「ゲーム障害」が事件に至った事例も…背景には“生きづらい社会”

意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「ゲーム障害」です。

世界的な問題。依存症患者対策をきちんと考えて。


世界保健機関(WHO)は5月、国際的な疾患に、「ゲーム障害」を加えることを決めました。ギャンブル依存症などと同じ精神疾患に分類され、治療が必要なものと位置付けられたのです。具体的には、「ゲームをする時間や頻度などを自分で制御できない」「ほかの日常の活動よりもゲームを優先する」「その結果、家族や仕事など日常生活に支障をきたし、それがわかっていてもゲームをやめられない」。そんな状態が12か月続くと、「ゲーム障害(依存症)」と診断されます。

ゲーム依存症が注目されるようになったのは、ゲームがオンライン化されて常時接続ができるようになったからです。世界中のプレイヤーが同時に参加し、ゲームのなかに一つの世界を作るようになり、ゲームをし続けられるようになりました。中国や韓国では、長時間ゲームを続けたあまり下半身がうっ血して死に至った事例などが出ています。日本でも親がゲームに熱中するあまり、乳児を衰弱死に至らせた事件が起きました。世界的に社会問題化しており、体調悪化や死に至るケースが各地で報告されるようになったことをうけ、WHOは新しく疾病に分類したのです。これにより、治療や予防、患者の社会復帰などの対策を決める際の基準にしてほしいと促しています。

しかし、依存症対策は追いついていないのが現状です。薬物と同じように、ゲーム障害でも互助グループが最近、オンライン上に立ち上がりました。治療はそこを入り口にしますが、ゆくゆくは専門家などと引き合わせ、最終的にはネットを離れて、家族や第三者とリアルワールドで人間関係を築けるようになるまでケアが必要になりますから、とても長い時間がかかります。

「ゲーム障害」という病名がつくと、人生の落伍者のようなレッテルを貼られがちです。でも、逆に病名がついたからこそ、どうしたら抜けられるのか、皆で考えようとする意識が大切です。依存症患者を生む背景には、生きづらさを生んでしまう社会の問題もあります。ゲーム障害の患者を「厄介な人」と斬り捨てるのではなく、本人が社会生活にちゃんと戻れるように、寛容さをもって向き合いたいですね。

ジャーナリスト。NHKでアナウンサーとして活躍。2012年に市民ニュースサイト「8bitNews」を立ち上げ、その後フリーに。ツイッターは@8bit_HORIJUN

※『anan』2019年7月24日号より。写真・中島慶子 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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