磯村勇斗、愚直に目指した俳優業。中2で自主映画、地元で修業、大学中退…下積み時代は「ギリギリで生きていた」

2015年、『仮面ライダーゴースト』(テレビ朝日系)のアラン(仮面ライダーネクロム)役で注目を集め、連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK)でヒロインの夫となる前田秀俊役を演じて人気を博した磯村勇斗さん。

『今日から俺は!!』(日本テレビ系)、主演ドラマ『演じ屋』(WOWOW)、映画『ホリック xxxHOLiC』(蜷川実花監督)、舞台『泥人魚』、CMなど多くの作品に出演。好青年から、見るからにやばそうな“ワル”まで幅広い役柄を演じ分け、“若きカメレオン俳優”とも称されている。

2022年7月8日(金)には初主演映画『ビリーバーズ』(城定秀夫監督)が公開になる磯村勇斗さんにインタビュー。

 

◆自主映画『沼津の少女ハイジ』で自らハイジ役に

静岡県沼津市で生まれ育った磯村さんは、小さい頃から目立ちたがり屋で、人を笑わせたり、喜ばれたりするのが好きだったという。

「小さいときは結構落ち着きのない子だったと思います。母親の言うことを聞かずにどこかに行っちゃったり(笑)。とにかくからだを動かしていたかったという感じでした」

−お笑い芸人になりたかったとか−

「人を笑わせることが好きだったので、小学生のときはそうでした。(小学校の)卒業式で、一人ひとり壇上に上がって卒業証書を受け取るときに夢を語るんですが、そのときに『芸人さんになりたい』と言っていた自分がいました」

−それが中学生のときに自主映画を製作することに?−

「はい。2年のときに『沼津の少女ハイジ』という作品を自分で考えて作りました。こんなのおもしろいんじゃないかっていう、ほぼノリですね」

−磯村さんが脚本も書いてご自身で主演、演出も?−

「はい。僕がハイジ役をやりました。僕は楽しかったんですけどね。周りの友だちも一緒にやってはくれていましたけど、『何でやんなきゃいけないんだ?』って言う友だちもいて(笑)。それに対して僕が『ちゃんとやってくれ』って怒ったりしたこともありました。

やる気はすごいあったんです。ハイジにもなりきれてはいなかったと思うんですけど、なんとなくスカートを履いて、なんとなく髪の毛をピンで留めて、ちょっと女の子っぽくしゃべって…みたいな感じで(笑)」

−クララも男の子がやったのですか−

「はい。クララも男の子がやりました。髪の長い男の子がいたので、クララをやってもらいました。

クララは、日本の医療が発達しているので普通に歩けることにして、ペーターもいるんです。でも、クララがいじめっ子にいじめられてスイスに帰ってしまう。それでハイジとペーターがいじめっ子を連れてスイスに行って、いじめっ子に謝らせてクララを連れ戻してくるという、すごくシンプルなんですけど壮大な話でした(笑)」

−上映したときの皆さんの反応は?−

「観ている間もみんながすごく笑ってくれたし、観終わった後に拍手をすごいいただきました。作ったものを評価してもらえたということがすごくうれしくて、そのときに僕はこの仕事をしたいと思ったんです」

−そのときは演出もされていますが、監督ではなく、俳優を選んだのは?−

「最初に興味があったのは作る側でした。でも、目立ちたがり屋という自分の性格もあって、やっぱり俳優をやってみたいと思うようになって(俳優を)目指すようになりました」

※磯村勇斗プロフィル
1992年9月11日生まれ。静岡県出身。『仮面ライダーゴースト』で注目を集め、連続テレビ小説『ひよっこ』、大河ドラマ『青天を衝け』(NHK)、『持続可能な恋ですか?〜父と娘の結婚行進曲〜』(TBS系)、映画『東京リベンジャーズ』(英勉監督)など多くのドラマ、映画に出演。

2022年、『劇場版 きのう何食べた?』(中江和仁監督)と『ヤクザと家族 The Family』(藤井道人監督)で第45回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。2020年、WOWOW開局30周年プロジェクト「アクターズ・ショート・フィルム」に短編映画『機械仕掛けの君』の監督として参加。『ホリック xxxHOLiC』、MIRRORLIAR FILMS Season3『サウネ』(松居大悟監督)が公開中。2022年6月17日(金)に『PLAN 75』(早川千絵監督)、7月8日(土)に初主演映画『ビリーバーズ』、8月26日(金)に『異動辞令は音楽隊!』(内田英治監督)、9月1日(木)に『さかなのこ』(沖田修一監督)の公開が控えている。

 

◆地元の劇団でイチから俳優修業することに

俳優になろうと決意した磯村さんは、高校から上京して演技の勉強をしたいと思っていたが、ご両親に反対されたため、地元・沼津の劇団で俳優としての基礎を学ぶことに。

「俳優というのは、未知の仕事でもあるので、そこは反対されました。高校進学のタイミングでは東京には出してもらえなかったです」

−地元の劇団のことはご存知だったのですか−

「いいえ、僕は劇団というものもあまり知らなかったんです。ただ調べていくうちに、舞台の劇団が沼津にもあるとわかったので電話してみたら、『週に1度ここで稽古をしているから、ちょっと遊びにおいで』みたいな感じだったので行ってみたら、はじめから俳優の基礎みたいな部分を一から色々教えてくれて。

それで、『一緒にやってみる?』って言われたので、毎週行くようになりました。50代から70代くらいまでの人が多かったので10代は自分だけでしたけど、それが高校2年、17歳のときでした」

−発声、早口言葉、気持ちの作り方なども?−

「そうです。台本の読み方だったり、俳優にとって必要なメソッドみたいなことなど、色々教えてもらいました」

−それを早くからはじめられたということはとても貴重ですね−

「はい。ドラマとかにいきなり出るとかいうよりかは、ちゃんとそういうところで、いろいろ経験してきた先輩たちから教わる期間があって良かったなあって、今すごく思っています。

それが本格的なスタートでした。東京で舞台に立っていたような人たちだったので、俳優になることの厳しさをよく教えていただきました。何もわからない10代の僕を受け入れてくれたことに感謝しています。あそこを通らなかったら今の自分はなかったと思うので」

高校卒業後、芝居ができる大学に行くということで両親と合意に至り、上京した磯村さんだったが、2年半で中退することに。

「僕自身は大学に行かなくてもいいと思っていたんですけど、親が大学へということだったので、お互いの希望を混ぜてたどり着いたのが、演劇科のある大学。

そこでも色々映画についても勉強したのですが、やはりすぐに行動したかったので、結局中退し、そこから小劇場を転々としてお芝居をやっていくという形になりました」

−小劇場に出演されることになったきっかけは?−

「大学にいた当時から周りにいた友だちがみんな俳優志望だったので、それぞれがいろいろと外部の演出家さんだったり、俳優仲間などからオーディションの情報を得たりして、『こういう舞台があるよ』という感じで共有していたんです。

それでオーディションに行くという感じで、そこでつながった人とまた『こういうのがあるよ』って聞いて、そこに行ったり。そういうつながりでどんどん小劇場に立っていました。

お金もなかったので、アルバイトをして、ちょっと舞台をやって、またアルバイトをしてみたいな感じでした」

−大学を辞めたということは、仕送りは打ち切りですか?−

「そうです。結構急に大学を辞めたので親も激怒して、しばらくはお互い音信不通でした。引っ越し、カフェ、ベルトコンベアの仕分け作業…いろいろなアルバイトをやって、結構ギリギリで生きていましたね」

小劇場の舞台を中心に活動を続けていた磯村さんは、現在の事務所に所属する演出家の伊藤靖朗さんの舞台に主演したことがきっかけで所属することに。大学を中退してから約1年後のことだったという。

 

◆オーディションで『仮面ライダーゴースト』に出演することに

事務所に所属して2年経った2015年、磯村さんはオーディションで『仮面ライダーゴースト』でアラン(仮面ライダーネクロム)を演じることに。そしてスピンオフオリジナルビデオ『仮面ライダーゴースト アラン英雄伝』で初主演も果たす。

−“若手俳優の登竜門”と言われる仮面ライダーシリーズですが、オーディションですか−

「そうです。オーディションを何回も受けました。以前にも2回仮面ライダーのオーディションを受けて落ちているので、『どうかな?』という感じではあったんですけど、最終審査までいったときは、『何かいけるんじゃないかな』って思った部分はありました」

−放送がはじまってから反響も大きかったと思いますが、実感ありました?−

「そのときはあまり実感なかったかもしれないです。でも、子どもの頃からのヒーローといったら仮面ライダーで、僕も見ていましたし、変身できるというところには、すごくロマンを感じていました。『変身できるんだ』って、そこだけでまず喜んでいて、周りの反応はあまり感じていなかったです」

−撮影はいかがでした?−

「同じ年頃の若いメンバーと一緒に作っていったので、楽しかったです」

−スピンオフオリジナルビデオ『仮面ライダーゴースト アラン英雄伝』で初主演されました−

「はい。あれは仮面ライダーの中で派生した“アラン英雄伝”だったので、主演だという意識はあまりなかったですね。

テレビの『仮面ライダーゴースト』の撮影後半で撮ったのですが、アランとして生きていたときに、プロデューサーの方から『最後のアランの演説のシーンのセリフを自分で書いてみて』ってお願いされたんです。

それでアランとしてなんですけど自分の言葉でセリフを書かせていただきました。だから結構思い入れのある作品になりました」

−『仮面ライダーゴースト』で周囲からも認知されるようになって、声をかけられることも多くなったのでは?−

「そうですね。子どもよりお母さんたちに声をかけていただいたかもしれないですね(笑)」

−これで自分は俳優としてやっていけるという感じはありました?−

「いいえ、なかったですね。“若手俳優の登竜門”と言われていましたけど、仮面ライダーをやっても俳優として生きていける確約はされていないですからね。

全員が全員、変身したからといって軌道に乗るかといったらそうでもないと僕は当時思っていたので、ちゃんと勝負するのはここからだなと。甘えたらきっとダメだなというのがあったので、全然楽観してはいなかったです。ヒヤヒヤしていました」

『仮面ライダーゴースト』で注目を集めた磯村さんは、撮影後半に差し掛かった頃、連続テレビ小説『ひよっこ』のオーディションを受けて有村架純さん演じるヒロインの夫となるヒデさん(前田秀俊)役で出演することに。大学を中退したことに激怒していたご両親も泣いて喜んでくれたという。

次回は『ひよっこ』、『今日から俺は!!』などの撮影エピソード、サウナ好きになるきっかけとなった『サ道』(テレビ東京)シリーズなども紹介。(津島令子)

ヘアメイク:佐藤友勝(サトウトモカツ)
スタイリスト:齋藤良介(サイトウリョウスケ)

©山本直樹・小学館/「ビリーバーズ」製作委員会

※映画『ビリーバーズ』
2022年7月8日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開
配給:クロックワークス、SPOTTED PRODUCTIONS
監督:城定秀夫
出演:磯村勇斗 北村優衣 宇野祥平 毎熊克哉ほか
宗教的な団体「ニコニコ人生センター」に所属しているオペレーター(磯村勇斗)、副議長(北村優衣)、議長(宇野祥平)の3人は、無人島での共同生活を送っていた。3人は瞑想、夢の報告、テレパシーの実験…本部からメールで送られて来る不可解な指令“孤島のプログラム”を実行していたが…。

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