中島美嘉が魅せる『イノサン』Marie starring名義の新曲秘話

音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第26回目に登場するのは、今年デビュー20周年を迎えるアーティスト、中島美嘉さん!

写真・大嶋千尋

『イノサン musicale』で大好きなマリー役を演じる葛藤


【音楽通信】vol.26

2001年、ドラマ『傷だらけのラブソング』のヒロインとして大抜擢され、同番組の主題歌「STARS」で鮮烈なデビューを果たした中島美嘉さん。歌っていても、お芝居をしていても、ハッとする存在感があり、その凛とした佇まいから放たれる歌や演技は、観る者を惹き付けてやまない魅力があります。

2019年、中島さんの初のミュージカル出演であり主演を務めた、革命期フランスの死刑執行人を主人公にした舞台『イノサンmusicale』が注目を集めました。2020年となる今年は、デビュー20周年というアニバーサリーイヤーを迎える中島美嘉さん。

1月22日に、劇中で演じた主人公のMarie(マリー-ジョセフ・サンソン)として、ギタリストのMIYAVIさんが作曲とサウンドプロデュースを担当した「Marie starring MIKA NAKASHIMA」名義のニューシングル「イノサンRouge」をリリースした中島さんに、お話をうかがいました。

ーー2019年11月29日から12月10日まで、初挑戦となる舞台『イノサン musicale』で、主人公のマリー-ジョセフ・サンソン役に挑戦されましたね。全19公演を終えられた現在の心境を教えてください。

本当に、まあ、よくやれました(笑)。楽しかったですし、いい経験にはなりましたね。

ーー以前から中島さんは、原作の漫画『イノサン』がお好きだったそうですね。2017年に原作者である漫画家の坂本眞一さんと、テレビ番組で初対談された様子を拝見しました。

坂本先生と初対面したときは緊張しましたね。『イノサン』は、原作の絵がきれいですごいんです。フランス革命で、国王ルイ16世を処刑した死刑執行人のサンソン家を描いたお話なんですが、フィクションではなく本当の物語。

実在するサンソン家のシャルル-アンリ・サンソンと、その妹マリー-ジョセフ・サンソンを主人公にしていて、私が演じたマリーだけ架空のキャラクターなんですが、もともと実話がとても好きなんです。

ーー今回、漫画からミュージカルとなったわけですが、中島さんがご出演されたきっかけは何でしょうか。

きっかけは、『イノサン』とその続編『イノサン Rouge』を掲載している『週刊ヤングジャンプ』と『グランドジャンプ』を発行している集英社さんから、電話がかかってきたことですね。私が原作を好きだと知って、出演依頼のお話をいただいたんです。

ーー好きな役だからこそ、その役を演じるというプレッシャーはありませんでしたか。

好きな役を演じるプレッシャーは感じましたが、それよりもミュージカル自体が初めてなので、どうしたものかと。映画やドラマのように映像でできることと、実際にお客さまの前でお芝居する舞台では、演じるうえで違うことがたくさんあったんです。

でもやると決めたら、ゼロからやらなければいけないことがいろいろとあったので、マリー像に近づけるにあたって、とても模索しましたね。

ーーでは、お話がきたときは、うれしいけれどどうしようという状態だったのですか。

いい意味で、半々だったんです。“舞台”と聞いて、とにかく私は自信がない。舞台ってやったことがないから、こわい。でも、「マリーだからやりたい」という思いも半分。きれいに真っ二つに思いがわかれたといいますか、常に「こわい」けど「うれしい」という(笑)。

ミュージカルに出演したキャストはみんな仲良し


ーー舞台が始まる前の記者会見で、演出を担当された宮本亜門さんは、中島さんを「マリーは生意気だけれどなんとも魅力的で、何を考えているのかと思いを巡らせてしまう。中島さんはピッタリだ」と絶賛されていました。そんな周りの方からの期待に応えることも大変だったのではありませんか。

私は初めての舞台ですし、ついていくのに必死だったので、周囲がどう思っているかと考える暇もなかったんです。亜門さんは、稽古中、ずっとご一緒させていただきました。妥協されない方なので、言われたことをできるだけ、すべて消化することに必死だったというのが、正直なところですね。「舞台とはこういうものなんだ」と学びながらやっていました。

ーーダブル主演された、シャルル-アンリ・サンソン役のLeadの古屋敬多さんとは、共演されていかがでしたか。

古屋さんは、確か、デビューした年が近いんですよね(中島さんは2001年、Leadさんは2002年デビュー)。いままであまり接点はなかったのですが、共演してみて、古屋さんはおそろしく真面目な方だとわかりました。文句ひとつ言わず、ずっと演技をされる方なので、私はすごく助けられましたね。

ーーライバルということもなく、むしろサポートされるような感じでしょうか。

そうですね。まったくライバルではないです。ふたりが決裂するけんかのシーンがあるんですが、お互いにいい意味でスイッチが入ると、役になりきるので顔をつかんでしまったりと、毎回けんかの仕方が違いました。あとで「ちょっとヒートアップしすぎたよね」って笑っていることもありました。

「ごめん。マリー、ちょっと今日は髪の毛つかみすぎた(笑)」と言われて、私も「カツラがとれるかと思ったよ(笑)」という会話をするということもありましたし(笑)。そのけんかを止める役割のアンドレ・ルグリ役も大変だったと思います。

ーー舞台が終わってからは、みなさんでご飯に行くことなどはありましたか。

さすがに公演中はスケジュールがびっしりで行けませんでしたが、すべての公演が終了してから、ご飯を食べに行くことはしょっちゅうありましたよ。「飲みに行こうよ!」「ご飯行こうよ〜!」と言い合うぐらい、みんな仲が良かったんです。キャストだけの打ち上げはけっこうやっていましたね。

いつかまた『イノサン』の世界を届けたい


ーー今回の舞台で、楽しかったことは何でしょうか。

楽しかったのは、やっぱり扮装です。ずっと読んでいる『イノサン』の世界の大好きなマリーに、実際に扮装して演じることで近づけたというのは、うれしかったですね。

ーーでは逆に、大変だったことは何でしょうか。2月に予定されていたパリ公演は諸般の事情で中止となりましたが、お話をうかがわないほうがいいですか。

全然大丈夫です。私たちキャストは何もしていないですし。こうして取材でも聞きづらいと思いますし、パリ公演を楽しみにしていてくださったお客さまにもご迷惑をおかけしていると思います。そういう意味で言いますと、キャストの声を代表して、現場は大変でした!

ーー機会があれば、また『イノサン』の世界を見せてほしいです。

そうですよね。機会があれば、ぜひやりたいです! だって、本当はみんなやりたかったんだから。

新曲は15年ぶりとなる「starring」名義のロックナンバー


ーー1月22日に、『イノサン musicale』の主題歌「イノサンRouge」を「Marie starring MIKA NAKASHIMA」名義でリリースされましたね。舞台でも楽曲提供をされているMIYAVIさんが作曲とサウンドプロデュースを、原作者の坂本さんが作詞を担当しています。

まずMIYAVIさんからこの曲をいただいたときは、かっこいい曲で、大興奮でしたね。それに坂本先生が初めて作詞をされていて、マリーの言葉と半々になっている歌詞といいますか、すごく象徴的な言葉がたくさん出てくるので、できるだけみなさんに聴いてほしいと思っています。

ーーマリーの舞台での口癖が「サイアク」という言葉だったようですが、歌詞にも同じセリフが登場しますね。

歌詞にも入っていますね。マリーとしては、「サイアク」という言葉をこういうふうに言うだろうと考えて、私も何パターンか録ってみたりしました。

ーー2005年リリースの「GRAMOROUS SKY/NANA starring MIKA NAKASHIMA」以来、15年ぶりの「starring〜」名義の作品となりますが、中島美嘉名義で歌う曲とは、違いがありますか。

はっきりと違うものにしようというわけではなく、いつもの歌い方とは変えなきゃなって、心のどこかでは思っていましたね。偶然にも2005年のときも今回も、どちらもロックナンバーですが、歌への気持ちや歌い方をどうすればいいかというのは、自然と考えて歌いました。

ーーレコーディングは順調でしたか。

曲ができたのがギリギリで、レコーディングの日程もなく、ミュージカルの稽古をやりながら、その合間に録りました。いつもはシングルにミュージックビデオを付けてリリースすることもあるのですが、進行が間に合わなくて、今回、ミュージックビデオは収録されていません。

ーーでは短期間で集中してレコーディングされたんですね。

そう、1日しか空きがなかったんです。先ほども少しお話ししましたが、坂本先生が一生懸命歌詞を書いてくださって、初めて歌詞を書くということで、柔軟に対応してくださいました。私も稽古終わりなどに、「こういうふうにしたらいかがでしょうか」とお話しして、坂本先生とは本当にスムーズにやりとりができたんです。

レコーディングでは、先生がいろいろ歌詞を書いてくださっていたので、実は2パターン録ってみたりしました。どちらがいいかは最終的に、坂本先生に選んでもらおうと思って、そうやってどうにか仕上げたんです。

ジャケ写は中島美嘉さん寄りに描かれたマリーのイラスト


ーーカップリングの「無垢なるもの」は、舞台の劇中歌をアコースティックスタイルで収録されたものですが、ピアノの調べが切々と訴える悲しげな曲ですね。

そうですね。「starring〜」でやるんだったら、ミュージカルの中でマリーが歌っていた曲をカップリングにしたほうがいいと思って、この曲を選びました。私はこの曲を歌うと、舞台のシーンを思い出します。舞台では、実は歌ったあとにひとことセリフを言うのですが、曲には入っていません。レコーディングでは、言っていましたけど(笑)。

ーーちなみに、何と言っていたんですか。

「お前だけは変わるな」って。アラン・ベルナールという、マリーが唯一恋をする人と、別れたあとにひとりになって歌う1曲なんです。マリーは、怒るのも泣くのも、アランにしか見せないので、舞台では重要な曲になっていました。

ーーCDのジャケ写は坂本さんの描くマリーのイラストですが、アー写の中島さんもまったく同じマリーの姿です。いつも中島さんのジャケ写は世界観を大切にしたアートワークが秀逸ですが、今回はいかがでしたか。

冗談のように、坂本先生に「描き下ろしてもらえますか?」とオファーをしたら、すぐ「いいですよ」と言ってもらえたんです。お願いしておいて何ですが、もう、「まさか!」という気持ち(笑)。心の広い先生です。 私はマリーを描いてもらえると思っていたんですが、坂本先生から、私の写真をくださいと言われて。『イノサン』ファンから見ると、このジャケ写はマリーと私の中間なんですが、どちらかというと、私寄りに描いてくださっているんですよ。だから実は、ジャケ写の絵はマリーとは違うんです。

先生はマリーを描こうとしたのではなく、私の写真を見て、「私のCDの絵を描き下ろすという気持ちで描いた」「CDのジャケットを描くのは初めてだからうれしかった」と言っていましたね。ジャケ写の絵は、手の先まで私に似ているので、びっくりしました。やっぱり坂本先生はすごいと思います。

ーー完成形のCDを拝見すると、CDがスペシャルフォトブックレット仕様の大判サイズなので、ビジュアルがきれいに目に飛び込んできますね。

私もこんな大きくなっているとは思っていなかったんです。マリーの大ファンなので、ふつうにうれしい(笑)。飾りたくなりますね。

ドラマではかぶりものに初挑戦してテンションUP


ーーおやすみの日はどのように過ごしていますか。

ひきこもりなんです(笑)。だから家で映画を観ているか、ドラマを観ているか、本を読んでいるか、音楽を聴いているかという感じ。または、寝ているかといったところでしょうか(笑)。映画は動画配信サービスなどでずっと観てしまいますし、音楽は自分の曲も好きで聴いたり、部屋ではピアノだけのクラシックを流したりしています。

ーードラマ鑑賞がお好きなのは以前からだとか。

デビュー当時から、ドラマを観ることが好きなんですよね。まだいまのように配信で海外ドラマを気軽に観られる時代じゃなかったときから、観ているんです。観て、「すごい!」と思う俳優さんもいるんですが、ものすごくたくさん海外ドラマを観るから、俳優さんの名前をすぐ忘れちゃうんです(笑)。

でも、ほかのドラマに同じ人が出ていたら、「あ、この人が出ているドラマは面白いはず」と瞬時に判断できる域まできているぐらい、ドラマ好きですね。

ーードラマといえば、中島さんが昨秋にご出演されたドラマ『時効警察はじめました』(テレビ朝日系)を拝見しました。女優役でゲスト出演されて、しかも「メロンのCM」に出る設定で中島さんが……。

まさかの人生初めてのかぶりものをしました(笑)。全身緑色で、頭にはメロンのかぶりものをして、衣装合わせの段階から、異常にテンションが上がりましたね。でも、スタッフの方は、おそるおそる私にかぶりものを出してきたらしいんですよ(笑)。

「これ……。大丈夫ですか!?」って言われて、全身タイツでメロンのかぶりものというコーディネイトを見たときに、もう「マジでこれ着ていいの(笑)!?」って。しかも、バランス調節をしてもらって、あの感じです。初めてだったので、テンションが上がりました(笑)。

デビューから20周年になる2020年は楽しみ


ーーファッションやメイクにこだわりはありますか。

お仕事のときは意外と任せることが多いんですよ。自分からあまりこうしてとは言いません。チャレンジすることが好きなので、そのときどきで衣装を持ってきていただいたり、メイクをしていただいたりするものをそのままやっていることが多いですね。

ーーでは最後に、2020年はどんな年になりそうでしょうか。

今年はデビューから20周年になるのですが、いろいろとやれたらなとは思いますね。でも、気づいたら20年経っていたという印象なので、いつのまにかそんなになるもんだなって、いい意味で落ち着いて活動できています。

毎年、個人的に計画を立てることはないので予測はつかないですが、どんな1年になるのか、自分でも楽しみにしています。

取材後記


華奢なのに力強く、繊細なのに大胆……アーティスティックな中島さんから発せられるものは、歌や演技、メイクやファッションといったジャンルのどの世界観を見ても秀逸で惹きつけられるものばかり。今年20周年というアニバーサリーイヤーを迎える中島さんから、ますます目が離せません。そんな彼女だからこそ成り立つ“マリー”が歌うニューシングルをまずはチェックしてみてくださいね。

中島美嘉 PROFILE


1983年2月19日、鹿児島県生まれ。2001年、初めてレコード会社に送ったデモテープがきっかけとなり、ドラマ『傷だらけのラブソング』のヒロインとして大抜擢。11月、同番組の主題歌「STARS」でデビュー。オリコン初登場3位と、新人としては異例の60万枚を超える大ヒットとなる。以降、コンスタントに作品を発表し、2002年8月にリリースした1stアルバム『TRUE』はオリコン初登場1位を記録し、ミリオンを突破。第44回日本レコード大賞最優秀新人賞ほか数々の賞を受賞。歌手としてだけでなく、女優として、ファッションリーダーとして日本のみならずアジア各国でも注目されている。

2019年1月30日『雪の華15周年記念ベスト盤 BIBLE』をリリース。4月、土屋公平をバンマスに迎え結成したバンド、MIKA RANMARUのライブを東京と大阪で開催。5月、自身のソロ全国ツアーを開催。10月、金曜ナイトドラマ『時効警察はじめました』(テレビ朝日系)にゲスト出演。11月29日から12月10日、ヒューリックホール東京でミュージカル『イノサンmusicale』に出演。2020年1月22日、Marie starring MIKA NAKASHIMA名義のニューシングル「イノサンRouge」をリリース。11月でデビュー20周年を迎える。

Information


New ReleaseMarie starring MIKA NAKASHIMA「イノサンRouge」

(収録曲)01.イノサン Rouge02. 無垢なるもの03.イノサンRouge(instrumental) 

2020年1月22日発売完全生産限定盤AICL-3759¥1,500(税別)※CD+スペシャルフォトブックレット仕様

関連記事(外部サイト)