「核なき世界の実現」のために、唯一の被爆国・日本だからこそできることは?

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「核なき世界の実現」です。

唯一の被爆国だからできる橋渡しを望む。


77年前の8月6日に広島、9日に長崎に原子爆弾が投下されました。今年の広島の平和記念式典で、岸田総理がどのようなメッセージを発するのか注目しています。岸田さんは広島県が地元で、総理就任の記者会見では「核兵器のない世界に向けて全力を尽くす」と発言していました。

核兵器の保有も開発、使用も認めない「核兵器禁止条約」は昨年発効され、現在66の国と地域が批准しています。もとはわずかな数でしたが、広島や長崎で被爆した方々が国連で演説し、核兵器は凄惨な事態を人類にもたらすと訴え続け、第三国が次々と集まり批准しました。ところが、日本はアメリカの核の傘に守られているという立場から、採択は棄権したんですね。

今年6月、核兵器禁止条約の第1回締結国会議がオーストリアのウィーンで開かれました。日本政府がオブザーバーとして参加するかどうか注目されていましたが、それも叶いませんでした。外務省は不参加の理由について、「核兵器国の関与がないと核軍縮は進まず、核兵器禁止条約には核兵器国が1か国も参加していないため」と答えています。しかし、だからこそ、唯一の被爆国として中立的な立場から、核保有国と非保有国の橋渡しの役割ができるはずです。日本政府がオブザーバーとしても参加しないというのは、大きな失望を招きました。

なお、今回の締結国会議には、広島や長崎の被爆者の方々が参加し、核の恐ろしさを訴え、NATOの核の傘に守られているドイツやノルウェー、ベルギー、オランダもオブザーバーとして参加。ドイツのメルケル前政権では核兵器禁止条約を批准しませんでしたが、オブザーバーとしての参加は決めました。「核保有国の核軍縮交渉を念頭におきながら、核兵器禁止条約の議論にも加わることで建設的に伴走したい」と、ドイツのベアボック外相は語り、その後来日し、長崎原爆資料館などを訪問。被爆者と面会もしました。

ロシア軍のウクライナ侵攻が始まり、核の使用が現実味を帯びている今は、日本が核の廃絶を大きな声で訴えられないことを思うと、恐ろしい状況にあるなと感じます。

堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00〜)が放送中。

※『anan』2022年8月3日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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