【エンタなう】悪趣味の極み!連続殺人鬼の胸中をのぞく… 映画「ハウス・ジャック・ビルト」

 悪趣味の極み。ラース・フォン・トリアー監督作品への“褒め言葉”だが、多くの良識ある大人は嫌悪感をもよおして当然なのが、カンヌ映画祭で途中退席が100人も出た、いわくつきの最新作「ハウス・ジャック・ビルト」(公開中)である。マット・ディロン演じる連続殺人鬼が、これでもかと凄惨なシーンを繰り広げる上、2時間32分と長くつらい。

 1970年代の米ワシントン州。建築家志望のエンジニア、ジャック(ディロン)は山道で車が故障した女性(ユマ・サーマン)を助け、同乗させるが、車内で憎まれ口を叩かれたことでぶち切れ、工具であっさり女性を撲殺する。以後、まるでアート作品のように鬼畜な殺人を繰り返す。

 一方で、湖畔に理想郷の「ジャックの家」を建てようとする場面が何度も挿入され、グレン・グールドが奏でるバッハと、デヴィッド・ボウイの「フェイム」が流れる。エキセントリックな心情が増幅されてゆく。

 とくに幼な子がいる人は目を覆う場面があり、心臓の弱い方には決しておすすめできない。だが、ジャックが語る12年間にわたる殺戮(さつりく)の聞き手である“喪黒福造”のような謎の男バージ(ブルーノ・ガンツ)が登場する後半に変態的美学がある。ダンテの「神曲」を下敷きにした映像には目を見張り、陶然となった。そこまで耐えられるか。耐える必要があるのか。見たくないものを見たい、という自分の中の俗物と向き合うことになる。(中本裕己)

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