被害者が晒される…米の有名“レイプ事件”に迫ったドキュメンタリー

いま、“ドキュメンタリー”が熱いんです! ネットフリックスで知る、世界のリアル。

エンターテインメント性が低いためか、日本ではそれほどポピュラーではないドキュメンタリー。しかし世界では、ウェブを中心に盛り上がりを見せている。ジャーナリストの佐々木俊尚さん曰く、

「21世紀に入り、旧来の世界観では社会を分析できなくなってきています。この新しい世界をどう見ればいいのかという人々からの要請があり、それに応える形で、新しい視点を提供してくれるドキュメンタリーが増えてきたのでは」

映画評論家の真魚八重子さんは、「カメラの軽量化や低価格化で機動力が上がり、撮るハードルが下がったことも理由の一つ」と語ります。また「枠や時間にとらわれずに作品を発表できる“配信”という形も、人気の理由」と言うのはコラムニストの長谷川朋子さん。

「表現の場が増えて幅が広がり、変わったテーマやタブーを扱う作品も登場するようになりました」

特にネットフリックスはオリジナル作品を多数配信しており、定額制で見放題というスタイルも相まって人気が上昇。ここではドキュメンタリー通3人のおすすめ作品をご紹介。

“事件”を追う


長谷川さんセレクト『オードリーとデイジー』


監督:ボニー・コーエン、ジョン・シェンク 2016年/Netflixオリジナル映画 独占配信中

【作品紹介】性的暴行を受けた上、その一部始終を携帯電話で撮影されてしまった、10代の少女、オードリーとデイジー。二人に面識はなく事件は別々に起きたものだが、その後揃ってSNSで噂や写真を拡散され、さらに深く心を傷つけられた。二人やその家族、彼らの関係者に及ぼした深刻な影響を検証する。

【みどころ】「アメリカでは有名な事件で、他にもこの事件をモチーフにしたドラマが作られているほど。レイプが悪であることもさることながら、ネット社会が被害女性をいかに追い詰めるのかが残酷に描かれます。日本でも、LINEでの仲間はずれやSNSへの悪意ある書き込みなど、ネットいじめは多発しているので、そういう意味ではとても身近な内容かもしれません」

佐々木さんセレクト『FYRE:夢に終わった史上最高のパーティー』


監督:クリス・スミス 2019年/Netflixオリジナル映画 独占配信中

【作品紹介】’17年、バハマで開かれたファイア・フェスティバル。最高級のヴィラと食事付きという超豪華フェスのはずが、現地にはトイレも飲料水もWi‐Fiもなく、宿泊は災害用テントという惨状。なぜ人々は、主催者ビリーの杜撰な計画と運営に騙されてしまったのか。その謎を解明する。

【みどころ】「モデルやインフルエンサーのSNSから発信されたイメージ動画を見て、人々は踊らされ、リアルも盛り上がる、という状況が非常に現代的。主催者ビリーの詐欺師ぶりも愉快ですが、一方でこの作品は、SNS時代というものが何なのかを俯瞰で見せてくれるのがおもしろい。さまざまな流行が生まれる中で、何を重視し何を無視するのか、見極める力をつける一助になります」

食を通して文化を学ぶ


真魚さんセレクト『ストリート・グルメを求めて』


制作:デヴィッド・ゲルブ Netflixオリジナルシリーズ 独占配信中

【作品紹介】現地の生活に根ざした屋台料理を紹介しながら、そこで腕を振るう料理人の料理哲学や人生を描き出す。現在アジアがテーマのシーズン1が配信されており、台湾やソウル、シンガポール、そして日本の大阪にある屋台などをフィーチャー。

【みどころ】「屋台での料理シーンを中心に、シェフや料理の魅力はもちろん、屋台の裏にある社会背景を描く30分です。まず、とにかく料理が美味しそう!! 素朴だけれど新鮮な素材を使ったメニューはどれも、無造作に盛り付けただけなのに美しく、食欲をそそられます。おすすめはエピソード1のバンコクのジェイ・ファイ。屋台でミシュラン1つ星を獲得した彼女のシグネチャーメニュー・カニオムレツ、いつか食べてみたい」

ささき・としなお ジャーナリスト。「ドキュメンタリーの時代」を映画.comで連載。著書に『広く弱くつながって生きる』(幻冬舎新書)など。

まな・やえこ 映画評論家、映画ライター。朝日新聞や雑誌『映画秘宝』、ウェブマガジン「ハニカム」などで、映画についての執筆多数。

はせがわ・ともこ コラムニスト。国内外のドキュメンタリー制作事情に関する記事を多数執筆。東洋経済オンラインなどで連載も。

※『anan』2019年7月10日号より。

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