【ジョン・ウェイン 西部劇の神髄】「正しい保安官描きたい」古典的西部劇に革命 「リオ・ブラボー」

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 前回、ジョン・ウェインの生涯全作品は154本と書いた。そのうち79本が西部劇だ。

 出世作『駅馬車』(1939年)で使った同じ型のカウボーイハットを、20年後の『リオ・ブラボー』(59年)でもそのまま使っている。西部劇のほとんどでかぶっていたという。アメリカ人もゲンを担ぐのか。

 ウェインはフレッド・ジンネマン監督の『真昼の決闘』(52年)の保安官役の描き方に不満を持っていた。そこで親しかったハワード・ホークス監督に「正しい保安官を描きたい」と持ち掛け、実現したのが本作という。ホークス監督自身も後に「ベテランスタッフをかき集めて本物の西部劇を作ってみたかった」と述べている。

 恋あり歌あり笑いありのコメディー。中身は壮絶なガンファイトがあるかと思えば、ぶきっちょな保安官の人柄にニヤリとさせられたり、そのギャップが面白いのだ。

 ストーリーは単純。メキシコ国境に近い町。殺人犯のジョー(クロード・エーキンス)を捕まえた保安官チャンス(ウェイン)だが、ジョーの一味が馬車を壊して町を出られなくしてしまう。チャンスは少ない味方と一緒に救援を待つ。

 味方はアルコール依存症だが早撃ちのデュード(ディーン・マーチン)、片足のないスタンピー(ウォルター・ブレナン)、流れ者のコロラド(リッキー・ネルソン)という面々。

 町を包囲した敵のバーデット一味が一晩中『皆殺しの歌』を歌う。この歌、実は歴史上名高いメキシコ軍がアラモ砦を攻撃時に歌ったとされる『DE GUELLO(デ・グエイヨ)』が原曲。ウェインは翌年に自ら監督した『アラモ』(60年)でもしっかり使っている。

 デュードが観念して酒を浴びるシーン。「あの音楽で急に手が止まった。あれで敵が誰だか思いだしたよ」と酒を戻すのが何とも泣ける。

 『エル・ドラド』(66年)、『リオ・ロボ』(70年)と合わせて「リオ・ブラボー3部作」と呼ぶ。『六連発銃と社会』(ウィル・ライト著)では開拓民を守るヒーローという古典的な西部劇に対して、ホークス監督の西部劇は責任感や誇り、腕の競い合いというプロフェッショナルを描く新しいヒーローの誕生だと分析する。

 リオとはスペイン語で川という意味だ。(望月苑巳)

 ■ジョン・ウェイン 1907年5月26日、米アイオワ州生まれ。映画スタジオで大道具係として働く中、ラオール・ウェルシュ監督に抜擢され『ビッグ・トレイル』(30年)に主演。64年には肺がんを発症したが、片肺を失っただけで奇跡の復活。79年6月11日、ロスの病院で死去。リオ・ブラボー 59年公開で、監督はハワード・ホークス。共演は、ディーン・マーティン、リッキー・ネルソン、アンジー・ディキンソンら。

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