八嶋智人、舞台『桜の園』は「登場人物の中でちゃんとしている人って僕だけですからね」

『桜の園』は、多額の負債を抱えながらも現実を受け止められずにいる領主一家を中心に、過去の栄光にすがり時代の変化から取り残された人々と、時代に即し生き方を順応させていく人々との悲喜こもごもを描いた、ロシアの作家・チェーホフの名作。八嶋智人さんが今作で演じるのは、かつて“桜の園”に仕えた農民の息子で、自らの才覚で実業家として成功したロパーヒン。

言葉は通じるけれど話が通じない会話はまさにコントです(笑)。


「ディスコミュニケーションの話だと思うんですよ。言葉は通じるけれど話が通じない人たちの会話が、ずっと続く(笑)。登場人物の中でちゃんとしている人って僕だけですからね。僕は正論しか言ってないのに、みんな否定ばかりで、全然聞いてくれずに孤独です。しかも、ラネーフスカヤ役の原田美枝子さんを筆頭に、聞かない側の説得力が高いもんだから、さらにイライラが募る。その原田さんがチャーミングだから、余計に手に負えない。何も物事を知らない、ワガママでとんでもない女主人なのに、僕を含めみんなが彼女に夢中ですからね(笑)」

演出は、昨年の『セールスマンの死』で高い評価を受けたショーン・ホームズさん。八嶋さんはその舞台を観劇して感銘を受けていたそう。

「素晴らしいキャパシティを持った方で、僕らを新たな発見に導きながら遊ばせてくれる感じがあります。毎回、このシーンで何をやるのか、それぞれの役の思惑、俳優自身の思惑まで事前に明確にするんですね。それを全員共有した状態で稽古して、生まれた発見を持って最初のシーンに戻ると、自然と芝居が肉付けされているのがわかる。視覚的な面でも、抽象的なセットの意味を全員が共有した上で稽古するんですね。だから、ラネーフスカヤが自らの意思で舞台の台の上から降りただけで、その意味を察して感動できたり。しかも稽古が中盤に差し掛かったタイミングで『もしかしたらここにも男女の関係があったんじゃない?』なんて急に新しい種を蒔いてくるもんだから…毎日稽古が楽しくって仕方ないです」

物語は悲劇的な方向へ舵を切っていくが、作家本人から“喜劇”と銘打たれている作品。

「ひとつの話題で場の熱量がグッと高まってきたと思ったところで、サッとかわしたり、潰しにかかったりする。うまく進んでいたことが急にコケたりするって、まさにコントの手法と同じですからね。しかも、関西人なら『なんでやねん』とか『ちゃうちゃう』って、観ながらずっとツッコめる展開で。いろんな笑いがちりばめられていると思います」

PARCO劇場開場50周年記念シリーズ『桜の園』 桜の園へ戻ってきたラネーフスカヤ(原田)ら一行。しかし管理を任された兄のガーエフ(松尾)は才覚がなく、一家は多額の負債を抱え、桜の園は競売の危機に瀕していた。上演中~8月29日(火) 渋谷・PARCO劇場 作/アントン・チェーホフ 英語版/サイモン・スティーヴンス 翻訳/広田敦郎 演出/ショーン・ホームズ 出演/原田美枝子、八嶋智人、成河、安藤玉恵、川島海荷、前原滉、川上友里、竪山隼太、天野はな、永島敬三、中上サツキ、市川しんぺー、松尾貴史、村井國夫 マチネ1万1000円 ソワレ1万円ほか パルコステージ TEL:03・3477・5858 宮城、広島、愛知、大阪、高知、福岡公演あり。

やしま・のりと 1970年9月27日生まれ、奈良県出身。劇団カムカムミニキーナ所属。舞台のほか、映画、ドラマで活躍。8月25日スタートの時代劇『雲霧仁左衛門6』(NHKBSプレミアム)、情報番組『チョイス@病気になったとき』(NHK Eテレ)出演中。

※『anan』2023年8月16日‐23日合併号より。写真・中島慶子 スタイリスト・久 修一郎 ヘア&メイク・藤原羊二 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)

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