加藤雅也、40代までは“二枚目俳優のイメージ”との戦い…「僕にとっては大きかった」ある朝ドラへの出演

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二枚目俳優として、映画やドラマに引っ張りだこの人気絶頂時に単身渡米し、7年あまりハリウッドを中心に活動してきた加藤雅也さん。2002年に再び活動拠点を日本に移し、多くの映画、ドラマに出演。

昨年、俳優生活30周年を迎え、今年は連続テレビ小説『まんぷく』(NHK)のユニークな喫茶店マスター役も話題に。すでに2本主演映画が公開され、9月6日(金)には最新主演映画『影に抱かれて眠れ』も公開になる。モデル時代から183cmの長身に端正なルックスは際立っていたが、40代までは二枚目のイメージとの戦いだったという。

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◆朝ドラで関西の面白いおっちゃんに

−今年は『二階堂家物語』、『彼女は夢で踊る』(広島先行)、『影に抱かれて眠れ』(9月6日公開)と主演映画も続いていますね−

「そうですね。まだ色々と主演でやってみたい作品もありますけど」

−長身で二枚目という誰もがうらやむルックスですが、俳優としては見た目のイメージで左右されたこともあるのでは?−

「それはあります。やっぱりそれは、30代、40代もずっと付きまとっているので、いかにそれをぶっ壊して60代を乗り切れるようにするかということを40代半ばぐらいからずっと考えていますよ。

50歳ぐらいから白髪が増えてきて、だいぶ雰囲気も変わってきましたけどね。正直つまらないなと思うようなことでも仕事としてやらざるを得ないよりは、何か新しいことをやっていたいし、いろんなことをやれなくなるなっていうのはすごくあります。二の線で、50代、60代、70代ってきついですよ」

−このところユニークなキャラや、やさぐれた感じの役など幅広い役柄をされていますね−

「やさぐれ感も出すように意識してきたから出たのであって、二の線だけでいたら出ないですよ。やっぱりそういう色んな芝居をすることで、チャレンジをしていかないと、二の線だけでやっていて食べていける時代ではないですからね。

田村正和さんみたいに、二の線を一生通せる俳優というのはなかなかいないですよ。他にいないでしょう?日本がそういう映画を作る文化じゃないから、香港だとか韓国だとかアメリカとかだったらまた別ですけどね。

ロバート・レッドフォードも二の線で通しましたしね。だけど、日本では難しいし、そんななかで二の線を押すよりは、何か新しいことや面白いことをやりたいじゃないですか」

『青春家族』(1989年)以来、30年ぶりの朝ドラ出演となった『まんぷく』では主人公の福子(安藤サクラ)が働く喫茶店「パーラー白薔薇」の店主・川上アキラ役。妻・しのぶ(牧瀬里穂)と関西のノリで夫婦漫才のような軽妙なやりとりをしたり、変な英語を使ったりするコミカルな演技が話題に。

−『まんぷく』のマスター役もこれまでのイメージと大きく違いましたね−

「いろんな作品であのような役は過去にもやっているんですけど、見てもらえるところでやらない限り、あんまり効かないんですよね。

『まんぷく』は全国区だから、皆さんから『あんな役をやるとは思わなかったです』って言われて、わりと変な役のオファーがくるようになりました(笑)。『この人にこんな役をやらせたら面白いんじゃないの』って、やっとそういうふうに思われるようになってきて、そういう役が増えてきたんですよね。

だから、そういうのは断らずに一回やってみようかなって。そうすると、幅が広がってくるじゃないですか。幅が広がってくると、それだけいろんな役ができるようになるしね。『まんぷく』は、全国区の作品だったからですよ。ちっちゃい作品でもっと変なおもろいやつとかをやっても、なかなか知ってはもらえない」

−英語が堪能な加藤さんが変な英語を話すというのも新鮮でした−

「でも、あれは逆にある程度英語がわかるからできることで、演出とプロデューサーとお話をして、台本に書いてあったものより濃いバージョンアップしたキャラになりました。『ユーアーコーヒー、OK?』というような変な英語のセリフも最初はありませんでしたからね(笑)。そういうこともできたし、色々な意味で、あれは僕にとっては大きかったですね」

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◆昭和のノスタルジー漂うハードボイルド映画で男気がさく裂

9月6日(金)には最新主演映画『影に抱かれて眠れ』が公開される。この映画は2016年に加藤さんが主演した映画『棒の哀しみ』の原作者でもある北方謙三さんの小説『抱影』が原作だ。

加藤さんが演じる主人公は、こよなく酒を愛し、横浜・野毛の街で2軒の酒場を営む抽象画家・硲(はざま)冬樹。ある日、彼を兄のように慕う信治(カトウシンスケ)が負傷して転がり込んでくる。窮地に追い込まれた信治を救うため、硲はある決断を下す。そして信治と同様に硲を慕う仲間・辻村(松本利夫)とともに、横浜の闇に立ち向かう。

−原作者の北方謙三さんとは今回共演もされていますね−

「お店のシーンでね(笑)。共演というか、同じシーンに一緒に映っただけという感じですけど。北方さんとはもう何年もお付き合いがありますし、去年30周年ということで作った写真集にも文章を書いていただきました」

−撮影のときに何かお話はされました?−

「『俺はどうすればいいんだ?普通に飲みに来た感じで良いのか?』って聞かれたので、『普通に飲み屋に来た感じで良いと思います』って言いました(笑)。前にセリフがある役で出演したときには苦労したみたいですけど、『今回は楽だ』って言っていました」

−カッコ良いですよね。すぐわかりました−

「面白いですね、やっぱり。存在自体がハードボイルドですから。北方さんの作品がもっと映像化できれば良いんですけど、日本ではなかなか難しいですね」

−この作品はキャストもさることながら、プロデューサーが中野英雄さん、脚本が小澤和義さん、監督が和泉聖治さん、すごい顔ぶれですね−

「でも、『こういう作品は当たらないだろう?』って言ったら、ヒデ(中野英雄)も『当たらないと思うけど』って、みんながそんな風に言いながらやっていることなので(笑)。ヒデも毎日現場に来ていました。ヒデ自身が俳優だからキャスティングの重要さをよくわかっている。だから役に合ったキャスティングがされているなと思いました」

−昭和世代にはノスタルジーを感じさせる作品ですね。和泉監督とは初めてですか?−

「そうです。和泉さんには30年前に一回オファーをいただいたことがあるんですけど、できなかったので。一回そういう風に途切れてしまうと、なかなかできないものなんですよ、人生って。

それで、やっと30年ぶりに一緒にできることになって。『南へ走れ、海の道を』(1986年)を見て、こういう映画がやりたいって思っていたんだけど、オファーをもらったときには『226』を撮っていてできなかったんです。こういう作品で出会えたのはうれしかったし、面白かったですよ」

−自分を慕っている若者のために戦いに身を投じていく、男気あふれる主人公ですね−

「そうですね。むちゃむちゃ昭和(笑)。僕らが松田優作さんとか、ショーケンさんに憧れたヒーロー像みたいなものが今はなかなかないじゃないですか。やっぱりこういう人たちが出てこなきゃダメなんだろうなぁって」

−湘南乃風の若旦那さんとか、AK−69さんなどキャストも独特ですね−

「二人とも良かったでしょう。ミュージシャンの人って、独特の存在感があるから面白いですよ。今年の1月に健ちゃん(長江健次)のお誘いで、初めてライブをやったんですけど、それで音楽をやっている人たちにはリズムがあるんだということに気づきました。彼らはリズムで芝居をするんです。

俳優はそういう感じではないような気がするので、今まで意識したことはなかったけど、リズムを意識すると、すごくよくわかります。だから、ライブに誘ってもらって良かったなぁと思いました」

−良い感じの化学反応というような?−

「面白いです。だから、優作さんとかが、なぜ音楽をやられていたのか分かる気がしました。『ああ、リズムだ。優作さんはずっとリズムを大事にしていたんだ』って。勝手な想像ですけど」

−加藤さん演じる硲を恩人と慕うバーテンダー辻村役でEXILEの松本利夫さんが出演されていますが、共演されていかがでした?−

「マツ君はやっぱりすごい。聞いたら『僕はゴリゴリのヒップホッパーだったんです』って言うから、『ああ、そうか』って。やっぱりリズムで芝居する人って違うんですよね。俳優にはないものがあるから。

一挙にセリフをまくしたててたりするのがマツはうまいじゃないですか。これがリズムなんだと思って。僕らはあれをリズムじゃなくて覚えてやろうとすると駄目で、リズムが悪いと芝居が途切れるんですよ。英語もそうです。

一息で言えないと思うセリフがあったんだけど、一息で言えている人は、あるリズムの法則に乗せて言っているんですよね。芝居にもリズムが必要だということがよくわかりました。僕の個人的見解ですが」

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2010年には長女が誕生。8歳になるお嬢さんのパパでもある。

−お子さんにも英語は教えてらっしゃるのですか−

「教えるというか、英語に慣れさせている。やっぱり自分がそういう環境にいれば違ったなあという思いはあるじゃないですか。それは環境だから、環境だけ与えて本人がやりたければやればいいし、そんな強制したからって、やれるものでもないですからね。

だから『英語だったらテレビを見ていいよ』とかいう風にしておけば、テレビを見たいという欲求が英語を受け入れるようになる。圧倒的に、2:8、1:9ぐらいで日本語よりも英語のテレビを見せるようにしていますね。

俳優の仕事をして思ったことですけど、人間は絶対に教えようと思ったって無理、気付かせなきゃダメ。教えちゃダメなんですよ。教えるのは簡単だし、早いんですよ。答えを先に与えちゃうわけですから。

例えば俳優の場合『芝居はこうすればいいんだよ』って言ってしまうと本人は絶対に応用力が身に付かないんです。だから気付かせるようにするんだけど、それは時間がかかるんです。でも、それをやらないと応用がきかない子になってしまうんですよ」

教師を目指したことがあるだけに導き方も素晴らしい。公私ともに絶好調。今後も意外性のある役を含め、色々な役にチャレンジしていくとやる気満々。男の色気とダンディズムが漂う加藤さんは、スクリーンでもっと見たいと思わせる俳優だ。(津島令子)

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※映画『影に抱かれて眠れ』
9月6日(金)より丸の内TOEI2、横浜ブルク13ほか全国順次ロードショー。
監督:和泉聖治
出演:加藤雅也/中村ゆり 松本利夫 カトウシンスケ 若旦那/AK−69

(C)2019 映画『彼女は夢で踊る』製作委員会

※映画『彼女は夢で踊る』
上映に関するお問い合わせ:http://dancingdreams.jp
監督:時川英之
出演:加藤雅也 犬飼貴丈 岡村いずみ

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