Awich「全力で愛することを娘から教えられました」 1児の母としての顔

日本のヒップホップシーンを最も沸かせるアーティスト、1児の母、経営者…と様々な“顔”があるAwichさん。アメリカで死別した最愛のパートナーとの間に生まれた愛娘は現在14歳。沖縄と東京を行き来する多忙な日々の中で、大切にしていることとは?

子育てを通して、新しい気づきを得られる。


母として、Awichさんが娘に常日頃から口に出してしっかりと伝えていることがあるという。

「『自分の好きなことを見つけなさい。そのために、自分と、周りと、自分と周りの繋がり、その3つをしっかり観察しなさい』ということを日常的に話しています。何かにつまずいた時、その3つが把握できていれば自ずと解決すると思っているから。学校や社会からは、『普通の中学生だったらこうあるべき』っていうようなことを教えられますよね。そういうボーダーはいらないと思っていて。もちろん娘も道に迷う時はあるので、その時はまた同じ話をします。あと、私が頑張ってる姿を見せることが一番説得力を持つと思うので、その両方を実践していますね」

一方で、Awichさん自身も娘から学ぶことがたくさんあると話す。

「すごくイライラしている時に娘に八つ当たりしてしまったことがありました。その時に『マミーは自分が恵まれていることを忘れないでね』って言われたんです。その言葉はずっと胸に残っています。でもそういうのってお互いさまなんですよね。娘がイライラしている時は『あなたも恵まれてるよ?』って言って『確かに』って落ち着いてくれる時もある。それから、子供って特に小さい頃は、恐れずに親を愛するんですよ。恋愛だと、『相手が自分のことを好きじゃなかったらどうしよう』とか『こんなに愛を見せてもいいのかな』とか思ったりするんだけど、子供にはそういうためらいが全くない。全力で愛することも教えられました」

最近、娘の希望により中学校を転校したことで、一緒に勉強する時間を作るようになったという。

「娘は、つい最近まで私の実家があるエリアに住んで、そこにある学校に通っていました。だけど、どうやら別のマンモス校に移って、その学校で自分の存在感を出したいらしくて(笑)。それで、その学校があるエリアにアパートを借りて転校させました。住所変更して、自分の親にも協力してもらって。どうしてそこまでして学校を移ったかというと、いろんなことを自分で選んでいいと思うし、それは学校も同じだと思ったから。先生だってそう。子供にとってすごく大きな存在ですしね。『どれにしようかな』でいいと思うんです。その代わり、娘も自分が選んだからちゃんとしなきゃいけないっていうことも学んでいく。その過程も大事だと思っています」

そして、転校に伴い、こんなやりとりがあったそう。

「『自分がやりたいことをやるために、マミーとは考え方がちょっと違う、友達の親とか周りの大人たちも安心させてね』ということを話しました。『“あの子だったら友達になるのは大歓迎だよ”って思ってもらって人が寄ってきてくれる人になるためには、例えば勉強もできる方がいいよね?』と。そう言ったら、『確かにそうだね』って言ってくれて、やる気なんです。今はまだ教科書をもらっていないんですが、その学校でどういう単元があるかを調べて、ふたりで勉強の仕方を考えているところです。例えば、小説を読んで考えるっていう単元があるとしたら、これは考察する力を育てることが目的の勉強なんだっていうことをあらかじめ理解したうえで授業を受けた方が理解しやすいと思うので」

Googleカレンダーで学校の時間割を共有し、FaceTimeを通じて単元に向けて相談することだけでなく、“夢考”という時間も作っているそう。

「文字のまま、夢について考える時間ですね。娘が自分で自分のことを考えてそれを文字に書き出している“夢考ノート”というのがあるんですが、その内容を共有しています。10代は自分がやりたいことがコロコロ変わる時期。だからこそ、その時どきの自分の気持ちを記録しておいてほしいなって。『こういうことをやりたい』って思っていたけれど、例えばその気持ちが1週間で変わったということがあったとします。そうしたら、次に別のやりたいことができた時に、『本当にそれが自分のやりたいことか』っていう点について冷静に考えられると思うんです」

精力的に音楽活動を行う中で、子育てのスイッチを入れるタイミングがあるのだろうか。

「人それぞれかもしれないですけど、私は全部が一緒なんです。特に切り替えとかなくて。私にとっての音楽活動は、自分のこと、世界のこと、自分と世界の繋がりを観察する仕事。その上で『人間って何だろう?』『生きるって何だろう?』『愛って何だろう?』って考えて、それを表現する。子育てもそれと一緒です。ただ、ひとりでは子育てできないっていうことを認識することは大事だと思っています。そして、自分の親や近所の方たちに助けてもらえていることを心から感謝する。『それでもいいんだ』って思えることは大きいです。沖縄は『なんくるないさ〜』な感じでみんなが生きてるから、『まあ、いいか! あとでお礼しておこう』で済む(笑)。すっごく適当なんです。でも“適当”って適度に当たってるってこと。そういうマインドで何事も捉えるようにしています」

愛娘・Yomi JahさんはAwichさんのライブにも度々登場。

メジャー1stアルバム『Queendom』。自らの半生を綴ったタイトル曲「Queendom」から始まり、女性をエンパワーメントする「どれにしようかな」や「口に出して」に加え、「GILA GILA feat. JP THE WAVY, YZERR」「Link Up feat. KEIJU, \ellow Bucks」などの豪華客演を招いた楽曲も収録。

エイウィッチ 1986年、沖縄県那覇市生まれ。14歳で沖縄産ヒップホップのコンピアルバムに参加。2007年アトランタに渡り、翌年アメリカ人男性と結婚、長女を出産。夫の他界後、帰国。’20年メジャーデビュー。

※『anan』2022年6月22日号より。写真・澤田健太 スタイリスト・服部昌孝 ヘア&メイク・山田千尋 取材、文・小松香里

(by anan編集部)

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