テイラー・スウィフトが素顔をさらけ出す…おすすめ音楽ドキュメンタリー5選

生き様をさらけ出す姿に共感する、音楽ドキュメンタリー。アーティストたちも煌びやかなだけではない、本音を語ってくれる時代に。彼ら/彼女らの姿から深刻な社会問題と向き合う。

葛藤や悩みを隠さない。“素顔”に共感する。


最近は時代を象徴するアイドルやシンガーに密着した作品も続々とリリース。なかには孤独やプレッシャーを切実に吐露するアーティストも。音楽エージェントの竹田ダニエルさんはこう説く。

「今の時代、かっこいいところだけを切り取って神格化するような作品は、誠実さに欠けます。憧れや尊敬を抱く“スター”だって私たちと同じ人間。ゴシップやSNSでの断片的な切り取りではなく、自分自身の言葉で価値観やメッセージを伝えてくれるドキュメンタリーでなら、ファンとも信頼関係を築くことができると、今、一つの表現方法として見直されています。精神的な葛藤やリアルな悩みをさらけ出し、業界内でのジェンダー差別や性的暴行について声を上げることはむしろ、人々の共感を呼び、彼女たちの魅力の一つに。特に女性スターは、容姿や私生活に至るまで、社会から常に厳しい目を向けられてきました。フェミニズムや人権に関する理解が進み、彼女たちが不当な立場に置かれていること、彼女たちが受けている被害は許されるべきではないと認識されるようになり、ファンもその過酷な現実について、知る必要性を感じています。大人に操られるのではなく、問題に対して自分の意思を表明すること、そして“個人”として自由に活動することこそが、現代のアーティストにとって“表現”であり、“当たり前”のことになりつつあります」

“いい子”をやめたテイラー・スウィフトの変化と成長。


『ミス・アメリカーナ』シンガーソングライターとしてだけでなく、政治的発言にも注目が集まるポップアーティスト、テイラー・スウィフト。華々しいキャリアの裏ではルッキズムやセクハラ、SNSでのバッシングなどに苦しめられていた。スターの道を駆け抜けてきた彼女がありのままの姿をカメラの前にさらけ出す。

「“パーフェクトなアメリカ人の模範例”として愛されてきたテイラー。しかし、マイノリティ差別や女性の権利剥奪など許しがたい現実に対し、彼女は自身の影響力をポジティブに活用することを選ぶことに。音楽業界の問題や社会的責任などを時にユーモラスに、時に真剣に語る姿に、リスペクトが湧きます」

2020年/Netflix映画『ミス・アメリカーナ』 独占配信中

伝説のブラックミュージックフェスの映像から歴史を解く。


『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』1969年、NY・ハーレムで、約30万人を動員した音楽フェス「ハーレム・カルチュラル・フェスティバル」。しかしこの歴史的な祭典は映像で記録されていたにもかかわらず、約50年間語られることはなかった。当時の映像をもとに、簡単に黒人の物語や文化を処分してきた歴史への疑問を投げかける。

「音楽やファッション、アートや文化は、いかにして人々の心を動かし、社会や政治に影響を与えていけるのか。コンサートが開催された時代の社会問題が現在でも同じように続いているからこそ、フィルムに映る人々の『自由を求める』悲痛な叫びはきっと現代にも強く響くと信じたくなる!」

監督:アミール・“クエストラブ”・トンプソン 2021年/全国公開中 ?2021 20th Century Studios. All rights reserved.

黒人の誇り、創作の喜びをパワフルなショーで伝える。


『HOMECOMING ビヨンセ・ライブ作品』2018年、コーチェラ音楽祭で行われたライブの裏側を収めた作品。おなじみのヒット曲がビッグバンド仕様にアレンジされ、大きな高揚感に包まれる。偉人たちの言葉も引用し、黒人女性として、初めてヘッドライナーを務めたビヨンセがブラックカルチャーへの敬意とショーに込めた想いを語る。

「言葉を失うほどのスケール感のパフォーマンスを楽しめるのはもちろん、出産後の育児の大変さやリハーサルの過酷さなど、華やかなだけではないビヨンセのストイックさにも胸を打たれます。また、裏方である舞台裏チームやパフォーマンスチームまで脚光を浴びせている点にも愛を感じる!」

2019年/Netflix映画『HOMECOMING ビヨンセ・ライブ作品』 独占配信中

ごく普通の少女がいかにして世界を席巻する歌手になったか。


『ビリー・アイリッシュ 世界は少しぼやけている』メッセージ性の高い楽曲を次々と放ち、グラミー賞主要4部門を史上最年少の18歳で獲得したビリー・アイリッシュ。成功の裏で彼女の世界は激変し、精神的、肉体的なストレスに徐々に蝕まれる。その中で、家族の愛が彼女を支えていた。自身の考えや家族をさらけ出した自著的ドキュメンタリー。

「SNSに宿る暴力性や若くして著名になったことによるメンタルヘルスへの影響、鬱病や自傷行為、そして音楽との向き合い方を驚くほど率直に語る。彼女は自分のストーリーを自分の言葉で取り戻すために、あえて多くのことをオープンにします。まさに現代の自由で人間的なポップスターの姿」

監督:R・J・カトラー 2021年/Apple TV+で配信中 ?2021 Apple Original Films

ドラッグ、アルコールと闘った夭折の天才シンガー。


『AMY エイミー』2011年、27歳という若さで急逝したイギリスのシンガー、エイミー・ワインハウス。圧倒的な歌唱力でスターダムに駆け上がるも、ドラッグやアルコールに溺れていくエイミー。貴重なプライベート映像や著名人のインタビューとともに、そのドラマティックな人生模様と知られざる素顔をひもとく。

「エイミーの死後に公開され、彼女の薬物依存やアルコール乱用、摂食障害、恋愛関係や家族関係の問題などを赤裸々に取り上げている。今後エイミーのように命を落とすアーティストを減らすために、音楽業界やメディアはもちろん、ファンもどう向き合っていったらいいのかを強く突きつけられます」

監督:アシフ・カパディア 2015年/Blu-ray¥5,217 DVD¥4,180 発売元:KADOKAWA 販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント ?2015 Universal Music Operations Limited.

たけだ・だにえる カリフォルニア州出身・在住のZ世代。フリーランスの音楽エージェントとして活動する傍ら、アメリカ事情、カルチャー、アイデンティティ、社会をテーマにライターとして雑誌やウェブで執筆活動も。

※『anan』2021年9月15日号より。取材、文・浦本真梨子

(by anan編集部)

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