【小菅優 音楽と、夢に向かって】視覚要素 クラシックでも重視

 20世紀を代表するロシアの作曲家、ストラビンスキーが、コンサートにおいて音楽家の動作を見ることが、音楽の理解を助けるという証言を自著で披露しています。もともと聴覚で受け止める音楽を視覚的に感じることは面白いテーマだと思います。

 先日、もうすぐリリースするCDのため、演奏中心のプロモーションビデオを撮影しました。手や顔のクローズアップ、右から、そしてクレーンを使って上からと、たくさんの角度から撮影するため、何回も同じ曲を演奏します。

 こういう機会なので視覚的なことも大事だとしても、普段演奏するのと全く変わりなく、いつもと同じように演奏しました。

 昔は、基本的に音源のみを聞いて自分の購入したいCDなどを判断していたと思いますが、最近、特にインターネットなどでの宣伝では、こうしたビジュアルも加えたビデオがクラシック音楽界でも中心になってきたようです。音のみでなく全体から音楽をとらえるということなのでしょうか。

 例えば、指揮者は音楽を動作で表現し曲の内容へと演奏者を導きます。演奏家の場合も楽器や作品によって、視覚要素を加えると分かりやすいと思います。

 このアーティストは自然体か、音楽に没頭しているか。そしてこの音楽は、例えばリズミカルで楽しい音楽なのか、陰影があって暗い音楽なのかなど、演奏者の表情を見ているとより明らかになるでしょう。

 でも、私がずっと尊敬してきたピアニストの巨匠たちが、ただ壁のように座って弾いていても、音楽からあふれ出る音色と表現力、つまり聴覚に集中しただけでも信じ難いほど感動します。また、ある音楽家が真っ暗な中で弾いていても、素晴らしい音楽性は十分伝わってきました。

 今後、音楽の味わい方がどう変化するのか興味深いですが、どういう受け止め方にせよ、音楽が深い芸術として心に残るものであることを願っています。(こすげ・ゆう=ピアニスト)=毎月第2火曜日掲載

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