秦基博「テレビを観ていると不思議な感覚に…」話題の朝ドラ主題歌を語る

【音楽通信】第66回目に登場するのは、現在、朝ドラ『おちょやん』の主題歌を担当してやさしい歌声を聴かせてくれている、シンガーソングライターの秦 基博さん!

【音楽通信】vol.66

高校時代は軽音楽部で音楽に専念


2006年にデビューし“鋼と硝子でできた声”と称される歌声と叙情性豊かなソングライティングで注目を集め、2014年には映画『STAND BY ME ドラえもん』主題歌「ひまわりの約束」が大ヒットとなった、シンガーソングライターの秦 基博さん。

2020年11月よりスタートしたNHK連続テレビ小説『おちょやん』(NHK総合ほか 毎週月〜土曜 午前8:00)の主題歌としてオンエア中の楽曲「泣き笑いのエピソード」は、12月にデジタルシングルとして配信され、2021年1月27日にはCDとしてもリリースされます。

そんな秦さんに、話題のニューシングル「泣き笑いのエピソード」についてお話をうかがいました。

ーー以前のことから少しうかがいます。そもそも秦さんが影響を受けた音楽やアーティストを教えてください。

中高生の頃には、Mr.Childrenやウルフルズなどの邦楽を聴いていて、高校生ぐらいからは洋楽も聴き始めました。小学生では野球、中学生ではバスケットボールをやっていて、高校で軽音楽部に入り、音楽に専念していましたね。

ーー2006年にシングル「シンクロ」でデビューし、2021年は15周年を迎えられます。デビュー当時から現在まで、どのような変化がありましたか。

デビュー当時はやはり右も左もわからない状態だったのですが、活動を続けていくにつれて、徐々にペースをつかめてきました。5年ぐらい経った頃から、自分のやり方というものが確立されて、自分のペースで音楽にのぞめるようになったと思います。そのあたりが、いまと最初の頃との違いですね。

ーー生活環境に音楽活動がフィットしてきたのですか。

僕は常に曲作りをするタイプではなく、期間を決めて作っているのですが、そういう意味では制作期間と、レコーディング、いまはこのご時世ですがライブをやっている期間をきっちりと分けるタイプなので、そういったやり方が板についてきた感じですね。

ーー秦さんの代表曲のひとつ、2014年発表の17枚目のシングル「ひまわりの約束」は、映画『STAND BY ME ドラえもん』主題歌としても幅広い年齢層に届いて2017年から高校の教科書にも掲載されていますが、ご自身でも特別な楽曲になりましたか。

そうですね。多くの方に聴いていただいている楽曲で、みなさんにもよく歌っていただいているということもありますし、そういう意味ではほかの楽曲とは違います。作り手としては、全部の曲に対して思い入れがあるのですが、そこにまた聴き手の方の思いを乗せていただいていると思うんです。ライブでもここぞというときに「ひまわりの約束」を演奏することはよくありますね。

ーーほかにも多数の楽曲が映画主題歌やテレビ番組、CMソングなどに起用されていますが、さまざまな分野で“求められる音楽”の持ち主として、ご自身ではどのようなお気持ちでいますか。

すべて“ご縁”だと思っていて。僕の音楽が、それぞれお話をいただいている作品に合うんじゃないかといったことから、オファーをいただいているとは思うので、それ自体は本当にうれしいんです。そのなかでも、いろいろなタイミングがあるなかで、作品と出会えるということは、すごく貴重ですし、出会えたことで自分もその曲たちを作ることができる。また新しい曲を生み出すきっかけにもなるので、本当にありがたいなと思っています。

「泣き笑い」という両方の感情と強さを表した新曲


ーー2020年12月21日に、シングル「泣き笑いのエピソード」を配信リリースされ、2021年1月27日にはCDとしてもリリースされます。NHK連続テレビ小説『おちょやん』の主題歌としてすでに全国へと歌が届いておりますが、あらためて同曲が生まれた経緯をお聞かせください。

まずは制作チームの方とお話をさせていただいて、『おちょやん』はどういうものを表現しようとしているのか、主人公のモデルがどういう方だったのか、そういったいろいろなことを教わりました。

放送前にそのときできていたぶんの脚本を読ませていただいて、物語の舞台となる大阪の道頓堀にも、2020年1月に足を運んだんです。ドラマと実際とはまた雰囲気は違うんですが、道頓堀川のまわりにあった芝居茶屋がどうだったのか、そんな街の景色をあらためてイメージして、この曲を作りました。

ーーではけっこうお時間をかけて「泣き笑いのエピソード」を作っていかれたのですね。

はい。ただ、現地取材は、半分は観光のようなところもありましたね(笑)。基本的には、打ち合わせと脚本の存在が大きかったです。

ーーオファーをいただいてから書きおろす場合は、いつも取材してから曲作りをされているのですか。

いえ、ほとんどないですね。自分の作品として向き合って作っていきます。今回は、せっかくだから、大阪に行ってみようと思って行きました(笑)。

ーー朝ドラの主題歌は、通常のドラマよりも長期間にわたり、ほぼ毎日オンエアされます。これまでのタイアップ作品とは異なる点や、心がけたことなど、曲作りにおいて意識されたことは。

主人公の生きる姿勢に一番心を動かされたのですが、そこから着想を得て、さらに“自分の歌”としてどう作っていくかということを考えました。今回は、第1週で主人公が過酷な環境からつらい経験をたくさんするのですが、最終的にはそれが力になって、エネルギッシュに生きていくことになり、喜劇女優になります。人を笑わせるところまでいくという姿がすごいなあと思っていて。

僕自身も、毎日いいことだけでもないし、逆に悪いことだけでもないし。両方あって、自分たちの人生は成り立っている気がしているんです。自分の中にあるものって何かなと、イメージをしていたら、「泣き笑い」という両方の感情があって、つらかったことも誰かに話せるぐらい、自分のなかで消化して、いつか泣き笑いのエピソードとして誰かに話せるぐらいに、それを乗り越えられる強さがあるのかなと思いました。タイトルでも、そんな気持ちを表しています。

ーー『おちょやん』は昔の河内弁が飛び交いこってりとした印象ですが、やさしい歌声と清涼感のあるサウンドの「泣き笑いのエピソード」は、さわやかに耳になじみますね。ご自身でもオンエアをご覧になりましたか。

観ました。まず放送前の曲ができた段階で、アニメーションと曲を合わせたオープニング映像は送っていただいていたんです。そのあとの第2週目ぐらいまでのドラマ映像も先にいただいたので、観ていて。でもその後、放送が開始されたときもテレビを観て、事前に確認してはいましたが、やっぱりうれしかったですね。

テレビを観ていると、少し不思議な感覚もありましたし、コロナの影響で放送開始が遅れていたこともあって、「やっとこの曲が届き出すんだな」と思いました。

ーードラマでは竹井千代役のヒロイン・杉咲花さんが登場され、千代の父・テルヲ役をウルフルズのトータス松本さんが演じられています。今回、杉咲花さんや松本さんなど、主題歌について、何か感想を耳にされましたか。

杉咲さんからは、以前「優しい歌声と温かい歌詞に包まれて、毎日がとても心強いものになる」といったコメントをテキストでいただいていました。10月にも『わが心の大阪メロディー』(NHK総合)という歌番組に出演させていただいて「泣き笑いのエピソード」を初披露したのですが、そのときに初めてお会いしましたね。トータス松本さんもメールで感想をくださいました。

ーー曲作りはいつもどのようにしていますか。

ときどき、思いついたフレーズをメモしておくこともあるのですが、結局は使わないことが多くて。自分のなかでイメージした作りたいものが、時間を置くとどんどん変わっていってしまうんです。とっておいたものは自分にとって新鮮じゃなくなってしまうこともあるので、期間を決めて、その都度、曲を作っていくことが多いですね。

ーー『おちょやん』も始まり、先に配信もされているので、まわりの方から反響がありましたか。

朝ドラの主題歌ということもありますし、父母からはすぐに連絡がきましたね。主人公は喜劇女優の浪花千栄子さんをモデルにしていますが、父が子どもの頃に、浪花さんが出演されていたラジオドラマを聴いていたようでした。

ーー12月に配信がスタートし、1月にはCDでリリースされますが、ご自身の楽曲が発信される際の形態にこだわりはありますか。

どういうかたちであれ、聴いてもらうということが大前提で、聴いていただくだけでもうれしいです。配信は配信のよさがあり、CDにはCDのよさがあるので、今回は配信とCDの両方ですが、たとえばアナログでレコードを発売するのもいいなと思っているので、それによって同じ曲でも音の響き方が変わってくると思いますし、そこには絶対これじゃなきゃダメというこだわりはないですね。

デビュー15周年は音楽を直接届けたい


ーー喜劇といえば、秦さんがお好きなお笑い番組などはあるのでしょうか。

お笑い番組は好きで、よく観ていますね。ダウンタウンさんの『ガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系 毎週日曜23:25)とか。

ーー大阪に行かれたお話をされていましたが、道頓堀以外にも観光されましたか。

浪花言葉の雰囲気を感じられる場所ということで、上方落語を行っている『天満天神 繁昌亭』に行きましたね。グルメは、通天閣の近くで、串カツを食べました。通天閣に行くのは2度目だったのですが、今回もしっかりビリケンさんを触って(笑)。こうやって体験してきた大阪の感覚が、曲にも入っているといいなと思いますね。

ーー音楽活動以外のオフの日は、どのように過ごしていますか。

漫画が好きなので、漫画を読んだり。時間があったら、動画配信サービスで動画を観たりしています。いわゆるキャンプや釣りに行くというようなアウトドアは一切ないですね(笑)。

ーーインドアのご趣味は、作品作りにも役立てるためということも?

役立ってないですね(笑)。最近は、田島列島さんの『水は海に向かって流れる』という漫画を読んで、リラックスしていました(笑)。

ーーリラックスは大事です(笑)! ちなみに楽曲にはラブソングもありますが、秦さんが思う、魅力的な女性はどんな人だと思いますか。

自然体の女性はすてきですよね。もちろん普段からよく笑う人もすてきだと思いますが、寡黙であっても無理していない感じだと、それはそれですてきだと思いますし。その人らしさ、というと、外側から見ているぶんにはどういった状態が本当のその人らしさかはわかりませんが、素直な感じがいい。その方がまとっているものというか。そうするとこちらも自然体でいられますし、いい関係性でいられるかなと思いますね。

ーー最後に、2021年はどんな年にしたいでしょうか。

以前、弾き語りの『evergreen』(2014年)というアルバムをリリースしているんですが、そのパート2として、『evergreen2』を制作中で、今年リリースする予定があります。そして2021年はデビュー15周年でもあり、節目の年でもあるので、ライブや全国ツアーを行なって、みなさんに音楽を直接、届けられる機会を作ることができたらいいなあと。あとはもちろん、新しい作品を届けていけたらと思っています。

取材後記


1日の始まりを彩る朝ドラ主題歌として、お茶の間をあたたかい気持ちにさせてくれる、秦 基博さんの新曲を耳にした方も多いのではないでしょうか。2021年はデビュー15周年というアニバーサリーイヤーを迎える秦さんのご活躍に期待が募るばかりですよね。そんな秦さんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。

写真・角戸菜摘 取材、文・かわむらあみり

秦 基博 PROFILE1980年10月11日、宮崎県生まれ、横浜育ち。A型。2006年11月、シングル『シンクロ』でデビュー。“鋼と硝子でできた声”と称される歌声と叙情性豊かなソングライティングで注目を集める一方、多彩なライブ活動を展開。

2014年、 映画『STAND BY ME ドラえもん』主題歌「ひまわりの約束」が大ヒット、その後も数々の映画、CM、TV番組のテーマ曲を担当。デビュー10周年には横浜スタジアムでワンマンライブを開催。初のオールタイム・ベストアルバム『All Time Best ハタモトヒロ』は自身初のアルバムウィークリーチャート1位を獲得、以降もロングセールスが続いている。

2020年11月よりスタートしたNHK連続テレビ小説『おちょやん』の主題歌としてオンエア中の「泣き笑いのエピソード」が、12月21日からデジタルシングルとして配信。2021年1月27日には、同曲をCDとしてもリリース。

Information


New Release「泣き笑いのエピソード」

(収録曲)01.泣き笑いのエピソード02.LOVE LETTER (コペルニクス AT HOME)03.アース・コレクション (コペルニクス AT HOME)04.カサナル05.泣き笑いのエピソード (backing track)

2020年1月27日発売

(通常盤)UMCA-50059(CD)¥1,200(税別)

(初回限定盤)UMCA-59060(CD+DVD)¥2,900(税別)*三方背スリーブケース仕様。

(DVD内容)*初回限定盤のみ。Hata Motohiro Live at F.A.D YOKOHAMA 2020・シンクロ・フォーエバーソング・色彩・恋の奴隷・Lost・在る・Raspberry Lover・9inch Space Ship・スミレ・ひまわりの約束・鱗・朝が来る前に・Interview & Bonus Track「トラノコ」

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