「人権ない」「障害者」eスポーツ界で相次ぐ不適切発言…背景にあった業界の“未成熟さ”

「人権ない」「障害者」eスポーツ界で相次ぐ不適切発言…背景にあった業界の“未成熟さ”

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ゲーム配信中に不適切発言をしたとして、批判を浴びたプロeスポーツチーム「REJECT」のSaRa選手(20)。

物議を醸した発言は、5月1日に同チームに所属する他選手のゲーム配信中に起きた。SaRa選手の「なんでそこクリアリングすんの? 障害者やろマジで」との発言が流れ、これを聞いた選手は「SaRaさん? 配信つけてるよ」と注意していた。

ネット上で批判を受け、SaRa選手は翌2日にTwitterで謝罪。《特定の誰かに向けた言葉ではなかったとはいえ、プロ選手として、社会人として、あるまじき発言をしてしまったことを深く反省し、チームから正式な処分があるまで活動を自粛します》とツイート。

3日に「REJECT」は公式サイトで《当該発言は、同じ施設内で別のゲームをプレイ中にボイスチャットを付けていない状態で発したものであった》とし、SaRa選手の聞き取り調査を行ったと報告。

SaRa選手の処分については、《2022年12月末までの選手活動停止 当該期間の選手報酬全額カット 社会貢献活動への参加》の3点を挙げている。

このような出来事は最近でもあった。今年2月15日、プロゲーマーのたぬかな選手(29)が配信中に、次のように言い放ち炎上騒動となった。

「(男性の身長が)170ないと、正直、人権ないんで。170センチない方は『俺って人権ないんだ』って思いながら、生きていってください」

瞬く間に批判が相次ぎ、たぬかな選手は同日深夜にTwitterで謝罪。《高身長が好きって言いたいだけでした…いつもの配信の身内ノリで言葉が悪くなっちゃいました、ごめんなさい〜…》と投稿したものの、“反省しているように思えない”と火に油を注ぐことに(投稿は現在、削除済み)。

その後、スポンサーだった「レッドブル」は、公式サイトからたぬかな選手のページを削除。たぬかな選手は所属していた「CYCLOPS athlete gaming」からも、契約解除されたのだった。

■eスポーツ界で不適切発言による炎上が相次ぐ理由

そんなSaRa選手とたぬかな選手は、eスポーツ界では人気を誇る存在だった。

「両者とも大会で好成績を収めるなど、チームを牽引する存在でした。たぬかな選手はメディアに登場する機会も多く、『プロゲーマーの社会的地位が向上することを目標にしています』と語っていました」(ゲーム業界関係者)

しかし、なぜeスポーツ界にこのようなトラブルが相次いでいるのだろうか?

「eスポーツ界自体が新しく、プロゲーマーの世界がどのようなものなのか、当事者も含めて確立していないのでしょう」と指摘するのは、ネットリテラシーに詳しい国際大学GLOCOM客員研究員の小木曽健氏。eスポーツ界で炎上騒動が起こっている背景について、小木曽氏に話を聞いた(カッコ内は全て小木曽氏)。

そもそも「eスポーツ」という言葉が日本で使われ始めたのは、’00年。日本eスポーツ協会設立準備委員会が’07年に発足し、徐々に大会が開かれていった。さらに一般社団法人日本eスポーツ連合が設立されたのは’18年のことで、業界の歴史は浅い。小木曽氏はこう続ける。

「例えば、昔から歴史のある芸能界やプロスポーツ、ビジネスといった、そういう分野と比べてあまりにも歴史が浅い業界で、そこに携わっている人たちも新しい人たちなんですね。いままでなかった仕事、業界なので、どういう過程で一般人がその業界に入って、一人前になっていくのかというプロセスが出来上がっていないように思います」

「『人権ない』『障害者』といった発言をしてはいけないというのは、『人を殴ってはいけない』と同じくらい言うまでもなく当たり前のこと」と指摘する小木曽氏は、こう解説する。

「完全にプライベートな時間に、今回のような問題発言をする人がいても驚きませんが、それはオン・オフの使い分けという、社会人としての基本動作を身に着けていることが前提です。炎上してしまったプロゲーマーたちは、そういった振る舞いを身に着けることなく、表舞台に立ってしまったのだと思います」

さらに業界側に対しても、「若者たちをプロゲーマーとして表舞台に出した時に、どのようなリスクがあって、どういう指導をしないといけないか、あるいは指導をしないことによってどういう事が起きてしまうのか。そのような把握が蓄積されていない段階にあるのでしょう」とも指摘。

■「ネット上で発言することへの認識が不十分」

確かに「REJECT」ではSaRa選手だけでなく、所属選手は10〜20代が占めている。公の場で発言するリスクを十分に理解しないまま人前に出ることへの懸念を、小木曽氏はこう語る。

「フォローが必要な人物を表に出しているのに、フォロー、サポートが足りていない。プロゲーマー本人も、アマチュアだった時と同じノリで振る舞ってしまう。リスクやスポンサーがついている意味、お金が回っていることの意味など、十分に理解していないように思います。プラベートのSNS感覚で振る舞ったり、情報発信したりしてしまっているのでしょう」

果たして、選手に対する指導不足が原因なのだろうか? 小木曽氏は、指導以前に“業界・選手間における認識の問題”だと読む。

「不適切発言について、指導者側が“わざわざ注意しないといけない”という認識が足りていなかったように思います。ただ、そこまで踏み込んでフォローしないといけない若者たちが、スポンサーを絡めて第一線に出ていることは事実です。

大人も子供も含めて、ネット上で発言することへの認識が不十分なのだと思います。『そんなこと言わなくてもわかるだろう』という思い込みと、『そんなこと言われないとわからないよ』という人たちが融合してこういうトラブルに発展してしまったのでしょう」

これまでの炎上騒動を教訓に、eスポーツ界は変わっていけるだろうか。

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