俳優・江藤潤、好青年役が続きフラストレーションに。汚れ役への思い&“寅さん”との共演

1975年、映画『祭りの準備』(黒木和雄監督)で俳優として注目を集めた江藤潤さん。

ドラマ『青春の門』シリーズ(TBS系)や『海峡物語』(テレビ朝日系)、映画『帰らざる日々』(藤田敏八監督)、映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』(山田洋次監督)など多くのドラマや映画に出演することに。

◆好青年の役が続いてフラストレーションに

映画『祭りの準備』で、複雑な人間関係やしがらみにもがき苦しみながら巣立っていくシナリオライター志望の主人公・楯男という難役に挑んだ江藤さん。運命に翻弄(ほんろう)され、苦悩しながらも成長していく青年という役柄が多くなっていったという。

「『祭りの準備』の翌年にテレビの『青春の門』の話がくるんですけど、『祭りの準備』の楯男も『青春の門』の信介も役柄が似ているんですよね。そういう流れがずっと続いたんです。江藤潤イコールちょっと弱々しい青年の役だったらピッタリみたいな感じで。テレビも含めてずっと同じような感じの役が続きましたね」

−複雑な思いを抱えた青年役が−

「そう。それで好青年という役が何年も続くとちょっとフラストレーションになってくるんですよね。芝居は好きだし、もっともっと楽しい作品に出会いたいという欲も出てきていたから楽しいんだけど、同じような役ばかり続くと『俺はこれしかできないんだよね』みたいなふうになっちゃうじゃない?

同じような役をやっていると、やっぱりもっと汚れ役みたいなものもやってみたいという欲もだんだん出てくるんですよね」

−とくに『青春の門』は長かったですしね−

「そうです。『筑豊篇』を半年間、『自立篇』を半年間だからトータルで1年ですよね。あと、それに同じ五木寛之先生の作品で『海峡物語』が半年間。それもまた『青春の門』の信介や『祭りの準備』の楯男みたいな役でしたから、ずっと同じようなイメージがありましたからね」

◆念願の“汚れ役”にチャレンジ

1978年、江藤さんは映画『帰らざる日々』に永島敏行さんとW主演。競輪選手を夢見ていたが、唯一の友人・辰雄(永島敏行)を助けようとして足を切断することになり、夢を断たれてしまう隆三役を演じた。

「『帰らざる日々』は、ある意味汚れ役でしたね。あの映画では、昔俺がやっていたような役が永島敏行で。だからあれはあれで楽しかったです」

−切ないですよね。不良っぽいですが、競輪の選手を目指して一生懸命練習をしていたのに夢を断念することに−

「そうですね。木材が辰雄の上に落ちてくるのを見て、彼を突き飛ばして自分が木の下敷きになって足をダメにしてしまうわけですから」

−永島さんにインタビューさせていただいたときに藤田敏八監督のお話をされていましたけど、ユニークな方だったみたいですね−

「そうです。パキさん(藤田監督)はね。パキさんも黒木(和雄)さんと一緒で演出をつけないんです。最終的には編集でやっていくという手法なんでしょうけど。

パキさんは東大出身で俳優もやっていたでしょう? だから、監督というよりも俳優の要素のほうが強いんじゃないかな。だから映画『ツィゴイネルワイゼン』(鈴木清順監督)みたいに、俳優としては誰もできないようなことができるんでしょうけど、監督するときにはすぐ悩んじゃう人でしたね、現場で。

『帰らざる日々』のときでもどう撮っていいかわからなくなっちゃって、地べたに座り込んで考えちゃうんですよ。レイバンの黄色いサングラスのレンズがガラスで重いから、どんどん下がってきてね。キャップを被(かぶ)っているんだけど、目がドロンとしているので何とも言えないような雰囲気の監督でしたね(笑)。お酒大好きで、憎めない人ですよね」

−何時に撮影が終わっても必ず酒盛りをしていたと聞きました−

「そうです。必ず飲みました。2時間くらいしか寝られないからと言ってもダメなんですよね。スタッフが許さない。日活の照明部というのがからだも大きくて強くてね。朝5時起きだと言っても『いいんだよ、寝なくても。とりあえずこれを飲まないと1日が終わらないだろう?』という感じで(笑)。

だから『帰らざる日々』はまた別の世界の楽しみというか、和気藹々(あいあい)としていてチームワークもよかったし、楽しかったですよ」

−撮影は真夏で、撮影のあった長野県飯田市は盆地なのですごく暑かったそうですね−

「本当に暑くて体力的にも結構きつかったですね。僕はそのときTBSでレギュラーもやっていたので、TBSで3日間撮影をやったらスタッフが待ち構えていて中央高速で飯田まで連れて行かれて、向こうで撮影したらまたTBSに送り届けられてという感じだったんです。でも、やっぱりみんなで作品を作っているという感じはありました。いい座組でしたね」

−ものすごく印象に残る作品ですよね。アリスの曲もマッチしていて−

「そう、アリスの『帰らざる日々』、いい曲ですよね。いいところで流れて」

−2019年に『帰らざる日々』のトークイベントを永島さんとされていましたね−

「はい。『帰らざる日々』の上映後にやりました。どこで会ったか忘れたけどたまたま永島と遭遇して、『「帰らざる日々」の上映があるから敏行来ないか?』って言ったら、『暇していますから連絡ください』と言って飛び入り参加で来てくれたんですよね。久しぶりにいろいろ話せて楽しかったです」

◆銃の撃ち方&ほふく前進…迷彩服で訓練

1979年には映画『戦国自衛隊』に出演。この作品は、大演習に参加するために目的地に向かっていた21名の自衛隊員が“時空連続体のゆがみ”によって400年前の戦国時代にタイムスリップしてしまい、戦闘訓練を施された自衛隊員でさえも理性を失ってしまう殺伐とした戦国時代でそれぞれがもがき苦しむ姿を生々しく描いたもの。

−迷彩服もよく似合っていましたね。撮影にあたっては訓練などもされたのですか−

「一応訓練もありました。元自衛隊関係のおじさん教官みたいな人が来て、砧の東宝の撮影所に全員が迷彩服を着て集まって、銃をもたされてほふく前進のやり方などを教えてもらってやりました。結果的にはそんなの全然現場ではやらなかったんだけど、一から訓練ははじまったんですよ。結構きつかったですよ」

−撮影はいかがでした?−

「楽しかったですよ。いろいろと大変でしたけど、やっぱり仲間がほとんど年齢的に近いじゃないですか。もういわゆる合宿でしたからね。でかい民宿を借り切って、そこで合宿していたという状態だったから楽しかったですよね」

−俳優さんだけでもすごい人数でしたね−

「そういう意味では角川さんすごいですよね。宣伝費だって3億とかかけていましたからね。3億といったら映画が何本とれるか。1本だったら大作ですよ。それを宣伝費に使っちゃうんだからすごい。テレビであれだけバンバンスポットを打っていたら見に行こうかってなっちゃうよね。すごかったですよ」

−そのすごさは撮影でも感じました?−

「もちろん感じました。だって戦車を作っちゃうんだもん(笑)。ヘリコプターを『西日本空輸』から借りて来て、泥絵の具で塗っちゃって自衛隊機にしてね。すごかったですよ。スケールが違いましたよね。まだCGは何もできなかったけど、みんなで頑張って作り上げたという思いが『戦国自衛隊』にはあります」

◆“寅さん”とまさかの共演

1980年には『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』に出演。キャバレー回りの歌手・リリー(浅丘ルリ子)が沖縄で倒れて入院。駆けつけた寅さん(渥美清)の懸命な看病の甲斐あってリリーは退院し、小さな家を間借りして同棲生活をはじめるが、ある日大ゲンカをしてしまうという展開。江藤さんは大家の息子・高志役を演じている。

−真っ黒に日焼けして精悍で印象的な役柄でした−

「はい。何で僕にお話がきたのか不思議だったんですけど、昔から見ていましたからね。まさか車寅次郎と共演するなんて、僕の中では毛頭なかったからうれしかったです。そういう作品に参加できるんだということがね」

−ましてやリリーをめぐって寅さんに恋のライバル視される役。寅さんと取っ組み合いのシーンもありました−

「そうですね。山田洋次さんはハプニングが好きなんですよね。テストでやっていて、ものすごくウケたりすることがあるんですよ。台本にないハプニングが起きたりすると現場が大笑いでね。それで『本番』というときに、ハプニングでウケたことをやっていいのかどうか悩んじゃうんだよね、二番煎じになるので。だからそこらへんは気をつけながらやっていましたけど」

−そういうときに渥美さんはどのように?−

「何も言わないです。『好きなようにきて、好きなようにやってください』って。やっぱり達者な方ですから、『計算でやるとおもしろくないですものね』って。それを言われると、『さっきウケたことをやっちゃまずいかな』って思っちゃうよね(笑)。いろいろ考えますよ。ハプニングだからよかったのであって、それを計算してやるとハプニングじゃなくなるから難しいですよね」

2021年で芸能界デビュー50周年。多くの作品に出演し、20代から現在までの成長記録が作品として残っている。

次回後編では映画『鉄道員(ぽっぽや)』(降旗康男監督)の撮影裏話、小倉一郎さん、三ツ木清隆さん、仲雅美さんと組んだユニット「フォネオリゾーン」、ラジオ『白秋の門』などを紹介。(津島令子)

※『江藤 潤「白秋の門〜まだまだ青春篇」』ラジオ公録+α!2021 OCT受付中
2021年10月2日(土) 午後5:15〜午後7:00 UTC+09
M’s Cantina エムズ・カンティーナ

※舞台『浜辺の朝〜俺たちのそれから〜』
2021年10月12日(火)〜17日(日)
東京・俳優座劇場
出演:勝野洋 江藤潤 十碧れいや 上島尚子ほか
ストーリーテラー:尾藤イサオ
1970年代に勝野洋さん主演で人気を博したテレビドラマ『俺たちの朝』を原作に、“その30年後”を描いた物語。

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