明暗分かれたフィギュア女子。4回転跳べるフリーで“大逆転劇”起こる可能性も<「GPファイナル」女子FS展望>

現地時間12月6日(金)に行われたフィギュアスケート「GPファイナル」の女子SPは、ロシア勢・強力新人3人を含めた表彰台候補の、明暗が分かれる結果となった。

明と出たのは、先日の「NHK杯」で優勝しているアリョーナ・コストルナヤだった。

写真:アフロ

最初のトリプルアクセルを、「NHK杯」以上に余裕を持って決めてGOE(出来栄え点)で2・97点の加点をもらうと、他の2本のジャンプも2点台の加点。スピンとステップはすべてレベル4にして「NHK杯」で出した世界最高得点をさらに更新する、85・45点を出して1位発進した。

演技構成点も前回の試合より少し伸ばし、ノーミスの演技をした五輪女王のアリーナ・ザギトワに0・49点及ばないだけの35・97点。GOEも全7要素で、9人すべてのジャッジが3〜5点を出す完璧な滑りだった。

さらにザギトワも、前戦の「NHK杯」でミスをした後半の連続ジャンプを、冒頭の3回転ルッツ+3回転ループにして挑戦。得点力的には少しレベルを落とした構成ながら、今季初のノーミスの演技で79・60点を獲得して2位発進となった。

写真:アフロ

また、「アメリカ大会」と「中国大会」優勝のアンナ・シェルバコワも、落ち着いた滑りで全要素ともしっかり加点をもらう出来にして、これまでの自己最高を5点弱上回る78・27点を獲得して3位に付けた。

◆紀平とトゥルソワの得点伸びなかった“要因”

その一方、暗となったのは日本の紀平梨花と、コストルナヤと並ぶ優勝候補のアレクサンドラ・トゥルソワだ。

写真:アフロ

コストルナヤの完璧な滑りのあとの2番滑走だったトゥルソワは、今回はSPで冒頭にトリプルアクセルを入れる構成で挑んできた。

これまで74点台だった得点を、一気に80点台に乗せ、さらなる得点の上積みをしようと目論んだのだ。

そのトリプルアクセルも公式練習では決めていたが、6分間練習では7回挑戦してちゃんと回れたのは2回。しかも、ともに転倒していた。

それでもダブルに戻すことなく果敢に挑戦し、攻めの姿勢を貫いた。結果的には回転不足で転倒となり、今季自己最低の71・45点に止まって5位発進となったが、その意欲は称賛に値するものだ。

一方、紀平はそのトゥルソワをさらに下回る、70・71点での6位発進となった。

写真:アフロ

紀平はこの大会、FSで4回転サルコウに挑戦するとともに、SPでもこれまではずっと前半に入れていた3回転フリップ+3回転トウループを、基礎点が1・1倍になる後半に入れる予定にしていた。

ロシアの若手3人は連続ジャンプをすべて後半に入れ、大きな得点源にしているため、少しでも戦える状態に近づけていこうとする思惑だった。

しかし、濱田美栄コーチの「フリーで4回転を入れるなら、ショートはこれまでと同じようにした方がいいのでは」というアドバイスを受け入れ、前半に戻した。

それでも本番では、最初からスピードが上がらない滑りになった。最初のトリプルアクセルは着氷してからバランスを崩し、すぐに左足をついてしまうジャンプに。

さらに、次の連続ジャンプ、セカンドのトウループは着氷で止まってしまって転倒。

紀平は試合後、コンディションの調整が思うようにいかなかったこと等を敗因にあげた。

「最初からすごくしんどくて、体が動かなかった。朝の練習は良かったが、試合まで9時間以上も空いたので、昼には練習の復習をしたり、ビデオを見たりしていたが、それで緊張してしまって昼寝も出来なくなり、体力を温存できなかった。

ウォーミングアップの時に体の状態が違うと感じたが、それを気にせず体を動かしていたことで、疲れが出てきてしまった。試合時間は日本の深夜なので、時差調整がうまくいかなかったのだと思う」(紀平)

そんな調整の失敗がそのまま、演技に出てしまったのだ。

◆4回転跳べるFSで大逆転劇の可能性も

1位のコストルナヤと、トゥルソワの得点差は14点。また、紀平と2位ザギトワとの差は8・11点という大差になった。

しかし、現地時間7日(土)に行われるFSは、順位がこのままで終わるとは考えられない状況だ。

今季のFSの自己最高得点が159・45点のコストルナヤは、合計を245点台に乗せる可能性もあり、優位な位置にいることは確かだ。

それに対してトゥルソワは、自己最高は166・62点だが、それは4回転サルコウで転倒しての得点。

公式練習の曲かけではこれまでのルッツとサルコウ、トウループに加え、フリップを入れた4回転が4種類5本の構成に挑戦していた。そのすべてのジャンプを成功させれば、コストルナヤが完璧に滑っても、逆転できる可能性を持っている。

さらに、3位のシェルバコワも、これまではミスがありながらも160・16点を出しているが、公式練習では武器の4回転ルッツ2本に加え、4回転フリップにも挑戦してしっかり着氷している。

そんな3人に対して、紀平もまた、「NHK杯」では後半の連続ジャンプで回転不足を取られるミスをしながらも、3回転ルッツを入れない構成では最高の151・95点を出している。

そのミスがないことと、4回転サルコウがしっかり入るという条件をクリアすれば、フリーの得点を160点台に乗せられ、SPにミスがあった今回でも合計を230点台に乗せる可能性も持っている。

また大きな得点源になる連続ジャンプを、基礎点が1・1倍になる後半に入れられていないという弱点を持つザギトワも、SPの好発進で合計をギリギリ230点台に出来る位置にいる。

4回転が大爆発して、大逆転劇が繰り広げられるような、三つ巴の超ハイレベルの優勝争いになるのか。それとも大技でミスが出て、表彰台争いは230点台での大混戦になるのか。今回の女子のFSはその両方の可能性もあるだけに、一瞬たりとも目が離せない興味深い戦いになりそうだ。<文/折山淑美>

 

※番組情報:『フィギュアスケートグランプリファイナル2019
12月7日(土)夜7:54〜「女子ショート・男子フリー」 テレビ朝日系列にて放送/AbemaTVにて配信
12月8日(土)夜9:00〜「女子フリー・エキシビジョン」 テレビ朝日系列にて放送/AbemaTVにて配信

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