甘いマスクの裏の壮絶な努力。中村克、世界水泳で日本人初の100m自由形メダルへ

開催中の「世界水泳2019」。今大会、競泳の花形種目100メートル自由形で日本人初のメダル獲得を期待されている選手がいる。日本・短距離界のエース、中村克(なかむら・かつみ、25歳)だ。

©テレビ朝日水泳

中村が一躍脚光を浴びたのは、2018年2月に行われたコナミオープン。ここで中村は、自身の持つ日本記録を0秒12更新する47秒87で優勝した。

この記録は、2018年シーズンの世界ランキング2位という好タイム。男子100メートル自由形は、世界大会で実に半世紀以上にわたり日本人選手が決勝に進出できていない種目だが、中村は一気に世界との差を縮めることとなったのだ。

世界水泳で日本人初の決勝進出、そしてメダル獲得。――会った誰もが口に出してしまうほどの甘いマスクであるその男に、大きな期待を寄せずにはいられない。

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さて、幼少期から始める選手が多い水泳の世界。しかし、中村がその道を本格的に歩み始めたのは、中学生からだ。

小学校高学年の頃まで、中村はサッカー少年だった。夢中だったサッカーから離れ、水泳を始めたキッカケ。それは、母・律子(りつこ)さんの存在だ。

当時ライフセーバーの資格を取ろうとしていた律子さんだったが、不運にもその時期に交通事故に遭ってしまい、目標を断念せざるをえなくなってしまった。

「僕が代わりに水泳をやる」――母に起きた不運により沈んだ雰囲気になってしまっていた家族を励ますべく、中村はサッカーから水泳へと転向したのだという。律子さんは当時のことを、「『お母さん、もうがんばらなくていいよ。僕ががんばるから』って(言ってくれた)。すごく嬉しかったです。涙が出ましたね」と振り返る。

「始めたのが遅かったから、人と同じ努力度だと絶対に追い付けない」――そんな思いを胸に、中村はそこから文字通り“がむしゃら”に練習を続け、わずか10年でトップスイマーとなった。

日本記録保持者となった現在も、世界のトップを目指す原動力は“家族”だ。

「家族は、(自分が)結果を出すことをすごく楽しみにしている。オリンピック前年でもあり、自分のためにも獲らないといけないし、何よりも家族を喜ばせてあげたい」(中村)

◆取り入れた“ボクシング”トレーニング

そんな中村にとって課題となってきたのが“レース後半”だ。

これまで、世界と戦う際、前半は快調に飛ばして先頭争いをするものの、後半に急に失速してしまう場面が見られることがあった。

疲れから体がぶれてしまう。それが原因だった。中村も自ら、「バテたときに泳ぎがどんどんずれてしまって、よくない姿勢になっちゃうんです」と語る。そのため、日本では勝てても、世界ではメダルはおろか、決勝進出すらかなわなかった…。

そんな状況を打破すべく昨今取り入れてきたのが、ボクササイズやキックボクシングを取り入れたトレーニングだ

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強靭な肉体でミットを打ちながら壮絶なトレーニングに臨むその姿は、まるで格闘家そのものである。

一見、競泳とは関係のなさそうなこのトレーニング。しかし、実は体幹と腰の連動を意識した動きが競泳のキックにも繋がっている。水中で疲れないキックをするための下半身のコントロールや、レース後半になってもぶれない体幹の強化を実現させているという。

中村自身も、「(後半が)きつくても、体幹をきかせたまま、ぶれずに最後まで泳ぎ切ることができる。やっぱり、いい姿勢で泳ぐと抵抗も少ない。結果的に速くなる」とその効果を説明しており、現在の中村は言うならば、特に後半の泳ぎが見逃せない選手となった。

実際、2018年2月の日本新記録を出したレースの後半を見ると、前回の世界水泳のメダリストたちよりも速いラップタイムで泳いでいる。

「平凡な練習だと結果は出せないと思っている。だからこそ、とんでもなくきつい練習をやることが成功する一番の近道」と語る中村は、言葉通りに壮絶な努力をし、課題を克服してみせたのだ。

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「(世界水泳で)メダルを獲ることができれば、2020でのメダルはもう間違いなくいけると思う。より自信をつけるために、(今回の)世界水泳でメダルを獲ることが必要だと思っている。しっかり頑張りたいなと思います」と意気込む中村。

見事メダルを獲得し、甘いマスクに最高の笑顔がひろがるところを見たい。

※放送情報:『世界水泳 韓国・光州2019』
7月21日(日)〜28日(日)8夜連続、テレビ朝日系で放送(放送予定詳細はこちら)

・予選はBS朝日で放送・AbemaTVでも配信
・決勝はAbemaTVでも配信

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