女芸人の性別いじりは必要なのか?お笑い業界の旧体質を考える

女芸人の性別いじりは必要なのか?お笑い業界の旧体質を考える

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現在、業界の根本的な改革を求められているお笑い界。先月には、その旧体質を象徴するようなこんな事件があった。若手お笑いコンビ「カフカと知恵の輪」の小保内太紀(26)は、ライブのフリートークで、相方の女性が、ほかの男性芸人から「エロい」などのいじりを受けたと6月15日にTwitterに投稿した。「カフカと知恵の輪」は今年組み始めた若いコンビであるにも関わらず、このツイートは6,000回以上リツイートされ、90件を超えるコメントが付いた。

今回の話題以外にも、女性芸人への容姿や性別によるいじりは日常化していて、異を唱えることすら最近までは難しかったのではないだろうか。

■女性芸人のなかには“性別いじり”にNOを突き付ける人も

そんな状況に対して、ふとしたときに異を唱える女性芸人もいる。Aマッソ・加納愛子(30)は、2018年2月10日に放送された『ゴッドタン』(テレビ東京系)でこう語った。

「面白いと思われたいのに、番組アンケートが全部『彼氏いますか』『つきあった人数何人ですか』とかしかない」
「デブとブスしか求められてないんですよ、結局」

また、にゃんこスターのアンゴラ村長(25)は、2017年11月29日放送の『1周回って知らない話 旬の女芸人&大物俳優は謎だらけSP』(日本テレビ系)で、尼神インターの誠子(30)から「『かわいい芸人出てきた』みたいに言われてますけど、あんた、そないやで」と言われると、「顔とか生まれとか、変えられないものをさげすむのはちょっとなんか古い」と返して話題となった。

これらのエピソードは、バラエティ番組で新鮮なエピソードやバトルを求められて出てきたものともとれるし、2017年の古い話を何度も記事で取り上げて、その話題のイメージだけが独り歩きすることは申し訳ないとも思う。しかし、これも彼女たちが感じていることの一部だし、そんなことを気にせずに、思う存分、自分の追求する笑いが作りたいというのが本音ではないだろうか。

■“いじり”が正当化されるのはお笑い業界だけ

こうしたエピソードからお笑い業界の旧体質が話題になると、「男性芸人だって姿かたちでいじられている」「本人もそれがキャラクターでいじられておいしいんだから、外部が言うことではない」「そんなしばりがあると面白くなくなる」という意見も出てくる。日常ではこんなことはやめようと言われていることが、なぜかお笑いではまだまだアリになっている状況なのだ。

これは、テレビのひな壇や、たくさんの芸人が出るライブでのトークコーナーで、「いじる」ことがお約束になっていたり、誰もが笑いのために、弱点でもなんでもさらけだし、とにかくウケることがその場にいる人たち全体への貢献となると考えているという状況から波及しているのではないだろうか。

■若手芸人は“女芸人だから”と思いこまない

しかし、こうした状況に異を唱える若手芸人も少しではあるが増えてきた。冒頭で紹介したカフカと知恵の輪の小保内は、ハフィントンポストのインタビューに対し、こう語っている。

「女性が舞台に上がると『女芸人』とくくられてしまうんですよ。お笑いにおいて女性が少ないという男女比率的なこともあって、『女である』がキャラのように扱われてしまうと感じていました」

また筆者が雑誌『芸人芸人芸人』(コスミック出版)でゆりやんレトリィバァ(28)に取材した際“女芸人枠”でくくられることについて「女が面白くないってことはないし、女やからできることもあるし、女捨てることもないし」「最近はほんと『関係ないね!』って感じで」と語っていた。

■お笑い業界の“旧体質”は徐々に変化

お笑いの世界を離れて世の中や特にSNSを見てみると、容姿や性別でいじることや、女性にだけ強いられる様々なことに対して、NOを言う人々は増えている。また、実際にも、多くの若手芸人(男女ともに)のコンテストなどで見るネタの中にも、容姿や性別を笑いにするネタはかなり減っていて、それがなくても(ないからこそかもしれないが)笑える、精度の高いネタの多さに舌を巻く。

そんな状況があるからこそ、「テレビの容姿いじり、性別によるいじりが多くて見るのをやめた」という話を聞くと、個人レベルでのネタづくりにおいての意識は変わってきているのにと、お笑いファンとして「残念」な気持ちもなる。

自然な流れで変わろうとしている芸人、いじりや因習なしで次々と面白い芸を作り出している芸人のためにも、お笑い界、テレビバラエティも変わるべき部分では変わっていかなくてはならないのではないだろうか。

【PROFILE】
西森路代(にしもり みちよ)
ライター。1972年愛媛県生まれ。大学卒業後、テレビ局でのOL時代を経て上京。編集プロダクション勤務、ラジオディレクターを経てフリーライターに。俳優や監督へのインタビューやテレビ、映画についてのコラムを主に執筆。現在、朝日新聞、TVBros.などで連載を持つ。

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