消費者物価指数は上昇するも、中小企業は賃上げ難航…事態改善のヒントは地方に?

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「賃上げと地方創生」です。

事態の改善には小さな地域社会がキーポイントに?


1月の消費者物価指数は前年同月比で4.2%上昇。この上昇率は、41年4か月ぶりです。エネルギーや食料品などで物価が上昇するなか、賃上げされるのかどうか。ユニクロは最大40%の賃上げを発表。大手の経団連系の企業や一部の新興企業は、賃金を上げて人材を確保しようという動きが出ていますが、中小企業の6~7割は「賃上げする体力はない」と答えています。

日本はデジタル分野では世界に遅れており、農業は依然として生産効率が上がっておらず、サービス業は飽和状態で賃金は下がる一方。インバウンドに期待していましたが、コロナ禍で多くの事業者が潰れました。既存の事業では利益が上がらないということに気づくべきなのだと思います。この状況は一朝一夕では対処できません。求められているのは産業の転換と安定したエネルギーの確保、限られた労働人口の効率的な再配置。教育に投資し、新産業を生み出せる人材を作ることです。

そんななか岡山県の西粟倉村に突破口のヒントとなるものを見つけました。西粟倉村は人口約1400人。平成の大合併のときに合併を選ばなかったので、当時は村は衰退するだろうと思われていました。あるのは森のみで、村に産業がなかったからです。ところがこの10年ほどで、課税所得が16.7%上昇、納税者数が7%増加、課税所得平均は9%増となりました。人口が減っても納税者数が増えた理由は、新たな産業を作り新しい雇用を生み出したからです。村では「百年の森林(もり)構想」を策定し、デジタルによって森を管理し、木材の状態ごとにランクづけすることで、効率よく売れるようになりました。また、森で捕獲した鹿やイノシシの肉をジビエに。加工作業は、村の人々が本業の隙間時間に働ける仕組みを作りました。他にも、他県の養殖場から成長の遅かった鰻を仕入れて丁寧に育て直し、「森のうなぎ」としてブランド化。これらはふるさと納税の返礼品にしています。小さな村だからこそ、一人一人の特性も活かし、小回りの利くイノベーションが起こせました。大きくなりすぎた町を分解し再配置することで、個々の所得を増やす道を見出すことができるかもしれません。

ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~)が放送中。

※『anan』2023年3月22日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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