市村正親と尾野真千子「この人のために生きていたい」生きがいを語る
2022年07月13日 20時00分ananweb
子どもから大人まで、高い人気を誇るキャラクターのひとつといえば、個性豊かな“謎の生物”ミニオン。『怪盗グルー』シリーズなどでも大活躍を見せてきましたが、最新作『ミニオンズ フィーバー』では、さらなるハチャメチャぶりが話題となっています。そこで、ミニオンの大ファンだというこちらの方々にお話をうかがってきました。
市村正親さん & 尾野真千子さん
【映画、ときどき私】 vol. 500
今回、日本語吹替版のキャストとして、シリーズ初参戦を果たした市村さんと尾野さん。劇中ではグルーが敬愛する悪党のワイルド・ナックルズを市村さん、そして悪党チームの新リーダーとして君臨するベル・ボトムを尾野さんが演じています。そこで、初対面で感じたお互いの印象や意外な事実、そしておふたりの生きがいなどについて語っていただきました。
―本シリーズには、おふたり一緒のタイミングで初参加となりましたが、実際に会われてみていかがでしたか?
市村さん 実は、さっき初めてお会いしたんですが、こんなにおもしろい方だとは思わなかったですね。
尾野さん 申し訳ございません(笑)。
市村さん これまでの作品ではシリアスな役も多かったので、そういう印象を持っていましたが、これからは違った目で見てしまいそうですね。「すましているけど、本当はそうじゃないだろ?」と(笑)。
尾野さん あははは! でも、そう思われても仕方ないですよね。
市村さん ただ、新しい魅力を発見できてうれしかったです。やっぱり人は見た目だけではわからないものですから。
尾野さん 私はテレビや舞台などでいろいろと拝見させていただいていたので、初めてというよりも、すでに知り合いのような気分だったというか(笑)。あと、オーラがすごいので、もっとお顔が大きいと思っていました。
市村さん あははは!
尾野さん 正直で本当にごめんなさい。でも、実際にお会いすると、思っていたよりもお顔が小さくていらっしゃるので、やっぱり俳優さんとして魅せる力をお持ちの方なんだというのを実感しました。お会いできてよかったです。
人間らしい部分のある悪役を演じるのが好き
―本作でおふたりが演じられたのは、世界で最も名高いヴィランチームの一員ですが、悪役を演じるのはお好きですか?
市村さん 僕は舞台で悪役系の役を演じることが多いんですよ。ただ、母が生きていたときに、「いくら主役でも人を殺すような役はやらないでほしい」と言われていたので、とことん悪い役というのは嫌ですね。
実際、僕が演じるキャラクターはどれも人間らしい部分を持っているタイプなので、そういう悪役は好きです。だから、今回のワイルド・ナックルズもよかったですが、尾野さんのベル・ボトムは本当に悪い奴ですよね。地でやってるんじゃないかな?
尾野さん (笑)。でも、私は悪役をやりたいと思っていました。そのほうが、やりがいがあるんだろうなと考えていたので。とはいえ、いざやってみると、普通の人のほうがやりがいあることに気がつくんですけど、やっぱり憧れてしまうところはありました。なので、今回できたことはすごくうれしかったです。
いろんな人からたくさんのことをもっと吸収したい
―市村さんは「ワイルド・ナックルズはグルーが憧れる悪党だけど、自分は憧れられる俳優でいたい」とコメントされていますが、すでにおふたりは多くの方に憧れられる存在ではないかと。おふたりにとって“いい俳優の条件”のようなものはありますか?
市村さん シンプルに言えば、自分の仕事や役を好きでいられるかどうかじゃないでしょうか。好きだからこそ、掘り下げていけるものですからね。僕自身も、いろんなものに興味や関心を示し、好奇心を強く持つことを意識しています。あと、ちょっとキザなことを言いますが、人間が好きなこともいい役者である条件なんじゃないかな。
尾野さん 私はまだまだ先輩方に憧れている立場なので、自分が先輩と呼ばれることにもなじみがないくらい。日々、いろんなジャンルの方からもっとたくさんの情報を得たいと思っていますし、いまはまだそれを吸収している段階です。なので、私がいい俳優について話すのはおこがましいというか、考えたこともなかったかもしれないですね。
―ちなみに、おふたりが憧れていた方はいますか?
市村さん 僕が昔から好きなのは、アル・パチーノ、ロバート・デ・ニーロ、ダスティン・ホフマン。日本の俳優さんでいえば、いろんな名作に出演されていた滝沢修さんを学生のころから見ていました。若い頃は、好きな俳優さんのニュアンスを何となく真似したくなることもありましたね。
尾野さん 私は、いまでも各現場に憧れの人がいます。特に、その現場で輝いている人は素晴らしいなと思うので、作品ごとにどんどん増えていて、数えたらきりがないのではないかなと。それはお年を召した方だけではなく、子役でもすごいなと感じたら憧れます。ほかにも、最初はどちらかというと苦手という印象があった人でさえ、現場で一緒になって大好きになることもあるほどです。そういう意味では、今回市村さんにお会いしてから、「どんなことを考えているらっしゃるんだろう」と気になっています。
カラオケが歌えない理由とは?
―ちなみに、いま市村さんに聞いてみたいことはありますか?
尾野さん まずは、声の出し方をどうされているのかは学びたいですね。
市村さん 尾野さんはすごくいい声していると思いますよ。声が響くような口の形というか、そういう体形を持っていますから。
尾野さん 自覚はないですが、そうなんですか?
市村さん ちなみに、歌は歌いますか?
尾野さん いえ、カラオケ程度です。
市村さん カラオケが歌えれば十分ですよ! 僕なんて、カラオケで歌えませんから。
尾野さん どういうことですか?
市村さん ミュージカルで歌を歌うときは、しっかりと稽古をして、役や歌詞の内容を掘り下げてから歌いますが、カラオケって行ったらすぐに歌わないといけないですよね? それができないので、カラオケのときは蚊の鳴くような小さな声で歌ってるんですよ(笑)
尾野さん えー! それはびっくりです。
市村さん 練習していないとダメというか、他人の歌のような気がしてしまうんでしょうね。ミュージカルだと、自分の役の歌だと思えるから歌えるんですが、カラオケでは情けないくらい声も小さくて音程も悪いんですよ……。
尾野さん 勝手な想像で、カラオケでも完璧だと思っていました。
僕にとって、歌は歌ではなくて叫び
―おそらく誰もがそうイメージしていると思うので、かなり意外です。
市村さん 僕にとっては、歌は歌じゃないというか、その人の叫びや恋の切なさだったり、そういうものなんだと思います。だから、舞台で自分の声に酔って歌っているような俳優を見ると、後ろから「こら!」とツッコミたくなりますよ(笑)。
尾野さん 本当におもしろいお話ですね。ずっと聞いていたいです!
市村さん 『キンキーブーツ』で三浦春馬くんを見たときには、「あんな歌を歌える人がいるなんて」と驚きましたし、すごいなと思いました。尾野さんも絶対にできますよ!
尾野さん いやー、怖いです。でも、乞うご期待ください(笑)。
―ぜひ楽しみに待っております。本作のミニオンたちといえば、最強最悪のボスに仕えることが生きがいですが、いまおふたりにとっての生きがいといえば?
市村さん 僕は10歳と14歳の子どもたちですね。もう、完全に彼らが僕のボスですよ! 嫌われないように一生懸命仕えています(笑)。
尾野さん あははは! 私は、夫が生きがいかもしれないですね。仕事をしていても「この人のためにがんばりたい」と支えになりますし、「この人のために生きていたい」と思うこともあるので、いまは自分の心も生活もとても充実しています。こんなふうに、一緒にいて同じ気持ちをわかち合おうとしてくれる存在はいままでいなかったので、夫がいい生きがいになっていますね。
結局はがんばることしかできないと感じている
―素敵なお話をありがとうございました。それでは最後に、人生の先輩でもあるおふたりから、ananweb読者に向けてメッセージをお願いします。
尾野さん 駆け出しの頃、私は「がんばれ」という言葉が嫌いでした。というのも、「こんなにがんばっているのにまだがんばらなきゃいけないの?」とか「何をがんばればいいのかわからない」と思っていたからです。でも、日々いろんなことを達成したとしても、また次に向かっていかないといけないわけで……。結局は、がんばることしかできないのではないかと考えるようになりました。
なかには「がんばれ」という言葉に心を痛める方もいらっしゃるかもしれないですが、振り返ってみると、私自身は「がんばってね」と言われて励まされてきたことが多かったんじゃないかなと。私なんかが言ってもいいのかわかりませんが、それでも私はみなさんに「がんばれ」という言葉を送りたいなと思います。
市村さん 僕からは「楽しめ!」ということを伝えたいですね。舞台の場合、海外から来た演出家と仕事をすると、「稽古場では苦しめ」と言われますが、初日になると「楽しめ」と言うわけですよ。僕たちがエンジョイしていないと、観客もエンジョイできないからと。そんなふうに、苦しんだり、がんばったりすることがあっても、最終的に楽しめる方向にいければいいんじゃないかなと思っています。
自分なりの表現をできるようになることが楽しい
―ちなみに、市村さんほどのキャリアをお持ちでも、稽古は苦しいものでしょうか。
市村さん そうですね。特に、新作はセリフを覚えるのが大変だし、その意味を探って表現するまでには時間がかかりますから。でも、僕はセリフを覚えるのが大好きなんですよ。
尾野さん そうなんですか!? すごいですね。
市村さん シェイクスピアみたいな長いセリフでも大好きなので、台本が残り2、3ページくらいになってくると、逆に寂しくなってきて覚えたくなくなっちゃうくらい(笑)。セリフが自分のカラダに入ってきて、自分なりの表現ができるようになると楽しいので、その作業が一番好きというか、そのためにこの仕事をしているんじゃないかな。
尾野さん 本当に、市村さんからは楽しんでるのが伝わってきて素敵だと思います。
インタビューを終えてみて……。
初対面直後とは思えないほど、ぴったりと息の合ったやりとりを繰り広げていた市村さんと尾野さん。笑いはもちろんのこと、驚きと学びも詰まった取材となりました。周りを元気にするパワフルなおふたりをこれからも見習っていきたいです。
すべてはここから始まった!
今回も予測不能な展開で大騒動を巻き起こし、かわいさもおもしろさも大フィーバーのミニオンたち。大切な仲間たちの絆にジーンとするなか、ついに明かされるミニオンと怪盗グルーの始まりの物語となる“最大の謎”もお見逃しなく!
写真・北尾渉(市村正親、尾野真千子) 取材、文・志村昌美
ストーリー
1970年代、ミニオンたちはミニボスとして崇拝する11歳の少年グルーのもとで日々悪事を働いていた。そんななか、世界で最も名高いヴィランチームの「ヴィシャス・シックス」では、伝説の悪党であるワイルド・ナックルズがリーダーから追放され、新リーダーとしてベル・ボトムが君臨することに。
そんなある日、グルーが何者かにさらわれてしまい、ミニオンのケビン、スチュアート、ボブは、ミニボス救出のため奔走。その過程で起きた事件をきっかけに、カンフーの達人マスター・チャウと出会い、弟子入りする。それこそが、その先で待ち受ける厳しい道の始まりだったのだ……。
大騒ぎの予告編はこちら!
作品情報
『ミニオンズ フィーバー』7月15日(金)公開配給:東宝東和
©2021 Universal Pictures and Illumination Entertainment. All Rights Reserved.
写真・北尾渉(市村正親、尾野真千子)
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