば安心」の神話はすでに崩壊しているからだという。

臼井氏が「銀行の立場で言うのはおかしいが、低金利の定期預金では将来食べていけない。人生100年時代といわれる中で、投資をして資産を作らねばならない流れは間違いなくある」と主張すると、岸氏は「老後2000万円問題もあり、年金が足りないことは分かっている。政府は国民が困らないような環境整備をしなければいけないのに十分ではない。米国では常識の金融教育も日本ではされていない」と話す。

自分の身は自分で守る。そのために金融を身近に感じ、無理のない範囲での積極的な資産運用が必要になる。両氏の共通意見だ。

最後に臼井氏は「枠にとらわれずイノベーションを起こしたい。従来にない発想で親会社のKDDIと連携して金融サービスを作りたい。業界はどんどん様変わりし、もしかしたら銀行はいらなくなるかもしれない。都市銀行があれだけ減るなんて、誰が想像したのか。柔軟な考えで未来を見据えていきたい」と今後の展望を語った。

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