磯村勇斗、食事制限でゲッソリ…初主演映画で過酷な役作り。暴風雨のなか現場に1人宿泊「本当に怖かった」

『仮面ライダーゴースト』(テレビ朝日系)、連続テレビ小説『ひよっこ』(NHK)でブレイクし、『今日から俺は!!』(日本テレビ系)、『きのう何食べた?』(テレビ東京系)、『恋する母たち』(TBS系)、『演じ屋』(WOWOW)、映画『東京リベンジャーズ』(英勉監督)など多くのドラマ、映画に出演している磯村勇斗さん。

2020年には、WOWOW開局30周年プロジェクト「アクターズ・ショート・フィルム」に短編映画『機械仕掛けの君』の監督として参加。2022年には、『劇場版 きのう何食べた?』(中江和仁監督)と『ヤクザと家族 The Family』(藤井道人監督)で第45回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。

現在、妖艶な演技が話題の『ホリック xxxHOLiC』(蜷川実花監督)、MIRRORLIAR FILMS Season3『サウネ』(松居大悟監督)が公開中。6月17日(金)に『PLAN 75』(早川千絵監督)、7月8日(金)に初主演映画『ビリーバーズ』、8月26日(金)に『異動辞令は音楽隊!』(内田英治監督)、9月1日(木)に『さかなのこ』(沖田修一監督)の公開が控えている。

 

◆『きのう何食べた?』で彼氏を振り回す自由奔放なワガママキャラに

同居するカップル、西島秀俊さん演じる弁護士のシロさんと、内野聖陽さん演じる恋人の美容師・ケンジのほのぼのとした日常を描いて人気を集めた『きのう何食べた?』に磯村さんは、2人の友人の大ちゃん(小日向大策=山本耕史)の恋人・井上航役で出演。

大ちゃん曰(いわ)く“ジルベールのように美しい”ということでジルベールと呼ばれている。シロさんとケンジには的を射たことを言ったりもするが、自分のことを愛している大ちゃんにはワガママ放題で振り回す。

「すごく小悪魔的な役柄で、3人の先輩たちをかき乱すキャラクターだったので、僕はおもしろかったですけど、毎日ドキドキしていました」

−「帰りが遅い」と言って締め出したり、夜中にアイスクリームを買いに行かせたり…自分のことを好きな相手にこんなにワガママを言って振り回しちゃうんだと驚きました−

「そうですよね。僕自身はあんなにワガママを言うなんて理解できないです(笑)。役としてはもちろん理解できますけど、僕自身は無理だなあって。あんなことはできないって思いました」

−シロさんたちにはちゃんと的を射たことを言うんですよね−

「そうなんです。賢くてセンシティブなんですけどワガママ(笑)。でも、ジルベールはとくにLGBTQ(性的マイノリティ)で思い悩んでいる人たちが普段考えていることとかをストレートにポンと言ってくれるんですよね。

代弁してくれるようなそんな形で話を振ってくれるので、非常にすっきりするといいますか、変に隠さずにオープンにできるというのがジルベールの魅力でもあるのかなあと思いました」

−映画にもなりました。ジルベールはボサボサ頭とヒゲが印象的ですね−

「『ジルベール』って検索すると金髪の美少年のイラストが出てくるので航とは全然違うんですよね。ボサボサ頭にまだらヒゲですから(笑)。でも、大ちゃんの妄想ではこうなんだって笑っちゃいました。

髪の毛はボサボサにできますけど、ヒゲは専用のものを付けてもらいました。ヒゲを伸ばすのは日数的にも難しかったのと、すごくまだらに生やしたいということだったので、特殊メイクです」

−完成した映画をご覧になっていかがでした−

「とても温かくて、とくにケンジさんとシロさんの二人の愛情がより深まった作品だと思うんですけど、テレビでも見たいと思いました。

『きのう何食べた?』は料理のシーンもいろいろあるんですが、映画館だとレシピがメモれないじゃないですか。テレビだとメモれるし録画もできるので、作ってみたいと思うんですけど、映画館だと記憶するしかないから難しいなって」

−西島秀俊さん、内野聖陽さん、山本耕史さんというキャリアも年齢もかなり先輩のお三方との共演でしたが、4人のシーンは緊張しました?−

「そうですね。緊張するんですけど、お三方からいろいろアドバイスをいただいたりだとか、『こうしたほうがいいんじゃないか』って、シーンごとに色々と相談させてもらったりしました。

僕が変に気を遣ったり遠慮したら、お芝居としては良くないと思ったので、航(ジルベール)としてしっかりと絡もうと意識していました。

お三方は『好きなようにやっていいよ』って、何でも受け入れてくださっていたので、撮影に行くのが楽しみでした。芝居をちゃんとしているという実感があって、芝居ができる場所だなあってすごくうれしかったです」

『劇場版 きのう何食べた?』が公開された2021年には、映画『ヤクザと家族 The Family』も公開された。父親を覚せい剤で失い、自暴自棄になっていた少年期に暴力団組長(舘ひろし)を助けたことでヤクザの道に入った山本賢治(綾野剛)。

2人は父子の契りを結び、賢治はヤクザの世界で男を上げていくが、ヤクザを取り巻く環境が変化する中、自分の“家族(ファミリー)”を守るためにある決断をすることに…という内容。

磯村さんは、抗争で死んだ若頭の息子で、夜の町を仕切る半グレ集団のリーダーとなる翼を演じている。金髪でタトゥーを入れた肉体美がスクリーンに映えて圧巻だった。

−近づいたらケガをする、むき出しのナイフみたいな感じの役柄でした−

「そうですね。あれは自分の中でターニングポイントになった作品でもありますし、藤井監督と綾野剛さんと出会えたというのも、役者人生の中でもすごい大きな出会いだったと思うくらい、今でも大切な作品になっています」

−アンダーグラウンドの格闘場で、上半身裸で繰り広げるファイトシーンが圧巻でした−

「あれが人生初の本格的なからだ作りでした。準備期間が1カ月くらいしかなかったんですけど、体重を増やしながら脂肪を減らしていって」

−ご自身が描いていた翼のイメージと監督の意図するイメージは合致していました?−

「そうですね。クランクイン前から監督だったり、(綾野)剛さんも含めて情報を共有しあっていたので、『もうちょっと冷静でいたほうがいい』とか『もうちょっと引いて大人と戦ったほうがいい』とか、細かい調整はありましたけど、大きくはずれるということはなかったです」

 

◆念願の監督業にもチャレンジ

2020年には、WOWOW開局30周年プロジェクト「アクターズ・ショート・フィルム」で短編映画『機械仕掛けの君』の監督も務めた。

舞台は2035年。人間と見間違うほどのアンドロイドが普及し、人間の仕事が激減。巷ではアンドロイド規制を訴えるデモが頻発し、AI技術者の照康(泉澤祐希)も反体制運動に身を投じていた。照康の弟・コウタは、アンドロイド開発会社の社長の息子・カナメと友だちになるが、探知機で2人にアンドロイド1体の反応が…という展開。

−監督をやらないかと言われたときは?−

「ずっと監督業もやりたかったので、これはチャンスだなと思い、挑戦させていただくことにしました」

−メイキング映像を拝見させていただきましたが、とても落ち着いて演出されていましたね。声を荒らげることもなく穏やかに−

「僕には監督の技術もあるわけじゃないし、まずは俳優に寄り添った演出ができれば、この作品もいいところに落ち着くのかなと思っていたので、そこを意識していました」

−撮影は順調に進みました?−

「2日間で撮らなければいけなかったので、何とか撮りきりました」

−子役の方が自ら『もう一回お願いします』って、プロだなと思いました−

「そうですね。機械的じゃないのがいいなって。やっぱり子役精神なのかわからないですけど、食らいついてくる感じがとても僕はうれしかったし、そういう心を大事にしてほしいと思いました」

−実際に監督業をやってみていかがでした? またやってみたいという思いは?−

「より強くなりました。もっと俳優以外の部分も勉強して長編も撮れるようになりたいなあって強く思いました」

−いくつくらいでどんな作品をというような構想はあるのですか−

「いつというのはまだ決まってないですけど、一応何本かアイディアはあります。タイミングだと思うんですよね。本当に届けるべきときが来たら出す必要があると思うので、そのときに向けてちゃんと残しておきたいなと思っています」

−ドラマ、映画、舞台と立て続けに出演されていて、とくにこの2、3年はほとんどお休みがないという感じでは?−

「そうですね。ありがたいことに、いろいろやらせていただいています」

−ドラマでは『恋する母たち』の吉田羊さんとのラブシーンも話題になりました−

「見られても大丈夫なように、一応背中周りのトレーニングを強化して撮影に臨みました(笑)。羊さんが何でも受け入れてくださる人というか、ほんとにお芝居が大好きな人なので、毎回セッションしているような感じもあって、羊さんとのシーンはとても楽しかったですし、カッコいいなあって思いました。人としても女優さんとしても」

−ご主人と別れて自分と一緒になってくれと迫るところも若さゆえの熱情が伝わってきました−

「そうですね。危険な方向に行ってしまう。前が見えていないというのはありましたよね」

−磯村さん演じる赤坂くんに胸をときめかせていた女性も多かったようですが−

「ありがたかったです。『見ているよ』とか、結構感想をいただきました」

−『前科者』(岸善幸監督)では『ひよっこ』の有村架純さんと再共演。今度は過去にワケありという設定でした−

「お互いにとても楽しみにしていました。刑事である自分と、容疑者として追う“前科者”(森田剛)の保護司・阿川(有村架純)。『ひよっこ』とは全然違う役柄での再会ということで、すごくいい意味で緊張感もありました。

でも、お互い知っているので、すごい信頼関係がある状態でのお芝居でしたから、とてもやりやすい環境でした。一緒にできて良かったです」

©山本直樹・小学館/『ビリーバーズ』製作委員会

※映画『ビリーバーズ』
2022年7月8日(金)よりテアトル新宿ほか全国順次公開
配給:クロックワークス、SPOTTED PRODUCTIONS
監督:城定秀夫
出演:磯村勇斗 北村優衣 宇野祥平 毎熊克哉ほか

◆初主演映画『ビリーバーズ』ではカルト団体のメンバー役に

2022年7月8日(金)には初主演映画『ビリーバーズ』が公開される。この映画で磯村さんが演じるのは、宗教的な団体「ニコニコ人生センター」に所属しているオペレーター。俗世の汚れを浄化し“安住の地”へ出発するための修行として、副議長(北村優衣)と議長(宇野祥平)とともに無人島での共同生活を送っている。

3人は時折届けられる僅かな食糧でギリギリの生活を送りながら、瞑想、夢の報告、テレパシーの実験…本部からメールで送られて来る不可解な指令“孤島のプログラム”を実行しているが、本能と抑えきれない欲望が…。

磯村さんは、純粋な信仰心と抑えきれない欲望の狭間で揺れ動くオペレーターの心情を繊細にかつ大胆に演じている。

−映画初主演となりましたが、いかがでした?−

「主演だからという意識はとくになかったですけど、こういう特殊な作品で主演ができて良かったと思っています。

僕はオファーをいただいてから原作を読んだのですが、すごくトリップしているなあという感じの世界でしたけど、『何かわからないでもないな、この感覚』という感じでした。

『これを映像化したらどうなるんだろう』って思いましたし、この世界を生きてみたいとも思いました」

−問題になったカルト宗教の世界を思い出しました−

「そうですね。原作がもともとある事件をモチーフにしているそうなので、やっぱりそういったリアリティーの部分を山本(直樹・原作者)さんは残しているし、それもちゃんと城定さん(監督)はわかっているので描こうというところはあったと思います」

−この映画の撮影期間は1本に絞ってやることができたのですか−

「そうです。これは集中してやらなければやり遂げられないと思っていたので、ヒゲとか髪の毛も全部自前です」

−磯村さんは実際に現場(コンテナハウス)に泊まり込んで役作りをされていたそうですね−

「はい。事前にこのコンテナに泊まり込んで、どんな感じなのか味わいました。本当に怖かったです。真っ暗で誰もいなくて、僕が泊まった日は、雨風がすごかったので。

でも、携帯とかからも離れて自然の音を聞きながら、こういう場所で暮らすというのも悪くないなという感じもありました。一応寝られましたしね。これがプラスみんなでいるとなると、何かいろいろと感覚も変わってくるんだろうなというのは感じました」

©山本直樹・小学館/『ビリーバーズ』製作委員会

−本部からときどき届く食料だけなのですごい飢餓状況にあるという設定ですが、コントロールはどのように?−

「役のためであれば食事制限して食べなかったりとか、それは全然大丈夫でしたね。体重はクランクイン前からずっと落としていって、この撮影をしているときもみんなでご飯を少なくしたりとか、お互い我慢しあっていたので、やりながらも体重はずっと減っていました」

−すごいゲッソリしていましたものね。煩悩(ぼんのう)に苛(さいな)まれて穴に埋められるシーンもありましたが、感覚的にはどうでした?−

「『死ぬ!』です。やっぱりあそこにずっといると死んでしまうと思いました。どんどん砂が重たくなってくるんです。自分のからだを押して来るので、『このままここにずっと埋められていたら死ぬなあ』って」

−撮影で印象に残っていることはありますか?−

「結構刺激的なシーンが多かったので、どのシーンも鮮烈に覚えています。劇中みんなで小麦粉で作ったうどんのボンゴレは本当においしかったですね。『おいしいね』って言って、みんなでバクバク食べていました(笑)」

−完成した作品をご覧になったときはいかがでした?−

「脚本を読んだときにはカルト的な部分を強く感じたんですけど、出来上がってみたら意外とまろやかになっていて、すごく見やすくなっていたなあという印象と、宇野さん演じる議長が一番おもしろいなあって(笑)。『宇野さんはすごい!』って思いました。

宇野さんがこの『ビリーバーズ』を少しポップにしてくれていたので、それはすごく良かったと思っています。これがどういう風にお客さまに届くのかというのはすごい気になるところではありますね。この作品にはいろんな意見があると思うので」

−出演作品が目白押しですが、今後はどのように?−

「この映画を、そしてこれから日本映画をもっと盛り上げなきゃいけないと思うので、その俳優部の一員として、ちゃんと自分もそこに携われるようにしていきたいと思っています」

放送中のドラマに加え、2022年8月までに劇場公開作品が6作品もある磯村さん。作品ごとにまったく違う顔を見せ、“カメレオン俳優”と称されるのも頷ける。

2022年は映画『PLAN 75』で念願だったカンヌ国際映画祭にも初参加。今後の活躍もますます楽しみ。目が離せない。(津島令子)

ヘアメイク:佐藤友勝(サトウトモカツ)
スタイリスト:齋藤良介(サイトウリョウスケ)

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