飛行機事故にまさかの陰謀説…音声分析官がブラックボックスで聴いた衝撃の真相【映画】

単調な毎日が続いていると、刺激を求めたくなるものですが、そんなときこそ映画でしか味わえない興奮を楽しみたいところ。そこで、今回オススメするのは、フランスで大ヒットを記録した体感型サスペンススリラーです。

『ブラックボックス:音声分析捜査』


【映画、ときどき私】 vol. 449

ヨーロピアン航空の最新型機がアルプスで墜落したという一報が入り、航空事故調査局の責任者であるポロックが現場に駆けつける。いつもなら、局で最も鋭い聴覚を持つ音声分析官のマチューが同行するはずだったが、天才的なあまり孤立していた彼は外されてしまう。ところが、まもなくしてポロックが謎の失踪を遂げ、マチューが引き継ぐことに。

その後、通称“ブラックボックス” と呼ばれるボイスレコーダーから、テロの可能性を指摘したマチューは高く評価される。しかし、本格的な捜査に乗り出した際に、ブラックボックスからある音声が消えていることに気がつく。テロか、人的ミスか、それとも陰謀か。マチューは、自らのキャリアと命をかけて、真相究明へと突き進むことに……。

『イヴ・サンローラン』などで高く評価され、現在のフランス映画界でも注目の俳優ピエール・ニネが主演を務めていることでも話題の本作。今回は、こちらの方にお話をうかがってきました。

ヤン・ゴズラン監督


2015年の『パーフェクトマン 完全犯罪』に引き続き、ピエール・ニネと再びにタッグを組んだゴズラン監督。本作完成までの舞台裏や影響を受けている日本の作品などについて語っていただきました。

―まずは、航空業界やブラックボックスを題材として選んだ理由から教えてください。

監督 興味を持った理由は、大きく2つあります。ひとつめは、航空業界という世界がとても映画的だと感じたから。飛行機事故を扱った映画はよくありますが、その事故を調査する映画は少ないと思ったので、ぜひ取り上げたいと考えました。

そしてもうひとつは、やはりブラックボックスの存在です。事故が起きた際、メディアでもブラックボックスについては触れますが、それが実際にどういうものなのかというのは、航空業界に詳しい人以外、ほとんどの人が知らないと思います。そういったこともあって、ブラックボックスについて深く掘り下げて語ったらおもしろいだろうと感じました。

―今回は、映画史上初となる国家機関である BEA (フランス民間航空事故調査局)が全面協力しているそうですが、どのようにして協力を得ることができたのですか?

監督 脚本を書き始めた際、自分でいろいろと資料を探して物語を作ろうとしたんですが、技術的な内容を入れるためには、やはり専門家に会う必要があると感じました。そこで、最初は飛行機を製造している会社に連絡してみたのですが、まったく相手にしてもらえず。

そこで、BEAに問い合わせてみたところ、なんと彼らは僕たちに門戸を開いてくれたのです。今回の物語が実際の事件を扱ったものではなく、まったくのフィクションであったことも協力をしてくれた理由ですが、とても親切に対応してくれました。

リアルな部分をきちんと出したかった


―具体的には、どのようなことを教えてもらったのでしょうか。

監督 BEAのスタッフには数年間にわたって何度も話を聞かせていただきましが、たくさんの調査官と会うなかで教えてもらったのは、仕事内容や取り組み方、さらに生活のリズムについてまで。本当にいろんなことをたずねさせてもらいました。

というのも、仕事のプロセスや技術的な面など、できるだけ事実に即したものにしたいという思いがあったからです。本作のストーリー自体はフィクションですが、劇中で描かれている航空業界における問題点というのは、いま現実に起きていることばかり。なので、そこに関してはフィクションではなく、実際に彼らが抱えている問題であると言えます。

―確かに、航空業界の裏側を覗いているようなリアル感がありました。

監督 BEAの事務所というのは飛行場のなかにあり、そこに音響用のラボがあるのですが、劇中でブラックボックスを開ける作業をしているシーンでは、普段本当に使われている場所で撮影しています。メガネをかけた女性がブラックボックスを開けているところが映っていますが、実はあの女性も実際の調査官。本物の場所で、本物の人を使って撮影することで、この作品のリアルな部分をきちんと出したいと考え、そのようにしました。

ブラックボックスを開ける作業には、驚きがあった


―本物へのこだわりは、ぜひ観る方にも注目してほしいところですね。ちなみに、実際にBEAのなかに入ってみて、監督が驚いたことといえば?

監督 やはりそれは、ブラックボックスを開ける瞬間ですね。数年前に海に落ちてしまったブラックボックスを開けているときの映像を見せてもらったのですが、何時間もかけて丁寧にゆっくりと開けているのにはびっくりました。特に何年も前のものだと、慎重に扱わなければいけませんからね。ただ、それを今回の映画でしてしまうと実験映画みたいになってしまうので、同じようにはできませんでしたが、編集ですべての段階をうまく見せられるようしています。

あともうひとつ驚いたのは、ブラックボックスを開ける作業がとても儀式的なものであること。調査員だけでなく、航空業界のいろいろな人が集まって、ものすごい緊張感をのなかで一連の作業を見つめているのです。というのも、メモリーカードのなかには“事故の真実”が入っていることがありますからね。原因を知りたい遺族の気持ちと、内容によっては経済的ダメージを受けるかもしれない業界の人たちの思いという2種類の緊張感が走っていたのは、非常に印象的でした。

どうしてもピエールに演じてもらいたかった


―ピエールさんの演技も素晴らしいです。天才的な聴覚を持つマチュー同様に、彼は役者として天才的な感覚を持っている方だと感じました。

監督 彼には別の作品でも主演を務めてもらったことがありますが、僕が初めてもう一度仕事をしたいと思った俳優がピエールです。今回の脚本を書くにあたっては、彼のことをあてがきして書いたほど。それくらいこの役は彼に演じてもらいたいという強い思いがありました。

なぜなら、彼はとても才能のある俳優なので、マチューが持つ弱さや内面の葛藤といったものをすべて表現できる俳優だと思ったからです。特に今回の役は自分の殻に閉じこもっているようなところがあるだけでなく、物語が進むにつれて神経質でノイローゼ気味になってしまう人物。そういった部分もきちんと演じてもらえる役者にお願いしたかったので、彼を選びました。

日本の歴史や美的感覚に魅力を感じる


―日本のことについてもおうかがいしたのですが、劇中では日本料理屋さんと思われるお店の名前が会話のなかに登場していましたし、前作『パーフェクトマン 完全犯罪』では登場人物が日本に出張に行っていたというくだりがありました。日本に対して特別な思いがあるのでしょうか。

監督 そうですね。10数年前になりますが、何度か日本を訪れたことがありますし、実は若いときに日本人の彼女がいたこともありますから(笑)。僕が日本のなかで大好きなものと言えば日本映画ですが、特に黒澤明監督が好きで、一番記憶に残っているのは思春期のころによく観ていた『天国と地獄』です。

最近で言うと、黒沢清監督のファンでもあります。彼の作品はフランスでほとんど配給されているので、『CURE』『カリスマ』『回路』といった作品がお気に入りです。さまざまなタイプの映画を作る監督ですが、どんな作品でも雰囲気の出し方や人間が持つ不安感といったものを表現するのがとてもうまいので、素晴らしい監督ですよね。ほかにも日本映画には好きな作品はいろいろとありますが、いずれも日本の歴史や美的感覚が非常に魅力的だと感じています。

すべての真実は、音のなかにある!


次々と湧き上がってくる疑惑と衝撃の展開に、息をするのも忘れてしまうほどの没入感を味わえる本作。はたして、あなたは音だけで、真実にたどりつけるか。研ぎ澄まされた聴覚の先に待ち受ける驚愕の真相は、自分の耳で確かめてみて。

取材、文・志村昌美

心拍数が上がる予告編はこちら!


作品情報


『ブラックボックス:音声分析捜査』1月21日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開配給:キノフィルムズ

? 2020 / WY Productions - 24 25 FILMS - STUDIOCANAL - FRANCE 2 CINEMA - PANACHE Productions?Philippe Quaisse Unifrance

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