綾小路翔、氣志團万博を「やっぱやりてえな〜となるのは、みんなに会いたいから」

氣志團の大型野外GIGから派生し、2012年にロックフェスとして産声を上げた氣志團万博。開催地は“かなしみのない国”かつ“太陽と潮風の故郷”、彼らの地元である木更津だ。地元で大きな祭りをブチ上げる、それはこのフェスを主催する氣志團の綾小路翔さん(以下、翔やん)にとってひとつの大きなライフワークとなった。その歩みが止まった’20年、’21年。翔やんは何を考えていたのだろう。

「それが当時を振り返ると、意外と冷静に状況を見ていた自分がいるんです。’20年早々に予定していたツアーが飛んで、スケジュールは白紙。自宅で過ごす日々が続きました。僕が家にいるなんてほとんどなかったことですから。生まれて12年間くらいですよ、家にいたのなんて。中1くらいからずっと外でフラフラしていた人生なので。だからそれがすごく新鮮で。みんなが苦しんだり悲しんだりしている中、誤解を恐れずに言えばですが、僕はどこかでほっとしていたんです。曲がりなりにもメジャーレーベルに所属して、商業音楽のサイクルの中でひたすらがむしゃらに走り続けてきた。ファンの方々、メンバーやスタッフ、そんな自分を愛してくれる人々がいる限り、自ら止まるという選択肢はなかったんです。しかし’20年、コロナ禍で止まらざるをえなくなった。でも、そのおかげで見えたものが確実にあったんです」

’20年の現地開催は断念。代わりにオンラインでの無観客配信ライブ「氣志團万博2020〜家でYEAH!!〜」を開催した。

2019年にラスボス来た、と思ったけど、違った。


「この決断も当時は結構前向きだったんです。5月にフジテレビさんで『STAY HOME, STAY STRONG〜音楽で日本を元気に!〜』という、アーティストの在宅パフォーマンスを届ける“家フェス”音楽番組のMCをさせていただいた。その時、あ、やっぱすげえなって思った。最近は芸人って言葉はお笑い芸人さんを指すものになっているけれど、僕にとっては舞踊でも手品でも、身一つで何かしら表現できる人はすべて芸人だと思うんです。ミュージシャンもそう。ギター1本で、何なら声ひとつで発信できるって、すごい芸事なんだとあらためて感動してしまって。こういう時はどかんとフェスをやるよりも、ミニマムでも自宅にいる人たちがハッピーに過ごせるための何かを届けるべきだと痛感したんです。それで氣志團万博もオンラインにシフトチェンジした。たくさんのミュージシャンが参加してくれました。放送してくれたWOWOWさんも心意気を見せてくれて。Zepp Hanedaに何台もクレーンとカメラを入れて最高のステージをお茶の間に届けてくれた。興行としてはギリギリ赤字が出ないくらいで、まあなんとかやれたな…という感じ(笑)。それでもこの時は、こうやって乗り越えていくことに意義があると思えたんです」

しかしコロナの猛威はおさまらず、’21年も開催を見送ることに。

「’21年は一転、もうどうしようもないなって状況でした。僕たち、’19年に令和元年房総半島台風を経験しているんです。千葉県は重大な被害を受けて、まだ復旧していない場所も多くあった。その中でフェスをやるべきか、否か。あの時は、天災という最大の敵、まさにラスボスと対峙していると思っていたんです。まさかそんな“フリーザ”のあとに、コロナという“魔人ブウ”が出てくるとは思っていなかったですから。僕は常日頃、悩んだ時こそ前に進むことを信条にしています。だから’19年も開催に踏み切れた。だけど’21年はそういうんじゃねえなって。もうこれは悩むことじゃない、耐えるしかないんだって。ご協力いただいている地元のみなさんのこと、出演をご快諾いただいたミュージシャンの仲間たち、応援してくれるファンの方々、その誰のことを考えても義理を欠いてしまう。だったらここは耐えて、未来を、来年のことを考えようと思いました」

フェスにはその日にしかない奇跡が本当に起きる。


今年は氣志團万博の開催を予定している。この3年でフェスを取り巻く環境も大きく変わったと言う。

「今年だってどうなるかわかんないし、いくつもスポンサーさんが降りちゃったりとか、“うわー”と思うことはたくさん起きてて。正直逃げ出したくなることがいっぱいです(笑)。でも、やっぱやりてえな〜となるのは、みんなに会いたいからなんです。みんなの楽しんでいる顔が見たい。うちのフェスって、ライブハウスが主戦場の叩き上げロックバンドもいれば、大御所歌手、さらにはテレビスターやアイドルも同じステージに立つ。そのバラエティさに困惑なさる方もいるかもしれないけれど、僕はそれがたまらなく好きで。10代のビジュアル系バンドのファンの子がアコ(和田アキ子)さんの歌で泣いてたり、矢沢永吉さんのファンの方がアイドル見て盛り上がってくれてたり、ももクロのファンの子たちが10-FEETで誰より早くダイブする姿だって見てきた。なんか、そういう新しい“好き”を見つけてほしいんですよね。僕自身が好きなものがすごく多い人生で、それが最高だなって思うから。みんなも好きが1個でも増えて帰ってくれたら、こんな達成感はないんです。単なる、おせっかいおばさんみたいなもんです。これもいいよ、こっちも美味しいよ、ほれ食べな、もっと食べなって(笑)。俺が惚れたバンド、ミュージシャン、アーティスト、そんなん全部いいに決まってるじゃんって。それがこのフェスなんだと思います」

今年もどんなステージが繰り広げられて、どんな化学反応が見られるのか楽しみで仕方がない。

「フェスやっていると、その日にしか起きない奇跡って本当にあるんだなって思うんです。それを一人でも多くの人に生で体験してほしい。僕自身はそこで何が起きたかをしっかりと後世に伝えていく役目。もはや“語り部”なんです。……本当はロックスターになりたかったはずなんだけどな(笑)」

「氣志團万博2019〜房総ロックンロール最高びんびん物語〜」より

あやのこうじ・しょう 千葉県木更津市出身。1997年結成のロックバンド、氣志團のボーカル兼リーダー。「氣志團万博2022〜房総魂〜」は、千葉・袖ケ浦海浜公園にて9月17日、18日、19日の初の3日間開催。香取慎吾、聖飢魔II、松平健、布袋寅泰、木梨憲武などこの日しか体験できない期待感膨らむステージが目白押し。

シャツ¥38,500(DIET BUTCHER/Sakas PR TEL:03・6447・2762) Tシャツ¥7,700(SUPER THANKS/jajahhn TEL:03・6804・5596) 左手のリング¥25,300 右手のリング¥33,000 ウォレットチェーン¥7,150 レザーブレスレット 参考商品(以上JAM HOME MADE/JAM HOME MADE東京店 TEL:03・3478・7113) パンツ、シューズはスタイリスト私物

※『anan』2022年8月10日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・小泉美智子 取材、文・梅原加奈

(by anan編集部)

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