深く神秘的な世界観を期待させるデザイン〜TNT『オール・ザ・ウェイ・トゥ・ザ・サン』〜平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)連載

音楽と絵画を愛するお笑い芸人・平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)が美術館の館長となり、自身が所持する数々のCDジャケットのなかから絵画的に見て優れているもの、時に珍しいものをご紹介する連載。


第110回:深く神秘的な世界観を期待させるデザイン


今回ご紹介するのはこちら。

TNT『オール・ザ・ウェイ・トゥ・ザ・サン』(2005年)

以前残念なジャケットの回で一度紹介した、北欧は森と湖の国ノルウェーのハードロックバンド(一度は行ってみたい国)。

1980年代にまさに北欧の澄んだ空気と透明感を内包した名作『インテュイション』で高い評価を得た彼らだが、1990年代には多くのハードロック/ヘヴィメタルバンドがそうであったように、彼らも迷走期に突入(以前紹介した1992年の『リアライズド・ファンタジーズ』は個人的には最高だったが)。一度は解散状態となるが、2003年に活動を再開し、アルバム『マイ・レリジョン』で再びかつての勢いを取り戻す。そして『マイ・レリジョン』から約1年半、復活第2弾となるのがこの『オール・ザ・ウェイ・トゥ・ザ・サン』である。

1970年代的なグルーヴ感のあるハードロック要素と、北欧のバンドらしい美しいメロディが高い水準で融合した名盤で、個人的にはいわゆる“メロディアスハードロック”と呼ばれるうちの数ある名盤のなかでもかなり上位に置きたいアルバムである。復帰と脱退をやたら繰り返す唯一のアメリカ人シンガー、トニー・ハーネルの超絶ハイトーンボーカルは健在。まるで20代のような、いやむしろやかましい小学生のような若々しいエネルギーを発散させており、いかにも1980年代を駆け抜けたアメリカ人ハードロックシンガーらしい彼の金切り声が、北欧のバンドであるTNTの大きな個性になっているのは間違いない。ルイ・アームストロングの『What A Wonderful World』を彼ら独自の解釈で見事にカバーしきっているあたりにも当時の気力の充実度がうかがえる。

ジャケットはまさにアルバムのタイトルどおり太陽に向かって手が伸びている絵で、逆ピラミッド型のバンドロゴがかっこよく映えている。深く神秘的な世界観を期待させるデザインであり、見事に期待どおりの内容であったのが嬉しい。アール・ヌーヴォー風を取り入れたブックレットの中のデザインもイカしている。

個人的な好みにぴったりですべてがちょうどいいアルバムなので、こういうWhat A Wonderfulアルバムをもっといろいろ聴きたいのだが、ありそうでなかなか見つからないという不思議。これ系のあったら誰か紹介してくれ。ボーカルは小学生じゃなくていいから。

あとノルウェー行きたい。

平井“ファラオ”光(馬鹿よ貴方は)

ひらい“ふぁらお”ひかる●1984年3月21日生まれ、神奈川県出身。2008年に新道竜巳とのお笑いコンビ“馬鹿よ貴方は”を結成。数々のテレビ/ラジオ番組に出演するほか、『THEMANZAI2014』『M-1グランプリ2015』の決勝進出で大きな注目を集める。個人では俳優やナレーターとしても活躍。音楽・映画観賞や古代エジプト、恐竜やサンリオなど幅広い趣味を持つ。

関連記事(外部サイト)