【シネマプレビュー】多十郎殉愛記

【シネマプレビュー】多十郎殉愛記

映画「多十郎殉愛記」から。追っ手に囲まれた多十郎(高良健吾)は… ?「多十郎殉愛記」製作委員会

 現在84歳の巨匠、中島貞夫監督が20年ぶりに取り組んだ長編劇映画で、チャンバラの醍醐味(だいごみ)をたっぷりと盛り込んだアクション時代劇に仕上がった。幕末、剣の達人だった長州藩士の清川多十郎(高良(こうら)健吾)は、親が残した借金から逃れるために脱藩し、京都の貧乏長屋で小料理屋の女将(おかみ)、おとよ(多部未華子(みかこ))に世話を焼かれながら、怠惰な日々を過ごしていた。だが取り締まりを強めていた幕府の組織、京都見廻組(みまわりぐみ)に目をつけられ、やむなく刀を抜く羽目になる。

 何も企てず、何の野心もない世捨て人が、さしたる理由もなく追っ手に狙われるというのはいかにも現代風で、中島監督のみずみずしい感性が光る。一方で、終盤30分にも及ぶ大立ち回りは、監督が20代の助監督時代から鍛えられてきた東映京都撮影所伝統の正統派チャンバラで、カメラアングル、スピード感を含めて見応えは十分。さらに暗がりの中で高良と多部が見つめ合う表情など、時代劇ならではの風情あるショットも盛りだくさんで、大ベテランの健在ぶりに心が躍った。12日、東京・丸の内TOEI、大阪・梅田ブルク7などで全国公開。1時間33分。(藤)

 ★★★★(★5傑作 ★4見応え十分 ★3楽しめる ★2惜しい ★1がっかり ☆は半分)