ギタリスト・内田勘太郎新譜「Tohgen Kyo」 音色の世界に誘いたい

ギタリスト・内田勘太郎新譜「Tohgen Kyo」 音色の世界に誘いたい

アルバム「Tohgen Kyo」をリリースした内田勘太郎

 「憂歌団」で20年、ソロを中心に20年、ギター小僧を畏怖させ、大人のリスナーを泣かせ続けたギタリスト、内田勘太郎がアルバム「Tohgen Kyo」を発売した。桃源郷である。甲本ヒロトとのユニットでごりごりのブルースアルバム「ブギ連」を出したばかりだが、一転、極私的スタンダードナンバーをギターで奏でた。(別府育郎)

 少年から青年時代にラジオやレコードで飢餓感をもって音楽を聴いた至福の時間をギターでたどる。冒頭は渚ゆう子の息遣い、節回しをギターで奏でてみたいと「京都慕情」。「京都は自身の音楽の出発点」の思いは8曲目のオリジナル、「ブルース フォー 西部講堂」と対(つい)になる。

 2曲目は「夜霧よ今夜も有難う」。「隙だらけで、いかようにもアレンジしてという自由な曲」ということで、見事な勘太郎節を聴くことができる。3曲目の「赤いスイートピー」は自宅でいたずらで弾いていたら、家族から「アルバムに入れたら」と勧められた。

 4曲目の「誰かが誰かを愛してる」はディーン・マーチンの酔っ払い芸が原点で、バラエティーの王道は日本の「シャボン玉ホリデー」に引き継がれた。番組のテーマだった「スターダスト」が6曲目。過去に何度もレコーディングしてきたが、「究極の形にたどり着けたと思う」。

 5曲目はサム・クックの名曲「A Change Is Gonna Come」。4年前に亡くなったギタリスト石田長生(おさむ)が「絶対に好きだったろう、弾きたかったろうな」と、アルバムに入れた。

 高校の卒業式、帰路にあった音楽喫茶に同級生の木村充揮と2人で演奏をさせてくれと頼み込んだ。「憂歌団」の原型である。快諾されて常連となったその店でいつも聴いていた名盤「エラ・フィッツジェラルド・イン・ベルリン」から「サマータイム」に魅せられて、これが7曲目。同じ店でよく聴いたのが浅川マキで、「少年」を10曲目に演奏している。

 9曲目は「日本の美しい景色、人情、何度でも見られる大好きな映画」から、「男はつらいよ」。

 最後の11曲目のみ「教訓I」を自身で歌う。2年前に亡くなった加川良の代表作で「あんなにいい歌、誰かが歌い継がないと」。

                 ♪ ♪ ♪

 アルバムの狙いは、聴く人を「誘(いざな)いたい。例えば、ふらっとなじみの居酒屋に連れて行くように」。その先に音楽がある。音色がある。勘太郎独自、独特の世界がある。

 夏、飲む機会があった。深夜、いや未明か。「ちょっと聴いてみてほしい」と流してくれたのが、この録音だった。酔いも多少は手伝ったか、涙が流れて仕方がなかった。そんなアルバムである。聴かれたし。

関連記事(外部サイト)