染谷将太に“大好き”と言われる俳優・川瀬陽太。海外の映画断り、学生の自主映画に出た理由

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自主映画やピンク映画からメジャーの大作映画までボーダーレスに活躍を続けている個性派俳優・川瀬陽太さん。役どころの大小にこだわらないという仕事に対するスタンスは、主演映画3本の公開が控える現在も変わらない。

同時期に複数の現場を抱えることも多いというが、キャリアのほぼ大半は芸能事務所に所属したことがなく、スケジュール調整はすべて自身で行っているというのだから驚く。

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◆スケジュールはジグソーパズル状態!携帯電話が命

−スケジュールはすべてご自身で調整しているとか−

「そうです。もう大変です。これはこの日に入れてとか、それは次の日に入れてとか…ジグソーパズルかテトリスかという状態(笑)。ただ、今のところ不義理はしていないんですけれども」

−皆さん驚かれるでしょう?−

「驚かれますね。“奇跡のフリー”と呼ばれています(笑)。若い子たちに『どうしてそんなふうにできるんですか?』って聞かれるんですけど、それこそ自主映画やピンク映画からやってきて、スタッフとの距離が近いところにいたんですよね。全員野球みたいなもので、みんなで一緒になって作っていて、彼らがメジャーな作品にも携わるようになって呼んでくれたりするからなんですよ」

−過密なスケジュール調整も何とかなるという?−

「そうなんです。出演依頼があった映画の助監督が知り合いで『今、3作品入っているんだけど、これはどんな感じ?』って聞いて『いや、いけると思いますよ』と言われると、そこはもう見切り発車みたいなもので受けたりして(笑)。うまい具合に重なった映画のチーフ助監督同士が付き合いがあったりするので、お互いに何とか調整してくれるんですよ。何時まではこっちで使うから、そのあとはそっちとかね。

でも、それはさすがにほかの人にはお勧めはできないんですよ。この流れで俺はずっとやってきて、結果的にそうなってしまっただけで、戦略でやっていたわけじゃないですからね。俺も俺のなりかたがわからない(笑)。

ただ豪語できるのは、映画が好きじゃなくなったことは1回もないんです。これだけですよ。映画が本当に好きかどうかが問われると思うんですよね、続けるのは。若手でも映画を見て好きなやつもいっぱいいるし、それで声をかけてくれたりとかもあるので」

−仕事の選択基準はどのようにされているんですか?−

「基本自分の信条は『来た球を打つ』ということなので、来た順です。だから、学生の自主映画を受けて、そのあと海外の某監督の映画のオファーを断ったこともありましたから。泣く泣くですけど(笑)。『しょうがないなあ。お前のために断ったんだぞ』って(笑)。

でも、言い方が難しいですけど、俺はひとつの映画で天地が引っくり返るということはないと思っていますから、あまり関係ないですけどね」

−仕事の連絡はすべて携帯電話で?−

「そうです。事務所がないので、携帯電話がないと何も始まらない。携帯電話が命です!」

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映画『ローリング』と『犯る男』で2015年度「日本映画プロフェッショナル大賞」の主演男優賞を受賞。『ローリング』では女子生徒の更衣室を盗撮してクビになった元高校教師役。かつての盗撮映像がきっかけでヤクザまがいの芸能事務所とトラブルになり、さらに若い恋人を元教え子に取られてしまうダメ男を怪演。圧倒的な存在感が話題に。そしてこの年は同じく主演男優賞を『さよなら歌舞伎町』の染谷将太さんもともに受賞した。

−一緒に主演男優賞を受賞した染谷将太さんが、受賞対象作の『さよなら歌舞伎町』は「川瀬さんから出演オファーをされた」と話していましたが−

「あれはもうぶっちゃけそうですよ。結果的に染谷君に出演依頼したバーターで俺は仕事をもらいましたけどね(笑)。脚本を書いていた荒井晴彦さんから『染谷君に聞いてくれ』というメールが来て、『そんなむちゃなお願いがある?俺がオファー聞くのはおかしくない?』っていう話もできるぐらい荒井さんが気安いパイセン(先輩)だったので(笑)。要するにピンクの流れなんですよね。(高橋)伴明さん、若松(孝二)さん、瀬々さん、廣木(隆一)さんもそうですね」

−染谷さんが「大好きな川瀬さんからのオファーだったからやることにしました」と言っていましたね−

「大好きなんて、恐れ多いですよ(笑)。染谷君とは瀬々(敬久監督)さんの『アントキノイノチ』でも共演していたし、彼が自主作品とかもちゃんと見ていて、出たいという思いを持っていてくれたからなんですよね」

−主役クラスの方が低予算の作品に出るということも多くなりましたね−

「それが普通になったじゃないですか。役者が監督するっていうことも多くなったし。斎藤工君もそうですけども、彼の監督作の『blank13』ではSNSで斎藤君本人がオファーをしてくれたりとか。でも、それも時代だと思うんですよ。そういうことも可能というか、もう何もかも取っ払ってやりましょうという時代になったって。

柄本佑君とかも監督をやっているし、佑くんはピンク映画も好きで見てくれていますからね。そこら辺のボーダーレスな感じは『あぁ、ほんとに映画好きの人たちが残っているなあ』という感じがしますね」

−荒井晴彦さんは自分の脚本を監督が変えてしまうのが頭にきて仕方がなかったから、自分で監督をやってみたんだけど、やっぱり変えざるを得なかったとお話しされていました−

「そうそう。おっしゃっていました。『荒井さん、何十年やっているんですか!』って感じですよね(笑)。でも、それがまたチャームになっているのがずるいとこですよ。俺が荒井組に行ったとき『どうですか、戦況は?』って聞いたら、色々文句を言うんだけど、楽しそうなんですよね。良い顔なさっているんですよ。偉そうだけど、やっぱりみんな映画を撮っているときは子どもみたいになっちゃうんだなあって(笑)」

(C)TADASHI NAGAYAMA

◆主演映画でニートの中年男から一転、まさかの展開に

若手監督とも積極的にタッグを組み、テレビ界にも進出。現在、映画『おっさんのケーフェイ』(2月16日公開)、映画『月夜釜合戦』(3月9日公開)、映画『天然☆生活』(3月23日公開)という主演3作品の公開が控えている。

−これから主演映画が3本公開が続きますね−

「そうですね。主演をやって1番のプレッシャーは、劇場に迷惑がかからないかということですね。そこそこの興行が成立してほしい。『おっさんのケーフェイ』と『天然☆生活』が公開される新宿K’sシネマという劇場は、かつてあった中野武蔵野ホールという劇場からの付き合いなんですよ。だから俺の作品とかもわりとちゃんと熱心にやってくれて、『ローリング』もそこで公開でしたし。そういうつながりもあるので、お客さんがたくさん来てほしいです。もうボロカスに言われようがなんだろうが別にそれは構わないし、何を言われても僕らはとにかく一生懸命作ったので」

※映画『天然☆生活』
のどかな田舎で暮らす50歳のニート、タカシ(川瀬陽太)は家も仕事も夢もなかったが、認知症の叔父の介護を条件に本家に居候中。やがて叔父が亡くなり、田舎でのナチュラルライフに憧れる一家が都会から引っ越してきたことで、タカシの平穏な生活が崩れていく…。

−おじさんたちがボンゴをたたいて歌って…というホッコリから一転、とんでもない展開に−

「そうですね。後半わけわからないことになっていますね(笑)。はじめはギャップコメディーみたいに見えていて、後半になったらわけのわからないことになっていくんだけど、言わんとしていることは伝わったので。要は世の不寛容さの話なので、これは自分も覚えがあるからやりたいと思いました。田舎ってそういうとこがありますよね。Iターンの方たちだけじゃないでしょうけど、自分に都合の良いナチュラルを他者に求める人たち。

とある映画のロケで離島に行ったときにやっぱりそういう人たちがいて、地元の人たちとコミュニケーションを取らないらしいんですよ。自分たちのコミューンを作っちゃうそうなんです。地元の子供たちだってときに駄菓子を食べたいと思ったりすることだってあるわけじゃないですか。それをいきなり外からやってきて添加物がとか、毒が、と言うのはなんだかなぁと。勿論、そんな人たちだけでは無いでしょうが。そこらへんがシニカルに描かれて、わけわからないことになっていくんですよね」

−想像がつかない展開ですからね−

「そこが狙いです(笑)。まあ、だからけれん味エンターテインメントの部分と世の不寛容さを永山君なりに混ぜ込んで作った作品。まずは予告編を見て欲しいんですけど、一見ホンワカムードから不穏な方向へ向かい、そして『他者への不寛容さ』についてブラックな笑いで反撃する。『こんなことになっちゃうの?』と驚くと思いますが、それを確認しに来て欲しいですね」

(C)2017 Hanazono Cinema

※映画『おっさんのケーフェイ』
小学生のヒロトと謎のおっさん(川瀬陽太)の交流を描く。将来の夢も特技もない小学生のヒロトは、ある日、覆面レスラー、ダイナマイトウルフの試合を見て、生まれて初めて夢中になれるものを見つける。

−『おっさんのケーフェイ』では元覆面プロレスラー役−

「昔からプロレスは好きでしたけど、谷口(恒平監督)に『お前よく俺にレスラーなんて役をよこしたな。いくら元だとしても』って言ってたんですよ。インディーズのプロレスとかも結構背格好、かつてはそれこそ180cmないとダメだという時代だったけど、ちょっと目をつぶってもらってやりました。プロレスラーの方々も出てらっしゃるので、準備期間が短かくてたいして鍛えるとかできなかったけど、失礼のないようにしようと、それだけは思いました」

−河原で人形相手にレスリングの技を練習しているシーンも印象的でした−

「あれは寒いときでね。『何をやってるんだ、俺は?』と思いましたけど(笑)。まあだいたい『何をやっているんだ?』の連続で生きていますからね。

でも、永山や谷口、『月夜釜合戦』の佐藤(零郎監督)にしても主役で使ってくれてありがたいですね。『お前悪いなぁ。言っておくけど俺にネームバリューはないからな』って言ったんですけど、『それでもいい』って言ってくれたので。

一緒に仕事をして関わっていた人たちが、それなりにまた広がって散開していってというのが起きているので、俺にとってはますます生きやすい世の中になっていきますね。便所のばい菌のように、どんどん増殖していくんですよ(笑)。」

昨年は広瀬すず主演ドラマ『anone』(日本テレビ系)にも出演。フリーでも重要な役柄でドラマに出演できるということを証明し、無名の若手俳優たちに希望を与えた。

「俺がもしこの業界にいて、功の部分があるとしたら、そこかなと思う。実際こんな俺でも慕ってくれる若い俳優もいるので、ちょっとは意味があるなら良いなあって」と語る全身から映画愛があふれ出していた。(津島令子)

(C)2017 Hanazono Cinema

映画『おっさんのケーフェイ』配給:インターフィルム
2月16日(土)より新宿K’s cinemaにて2週間限定レイトショー(連日21:00〜)
監督:谷口恒平 出演:川瀬陽太 松田優佑 赤城 小林陽翔 埜田進 松浦祐也

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映画『天然☆生活』配給:Spectra Film
3月23日(土)より新宿 K’s cinemaほか全国順次公開
監督:永山正史 出演:川瀬陽太 津田寛治 谷川昭一朗 鶴忠博 三枝奈都紀 秋枝一愛

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