ラグビー日本代表、田村優「もらい泣きです(笑)」 “ONE TEAM”の裏側

連日の興奮も記憶に新しい、2019年ラグビーW杯(ワールドカップ)日本大会。その快進撃を支えたのは、厳しい重圧の中で培われたチーム力だった。不動の司令塔として仲間を鼓舞し続けてきた田村優選手に、日本中にめくるめく高揚をもたらしたその舞台裏をインタビュー。

柔らかなウールのスーツに身を包み、カメラの前に立つ田村優さん。フィールドでの凄み漂う姿とは対照的に穏やかな表情だけれど、鍛えられた体と深い眼差しからは、圧倒的な存在感がにじみ出てくる。

日本中が注目したラグビーワールドカップ2019年大会の余韻がまだ残る、11月の初旬。2015年に続き、自身2度目のW杯を戦い終えた田村さんは言う。

「準々決勝で敗退してしばらくは、夢と現実の間で浮遊している感覚でしたね。決勝戦を観て、『自分たちもここで戦っていたんだ』とようやく実感できたくらい」

無我夢中の1か月半。そこに至る道のりは、厳しいものだった。決められたスケジュールを休まずにこなし、1日数時間にも及ぶ負荷の高いトレーニングに耐え…。

「練習もハードでしたけど、それよりきつかったのがプレッシャーとの戦いです。ノーマークだった前回大会と違って、今年は強豪国扱いで研究されていた。しかも自国開催で、ベスト8入りを期待されていました。何より、負けたら日本のラグビーも終わってしまうという危機感があった。みんな、相当な重圧を感じていました」

ともすれば押しつぶされてしまいそうなプレッシャーを、力に変えたもの――。それが、ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)が掲げた「ONE TEAM」の発想だった。

「みんなで考えて実行し、失敗も成功も全員で共有する。それを徹底することで、互いに認め合えたし、尊敬し合えた。このメンタリティがあったからこそ、ここまで来られたんだと思います」

とくに田村さんが担う「スタンドオフ」は、攻撃のパターンを決定するチームの“要”であり、

「みんなに信頼してもらって初めて成り立つポジション。自分のプレーで誠意を見せるだけでなく、周りと常にコミュニケーションをとることを大事にしてきました」

練習のないときも仲間と食事やコーヒーブレイクに出かけて意見を交わしたり。そんな地道な積み重ねで、信頼関係を築いてきた。

そうして迎えた開幕のロシア戦。「直前は眠れなかった」と田村さんも振り返るほどの緊張の中、日本のチーム力が相手を圧倒。そこから重圧を一気にはねのけ、「爆発しました。みんな全開で、すべての試合を100%楽しんでいた」。

1次リーグ4試合を全勝してグループ1位で決勝トーナメントに進み、初のベスト8入り。まさに爆発という言葉がふさわしい快進撃に、日本中が歓喜と熱狂の渦へと巻き込まれていく。最後は優勝した南アフリカに敗れて終わったけれど、「ただ『やりきった』という思いしかありませんでした」。

試合後の涙も、その思いから?

「あれはみんなが泣いていたので…もらい泣きです(笑)。でも、本当にいいチームでした」

信頼する仲間全員でこじ開けた、ベスト8への扉。その先には、ベスト4の新たな壁が待っている。

「次回ワールドカップはさらにプレッシャーがかかるはず。その中で何かを残すことが、代表として活動する者の使命だと思います」

激闘を終え、1月に開幕する国内のトップリーグの前にしばしの休息期間を迎える田村さん。実は沖縄が大好きだそうで、「オフは沖縄の祖父母の家で数日、ゆっくりしてきます」。

最後に、今回のW杯でラグビーの魅力に目覚めた女子たちへのメッセージを…とお願いすると。

「僕ら選手は試合でパフォーマンスを見せることしかできない。でも、会場に来てくれたら必ず楽しませます。ぜひ生で観てほしい。TVで観るよりも興奮しますよ」

再びの熱狂を、約束してくれた。

たむら ゆう 1989年、愛知県生まれ。國學院栃木高校時代にラグビーを始め、明治大学を経て社会人チームへ。2017年よりキヤノンイーグルスにプロ選手として所属。正確なキックと緻密な戦略で、ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)からも「日本一のスタンドオフ」と信頼される。今回のW杯でも5試合すべてに出場。大のコーヒー好き。

ジャケット¥310,000 ニット¥203,000 パンツ¥149,000 ポケットチーフ¥14,000(以上エルメネジルド ゼニア/ゼニア カスタマーサービス TEL:03・5114・5300) シューズ¥79,000(エルメネジルド ゼニア クチュール/ゼニア カスタマーサービス)

ジャケット¥275,000 シャツ¥47,000 パンツ¥57,000 ポケットチーフ¥14,000(以上エルメネジルド ゼニア/ゼニア カスタマーサービス) ベルトはスタイリスト私物

※『anan』2019年12月18日号より。写真・的場 亮 スタイリスト・伊達祐輔 ヘア&メイク・田中徹哉 取材、文・新田草子

(by anan編集部)

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