松井玲奈「闇が深い時がありました」と苦笑い 食にまつわる初エッセイ

飾らない自分の言葉で、なんと豊かに表現できる人なのだろう。松井玲奈さんの食にまつわる初のエッセイ集『ひみつのたべもの』は、世代・性別を問わず、多くの人に彼女の魅力を届けるに違いない。本誌で連載した25回分に加え、25本を書き下ろした贅沢な一冊だ。

「エッセイを書くことが好きで、連載を持つことは夢のひとつだったので、お話をいただいた時は“あ、実現する”と嬉しかったです。食べ物にまつわる話が大好きなので、私から食に関するエッセイにしたいとお願いしました」

幼い頃から現在までの様々な食の思い出。


小さい頃の食の思い出から一人暮らしでの自炊、友人との食事、旅先の食べ物、さらに……語る内容のバリエーションの豊かさと、話の広げ方の上手さに驚く。

「生きていく上で食は切り離せないものだから、いろんな切り口がある。公開日記みたいな感じで届けることができたら、と思っていました」

松井さんは小説執筆ではあえて自分とは異なる人たちを描いている。だがエッセイとなると、まさに自分自身を書くことになる。

「小説は自分とは切り離して楽しんでもらいたいと思いますが、それとは別に、長いことブログを書いていて、それも好きだったんです。何かを伝えたい気持ちもあったし、私自身が記憶力がよくないので書き留めておきたいという気持ちもありました。今回はエッセイという形で、自分という人間にもいろんな面があって、こういうことを感じているんだなって、受け取ってもらえたら嬉しいです」

というように、松井玲奈という多面体が見えてくる本作。

もちろん、料理をする話も多い。白菜餃子やホイル焼きなど、作り方にも簡潔に触れられていて、これなら読者もすぐ真似できる。そのなかで意外なメニューが、「ランチパック」の深煎りピーナッツ味で作ったフレンチトースト。

「家にあるもので何が作れるのか考えるのが好きで、これはある日ひらめいたんです。すごく美味しいですよ(笑)。ランチパックは優秀で、中のピーナッツクリームがとろっと溢れ出て、お店の味みたいになる。後で知ったのですが、前にSNSで話題になったらしくて、知っている人は知っていたみたいです」

高級食材ではなくランチパックというところに親しみをおぼえるが、コンビニの話題も結構出てくる。

「愛知の実家から東京に通ってホテル生活をしている頃、忙しくてコンビニの新商品を見ることしか楽しみがないという、闇が深い時がありました(笑)。これは新しいなとか、これは愛知では売っていないなと確認していました。今でもコンビニに新商品が入る火曜日は楽しみです」

『ひみつのたべもの』 目玉焼きの食べ方、家族との食事、苦手な食べ物、好きなお店……。幼少期から現在に至るまでの食にまつわるエピソードを素直な言葉で綴り、飾らない人柄と文才がにじみ出るエッセイ集。マガジンハウス 1540円

まつい・れな 芸能界で幅広く活動するなか、2019年に短編集『カモフラージュ』で小説家デビュー。第2作となる連作集『累々』(共に集英社)が今年刊行されたばかり。主演映画『幕が下りたら会いましょう』がこの秋公開予定。

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※『anan』2021年4月28日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・山口香穂 ヘア&メイク・白石久美子 インタビュー、文・瀧井朝世

(by anan編集部)

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