【勝負師たちの系譜】渡辺明VS豊島将之、真の決戦はこれから

【勝負師たちの系譜】渡辺明VS豊島将之、真の決戦はこれから

ヒューリック杯棋聖戦第4局に勝利し、棋聖位を奪った渡辺二冠(右)=9日、新潟市

★頂上決戦(2)

 現在タイトルを複数持っているのは、豊島将之名人の三冠と、渡辺明二冠の2人だけ。豊島の持つ棋聖位に渡辺が挑戦していた今回の「ヒューリック杯棋聖戦」は、正に頂上決戦であった。

 豊島が先勝し、次を渡辺が返してタイに持ち込んだ静岡県『沼津倶楽部』の第3局。前夜祭は着席で340人という、大宴会場となった。

 これも地元の実行委員会が力を入れているお蔭だが、昨今は知り合いに声をかけなくても集まるようになったという。将棋界と2人の人気である。

 主催者や対局者の挨拶が終わると、両対局者の前にずらりと列ができる。一言話をして、一緒に写真を撮るためだ。

 通常前夜祭は、1時間ほどで対局者は退室し、パーティーは長くても2時間で終わるが、ここは対局者が2時間、パーティーは3時間続く。フランス料理のフルコースで飲み放題、対局者と写真が撮れ、最後に棋士の色紙が当たる抽選会があって1万円のパーティーは、ほかの世界にはないと思うのだがどうだろう。

 翌日の対局は、渡辺の先手で、矢倉戦に誘導したが、豊島は急戦模様から雁木に組み替える、AI的手法を採る。

 一昨年の渡辺の不調は、この現代戦法に後れを取ったからと言われたが、今は完全に使いこなし、昨年の絶好調にと繋げている。

 豊島は自分らしくと、勢い良く攻めたが、途中で引き返すちぐはぐな指し手を見せ、一気に形勢を損じた。

 そこからの渡辺の指し手は冴え、最後は相手を押し潰すような指し方で快勝した。

 これに気を良くしたか、第4局も豊島のノーガード攻めをうまくかわし、ギリギリの細い攻めを繋げて渡辺は勝ちきり棋聖を奪取した。

 渡辺にすれば棋聖位は初めてで、自身が三冠となるのも6年ぶりだ。20歳で竜王となり、通算11期も獲得した竜王戦では無敵の渡辺にして、他のタイトルを獲得したのは、それから9年後の王将位だった。

 今回の頂上決戦は渡辺に軍配が上がったが、豊島は王座戦の準決勝や竜王戦の決勝トーナメントに残っている。また渡辺も竜王戦に残っている状況で、本当の頂上決戦はこれからかもしれない。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

関連記事(外部サイト)