映画『轢き逃げ』若手出演陣、監督・水谷豊の“自ら演じる”演出を語る

コンサート、映画、舞台など、あらゆるエンターテインメントをジャンル問わず紹介する番組『japanぐる〜ヴ』(BS朝日、毎週土曜深夜1時〜2時)。

5月4日の放送では、映画『轢き逃げ −最高の最悪な日−』を特集。映画評論家の松崎健夫が、若手出演者を直撃した。また、映画評論家の添野知生は、最新映画『スケート・キッチン』の魅力を解説した。

◆役者の経験を活かした水谷流演出

©2019映画「轢き逃げ」製作委員会

映画『轢き逃げ −最高の最悪な日−』(5月10日公開)は、『相棒』シリーズなどで人気の俳優・水谷豊が、映画監督としてメガホンを取った待望の2作目。

ある地方都市で起きた“轢き逃げ事件”に関わる人々の人間模様を描いた作品で、事故を起こしてしまう青年の宗方秀一を中山麻聖、その親友の森田輝を石田法嗣、秀一の婚約者で大手ゼネコンの令嬢である白河早苗を小林涼子という若手が熱演。そんな3人に、松崎が斬り込んだ。

©BS朝日

映画『轢き逃げ』は、水谷が監督・脚本、自ら出演もする。監督が役者でもあることから、自ら演じて見せる演技指導をしてくれたそうで、「他の現場ではなかった体験だった」と3人は口を揃えた。特に小林は、本番の15分くらい前に突然「オペラを歌って欲しい」と言われ、急遽やることになって戸惑ったそう。

「オペラは歌ったことがなかったので、本当に模索しながら苦労しました。その時も監督が自ら“ララララ〜って感じでやってください”と身振り手振りを交えながら踊るようにご指導してくださって、それが印象に残っていますね」(小林)

「秀一は、輝と芝居をすることが多くて。輝を演じて見せてくれながら、秀一にはこの時にこういう行動を取ってほしいと2人分の演出を同時にされていたので、それには驚きました」(中山)

「アクションシーンもあって。監督は、監督をやりながら自らアクションも演じていらして、もはやどこから監督でどこから役者なのか、境目が分からないくらいでした。そんな役者としての高い領域を間近で見ることが出来たのは、本当に幸せでした」(石田)

◆神戸での長期ロケで高まった意識

作中では舞台となる街を具体的にはしていないが、実際の撮影は神戸に長期滞在して行ったそう。わざわざ神戸で撮影したことには、海の見える風景の美しさだけではなく、いろいろな意味を感じ取ったと3人は話す。

「撮影は神戸ですが、セリフはあえて標準語でした。方言だと、お芝居よりも方言のイントネーションなどに気を取られてしまいがちです。おそらくそれを考慮して、標準語にしてくださっていた部分もあったのではないかと、勝手に想像しています」(石田)

「撮影をしていない間に、地元の人と触れあうことで得られる空気感もあるので、それは無意識のところで映像にも現れていると思いますね」(中山)

水谷は監督として、神戸の街を自らの足で歩き回ってロケハンをしたとのこと。小林もそれにならって、撮影が休みの日は1人で街を歩き回ってイメージを膨らませていたそうだ。

「東京ならその日の撮影が終われば自分の家に帰るし、わざわざ歩かなくても何となく知っているから、“ここはこういう場所”と勝手に決めつけていた部分があったと思います。神戸では帰り道が分からなくなったこともありましたが、何度も道に迷いながら新しい発見をして、新しい街並みを見られたことは、演じるうえでとても大きな意味がありました」(小林)

松崎は、3人に対する水谷からのコメントも紹介。

「役に一生懸命生きてくれているという、印象がありました。長いロケだったので、3人で食事とかに行って仲を深めてくれたらいいなと思っていましたが…。実際に3人で食事をしていたと後から聞いて、良かったなと思ったのと同時に、きっと僕の悪口でも言っていたんだろうなって(笑)」との水谷のコメントを嬉しそうに聞いた3人。「水谷さんから軍資金をいただいて、3人で神戸牛を食べに行きました」とエピソードも明かした。

現場では、水谷豊の他にも檀ふみや岸部一徳といったベテランに囲まれて、緊張することも多かったそう。

しかし、その緊張もまたとない機会で、役者としてだけでなく人としても大事なことを学ぶことができたそうだ。映画『轢き逃げ』は、複雑に絡み合う人間ドラマの物語だけでなく、現場で学び成長した若手俳優の演技にも注目だ。

◆痛いほどの自由を感じる『スケート・キッチン』

©2017 Skate Girl Film LLC.

映画評論家の添野は、最新映画『スケート・キッチン』(5月10日公開)を紹介。『スケート・キッチン』は、“リアル版スパイダーバース”だと独自の視点で魅力を語った。

映画『スケート・キッチン』は、ニューヨーク郊外に住むスケートボードに夢中の17歳の女の子・カミーユの成長を描いた物語。

女性監督のクリスタル・モーゼルは、2016年に本物のスケートクルーの女の子たちに密着した短編映画『That One Day』(※インターネットで無料視聴が可能)を制作。それを原型にして、その時のスケートクルーの女性たちにそのまま出演してもらって長編劇場作品として制作したのが、この『スケート・キッチン』とのこと。

公園や街中を颯爽と滑るシーンは壮快感に溢れており、「スケートボードで街を走っている彼女たちを見ていると、ボードに乗っている時だけは、何よりも自由を感じているんだなと、映画から痛いほど伝わってくる」と、作品の根底には自由を渇望する青春が描かれていると解説する。

また添野は、本作と『スパイダーマン:スパイダーバース』との共通点を指摘する。

「ウィル・スミスの息子のジェイデン・スミスが出演していて、ジェイデン・スミスは『スパイダーマン:スパイダーバース』のエンドソングを歌っている。『スケート・キッチン』も『スパイダーバース』も、ブルックリンが舞台。また、主人公のママがラテン系で、仕事が看護師という設定まで同じ。『スケート・キッチン』は、言ってみれば“リアル版スパイダーバース”じゃないか、と」

スケートボードに熱中する、17歳の若者のリアルな青春を描いた『スケート・キッチン』、13歳のマイルスが世界を救うために苦悩しながら成長する『スパイダーバース』。気になった人は、ぜひ両方ご覧になってみては?(文=榑林史章)

※番組情報:『japanぐる〜ヴ』
毎週土曜深夜1時〜2時、BS朝日

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