三谷幸喜もトラブルに備えスタンバイ!近藤芳正、大反響のリモート劇は「電波の神様が…」

三谷幸喜さんが自ら主宰する劇団「東京サンシャインボーイズ」のために書きおろし、脚本を担当した映画『12人の優しい日本人』に出演して以降、三谷作品に欠かせない俳優となった近藤芳正さん

「東京サンシャインボーイズ」の後期作品にはほとんどレギュラー出演するようになっていき、1996年には、西村まさ彦(当時の芸名は西村雅彦)さんとの二人芝居の舞台『笑の大学』が読売演劇大賞最優秀作品賞を受賞する。

◆映画『ラヂオの時間』では舞台版と同じ役でもまったく“別人”?

1993年に三谷幸喜さんが脚本・演出を担当し、「東京サンシャインボーイズ」で上演され話題を集めた舞台『ラヂオの時間』。1997年に三谷さん自身の手によって映画化され、長編初監督作品となった映画版に、近藤さんは舞台と同じヒロインの夫・鈴木四郎役で出演している。

※映画『ラヂオの時間』
全編がラジオ局のなかで展開される密室シチュエーション・コメディー。
はじめて書いたシナリオが採用されたラジオ・ドラマの生放送を控え、緊張しながらリハーサルを見守っていた主婦の鈴木みやこ(鈴木京香)。しかし、出演者たちのわがままから台本が大幅に書き換えられてしまい…。

−映画『12人の優しい日本人』以降、コンスタントに三谷さんの作品に出演されていますね−

「そうですね。そのあとはじめて出たのが、『東京サンシャインボーイズ』の舞台『99連隊』。それで、そこから3年間ぐらいは劇団員じゃないけど、ずっと出ているような状況でした」

−私もですが、近藤さんは『東京サンシャインボーイズ』の俳優さんだと思っていた方が多いのでは?−

「そうでしょうね。まぁ実際劇団員をかたってCMのオーディションを受けたこともありましたからね(笑)。

本当はそのとき、個人事務所だったんですけど、事務所の名前を書くところに自分の事務所を書いても誰もわからないだろうなと思ったので、『東京サンシャインボーイズ』って書いたんですよ。

そうしたら、劇団員の誰かが見ていて、『コンちゃんが東京サンシャインボーイズって言っていたらしいよ』って広まって、三谷さんから『劇団員の手前、そういう嘘はやめていただきたい』って言われちゃってね。『すみません』って謝りました(笑)」

−三谷さんの初監督映画『ラヂオの時間』ではヒロインの夫役、すごく面白かったです−

「ありがとうございます。もともとは舞台で同じ役をやらせてもらっていたんですけど、ただ、映画版ではちょっと設定が違って。

舞台のときは、金持ちの旦那みたいな感じだったんですよ。わりと上から目線で女房を見ている夫という感じで。

それが映画ではヒロインが鈴木京香さんになったので、ちょっと釣り合いをもたせるために、僕は反対に、しがない稼いでいない旦那さんになったりとかね。

あと、あのとき、鈴木京香さんに合わせるためにシークレットブーツも履きましたよ。背が高い京香さんに合わせるためにシークレットブーツを履いてやりました。

それに僕は色白だから、ちょっと色を黒くしたり、貫禄を出すために、お腹(なか)に詰め物を入れたりしてね。『これ、僕じゃなくてもいいんじゃない?』みたいな感じで(笑)。うれしかったですけど、そんなような設定でしたね」

−ものすごく話題にもなりましたし、近藤さんは三谷監督作品に欠かせない俳優としても知られることに−

「そうですね。『ラヂオの時間』が鈴木四郎という名前のある役で、それから三谷さんの映画にはほとんど出ていますね。まぁ、縁起ものとして出させてもらっているので(笑)」

◆自粛期間中に豪華キャストで「『12人の優しい日本人』を読む会」をオンラインで配信

三谷作品で広く知られるようになった近藤さんは、ドラマ、映画、舞台で幅広い役柄を演じ、実力派俳優として活躍の場を広げていく。2001年には「劇団ダンダンブエノ」、2009年にはソロプロジェクト「バンダ・ラ・コンチャン」を立ち上げ、さまざまな舞台公演も行い、2004年と2007年に「バッカーズ演劇奨励賞」を受賞している。

新型コロナウイルスの感染拡大防止のための自粛要請に伴い、約2か月間、テレビや映画の撮影、劇場公演も中止または延期になった。近藤さんは、「こういう時期だからこそできること」をと考え、三谷幸喜さんの戯曲『12人の優しい日本人を読む会』をオンラインで配信することを企画。近藤さん自ら三谷さんに連絡をして許可を得て実現した。

近藤さんの呼びかけで、「東京サンシャインボーイズ」のメンバー、相島一之さん、西村まさ彦さん、梶原善さん、甲本雅裕さん、小林隆さん、宮地雅子さん、阿南健治さん、小原雅人さんが集結し、三谷作品に縁のある吉田羊さん、野仲イサオさんも出演することに。

『12人の優しい日本人』は、まだ日本に裁判員制度がなかった1990年に、「もし日本に陪審制度があったらどうなるのか」ということを自身が主宰する劇団・東京サンシャインボーイズのために三谷幸喜さんが書き下ろした傑作戯曲。

5月6日(水)に13人の俳優がオンライン会議ツール「Zoom」を使って出演。途中休憩をはさみ、前編、後編の2回にわけて配信し、前後編あわせて2万8000人がライブで視聴し、話題に。

−豪華なキャストがそろいましたね−

「そうですよね。最初に相ちゃん(相島一之)に声をかけたら『ぜひやりたい』と言ってくれたので、他のキャストもまずは東京サンシャインボーイズの元メンバーに声をかけて、ダメだったら考えようということにしたんですけど、結局、皆さん、参加してくれることになって。

欠けている役は三谷作品でもおなじみの吉田羊さん、はじめに『12人の優しい日本人ができたらいいな』と言い出した芸術集団『Prayers Studio』の妻鹿ありかさんと同団体の主宰者・渡部朋彦さんにお願いしました。

演出は僕がやるという案もあったんですけど、若い人がやったほうがいいんじゃないかということで、これまでにも『Zoom』 を使ったさまざまな活動をしていた冨坂友さん(コメディー劇団・アガリスクエンターテイメント)にお願いしました。

−リモートでというのは大変だったのではないですか−

「そうですね。みなさん機械にあまり慣れてないから、『Zoom』というツールの存在を知らない人もいらっしゃったので、それを説明したりね。

『パソコンはもっているけど、カメラが付いてないからどうすればいい?』だとか、『これは携帯でできるのか』とか…それを全部、冨坂さんが機械に詳しかったので、彼が引っ張っていってくれて。

まあ色々ありましたよ。『背景をどうするんだ』とか、『通信状態が悪くなった』、『画面が止まった、どうすれば直るんだ?』とか、結構いろんなトラブルが起こるんですよ(笑)。それを全部、『こうやってみてください』、『ここを押してください』とかって教えてくれて」

−稽古はどれくらいの期間でした?−

「このメンバーでと決まったのが、本番の2週間ぐらい前ですからね。稽古は5日間ぐらい。初回は全員が『Zoom』 に入るだけで1時間かかりましたからね(笑)」

−台本は舞台のときのですか?−

「いえ、三谷さんは自分の書いたセリフに固執せず、雰囲気に合わないと思えば変えるので、上演ごとにセリフが変わるんですよ。

だから、相ちゃんが1990年の初演のときの台本をもっていたんですけど、僕が出た1992年の公演とではかなりセリフが変わっていました。

なので、1992年の公演のDVDを見ながら変わった部分を書き出して、妻鹿さんにも手伝ってもらって今回の台本にまとめました。その台本を出演者全員に渡したのが本番の1週間くらい前だったと思います」

−結構ギリギリだったのですね。稽古のときには映らなくなったり、音が出なくなったりということは?−

「ありましたよ。画面が止まったりとか、セリフが返ってこないから、どうしたんだろうと思ったら、『ごめん。フリーズしていて、進んでいるのがわからなかったんだよ』って言う人もいましたからね。

細部まで細かい通し稽古ができたのは本番前日だけでしたし、これはもう本番で絶対に何かトラブルがあると思って。小トラブルだったら、とにかく我々でフォローしようと。

ただ、退出になって、入ってこられなくなったら、三谷さんに頼もうと思って、『大きなトラブルのときには、三谷さん頼んでいい?』って言ったら、『わかった』って言ってくれたので、保険ができて安心しましたけど、あんなにスムーズにいくとは思ってなかったです。

もっとやっぱり、『Zoom』 ってタイムラグが出たりとかするし、絶対に誰かがフリーズしちゃったりということがあると思っていたので。だから、本番がスムーズにいったのは、電波の神様が味方をしてくれたんじゃないですかね(笑)」

−ご自宅で色々発信されている方のなかには、大声を出しすぎて近所から苦情が来て引っ越しをされた方もいるそうですが、大丈夫でした?−

「僕は大きい声を出しすぎて、隣の家の犬に吠えられたということがありました(笑)。本番中じゃなかったんですけどね。西やん(西村まさ彦)に『リハーサルで急に声が小さくなったのはどうして?』って言われたから、『隣の犬にほえられたから』って(笑)」

−15,000人がライブで視聴し、再生回数もすごい数になりました−

「たくさんの方に見ていただけたこと、喜びの声もたくさんいただいてとてもうれしかったです。三谷さんとも『想像以上の反響だね』って話しました。やって本当に良かったと思っています」

近藤さんは自粛要請期間中に一人芝居『DISTANCE』も配信して話題に。次回後編ではその『DISTANCE』の舞台裏、間もなく公開される映画『河童の女』の撮影裏話、健康法などを紹介。(津島令子)

(C)ENBUゼミナール

※映画『河童の女』
7月11日(土) 新宿K’s cinema、7月18日(土)池袋シネマ・ロサほか全国順次公開。
製作・配給:ENBUゼミナール
監督・脚本:辻野正樹
出演:青野竜平 郷田明希 斎藤陸 近藤芳正ほか
社会現象を巻き起こした『カメラを止めるな!』を輩出したENBUゼミナール「シネマプロジェクト」最新作。
川辺の民宿で生まれ、そこで働きながら暮らしている浩二(青野竜平)の父親で社長の康夫(近藤芳正)が見知らぬ女と出て行ってしまう。途方に暮れる浩二の前に、東京から家出して来た女(郷田明希)が現れ…。

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