Awich「性別関係なく、自分がやりたいことを大事にできる人間がかっこいい」

今、日本のヒップホップシーンを最も沸かせるAwichさん。アーティスト、1児の母、経営者と彼女には様々な“顔”があるけれど、まずはアーティストとしての信念や目標、マイルールについて聞きました。

性別は関係なく、やりたいことをやる。


女性をエンパワーメントするファイトソングを何曲も発表しているAwichさん。

「今、私が女性という存在を楽曲でよく取り上げているのは、声を上げられなかったり、進みたいと思ってる道に進めない女性が多いから。この状況が変われば、男性も女性も関係なくなっていくと思います。例えば、『どれにしようかな』という曲では“女は女らしくとかうるせぇんだよ”っていう歌詞がありますけど、“男は男らしくとかうるせぇんだよ”とも言えるということです。私は性別関係なく、自分がやりたいことを大事にできる人間がかっこいいと思っていますし、そういう人間を目指しています」

そして今、日本のヒップホップシーンで“女性”ラッパーの立ち位置の変化を感じているそう。

「以前は“女性ラッパーの中で一番がAwich”って言われることが多くて、それって女性の枠を取り払って勝負ができていないということだと思っていました。でも最近、私のMVのコメントで『男性ラッパーの中ではが一番だけど、ラッパーの中ではAwichが一番』という書き込みがあって、ハッとしました。状況が変わってきている、と。ただ、今でも社会的に地位が高いとされている職業、“社長”や“医者”と聞くと男性を思い浮かべる人が多いと思うんです。女性だと“女社長”や“女医”と言われる。そこにはまだボーダーはありますよね」

ところが、そういった状況を逆手にとり、「私は女であることを乱用しています(笑)」と笑みを浮かべる。

「ラッパーの世界では、先輩後輩のしがらみがあるんですが、女の私はそういったものをすり抜けて、男性のラッパーに『お願いお願い〜!』って言って(笑)、客演を頼んだりしています。相手も『姐さんが言うなら聞くしかない』って感じでOKしてくれる。一方で、女性ラッパーたちとはギャルのノリで楽しくやっています。それが乱用です(笑)」

“ボーダレス”について今後の見通しを聞くと、「性別だけでなく、あらゆる分野でボーダレス化が進む」と考えているのだとか。

「性別が司る共同体は消滅していくと思っています。それに加えて、このグローバルな情報化社会において、例えば『日本はこれ』とか『アメリカはこれ』っていうふうに場所で分けられたカルチャーっていうのもどんどん消滅していく。そういう様々な動きに対して、『ここは変わってほしくない』と、変化を恐れる人もいると思います。でも、現在はスタンダードだとされているものが昔は新しかったわけで、それを受け入れて変化を重ねていった延長に“今”があるわけですよね。そうやって、カルチャーは変容してきました」

さらに、こう続ける。

「『男はこうあるべき』とか『女はこうあるべき』っていう固定観念によって社会が回っていた時代もあったと思います。それぞれが好きに生きることが大事だと思うので、そういう生き方にロマンを感じるのであれば、もちろんそのままでいい。でも、『ボーダーを設けることに意味はあるの?』と自問自答した時に『ない』と感じる人や、ボーダーに囚われることに苦しさを感じているのであれば、取っ払えばいい。そうするといろんな縛りがなくなって、その代わりに自分と合う人たちと共感していく世界になっていく。これからは、いろんなものがボーダレスになっていく流れに、どうついていけるかが重要だと思っています」

最新アルバム『Queendom』にも、その思想が通底している。

「みんなが自分らしくいられる場所を作りたくて『Queendom』と名付けました。私が自分自身を音楽の中でさらけ出すことで、みんなも、『あ、これでいいんだ』って思える作品が作りたかった。私の王国があるとしたら、私はそこにいる人々にそういう生き方を許すような存在になりたかったんです。例えば“敵”みたいな存在が現れたとしても、その相手と直接勝負をするようなことはしたくありません。何か悔しさを感じる時には『なんで私は今悔しいんだろう?』って考えると、感情の矛先が誰か特定の相手ではなく、自分に向きますよね。そうすると勝ち負けの世界から抜けられて、広い視野でみんなのことが考えられるようになります。そうやって、“勝利を勝ち取る人”じゃなくて、“勝利を与える人”になりたいんです」

『Queendom』を携えた初の日本武道館単独ライブを経た、今のビジョンとは?

「武道館ライブをやったことで、『伝えられるんだ』っていう自信がつきました。だからもっと大きなことに挑戦していきたいと思ったし、自分の娘や周りの子供たちが、いろいろな挑戦ができるような環境を作りたいと思っています」

メジャー1stアルバム『Queendom』。自らの半生を綴ったタイトル曲「Queendom」から始まり、女性をエンパワーメントする「どれにしようかな」や「口に出して」に加え、「GILA GILA feat. JP THE WAVY, YZERR」「Link Up feat. KEIJU, \ellow Bucks」などの豪華客演を招いた楽曲も収録。

エイウィッチ 1986年、沖縄県那覇市生まれ。14歳で沖縄産ヒップホップのコンピアルバムに参加。2007年アトランタに渡り、翌年アメリカ人男性と結婚、長女を出産。夫の他界後、帰国。’20年メジャーデビュー。

※『anan』2022年6月22日号より。写真・澤田健太 スタイリスト・服部昌孝 ヘア&メイク・山田千尋 取材、文・小松香里

(by anan編集部)

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