薬師丸ひろ子 女優引退を決意した瞬間「才能なんかないということの“究極”を突きつけられた」

薬師丸ひろ子 女優引退を決意した瞬間「才能なんかないということの“究極”を突きつけられた」

薬師丸ひろ子

 女優で歌手の薬師丸ひろ子(57)が23日、NHKラジオ第1「歌手生活40年 薬師丸ひろ子“小春日和”」(後1・05)に出演し、かつて女優引退も決意した作品について語った。

 薬師丸の歌手活動40周年を記念した特番で、過去の名曲や映画などを、関係者からのメッセージや薬師丸自身のトークなどで振り返った。薬師丸は「Woman ”Wの悲劇”より」が主題歌に使われた、84年公開の大ヒット映画「Wの悲劇」の裏にあった葛藤について話した。

 呉田軽穂(松任谷由実)から楽曲提供された名曲。「子供のころから憧れていた呉田軽穂さん、ユーミンが書いて下さるということで、それだけでつらかったことも忘れられるなっていうくらいうれしかった。何て美しいんだろう。自分がどこにいるんだか分からない。夜空の中に体が浮かんでいるような、そんな曲だなって」と、提供された当時を懐かしんだ。14年に初出場したNHK紅白歌合戦でも披露するなど、薬師丸の歌手生活を語る上で外せない1作となった。

 一方で、「この映画のラストシーンに流れるんですけど、そのラストシーンの撮影がとってもとってもつらかったので、この曲を歌う時も主人公の気持ちと、自分がシンクロして、歌うたびに何となく切ない気持ちになることもありました」とも打ち明けた。

 「Wの悲劇」の撮影は、演じることの喜びと苦しさが交錯する、薬師丸の中では忘れられない思い出という。「この撮影は、そのラストを迎えるまで本当に充実感があったというか。(澤井信一郎)監督も厳しいご指導をして下さるんですけど、そのシーンごとに監督が納得すると『OK!』って言って下さるんです。そのことが、どんどん難しい芝居をしていく中でも自分自身の高揚感につながっていったというか」。

 薬師丸演じる駆け出しの舞台女優が、スキャンダルを利用して成り上がっていく物語。順調に進んだと思われた撮影だが、ラストシーンでは大きな壁にぶち当たった。薬師丸は澤井監督から何度もやり直しを命じられたという。「このラストシーンというのは、この少女が自分を持っているものをすべて失って、心も空っぽになった状態で、これから一人で歩いて行かなければいけないという、別れを恋人に告げるシーン」と説明。「私がただ泣いて別れを告げるというだけでは、監督は許せないと思ったんだと思うんですね。なので、涙も枯れ果てるまで、涙が出てこないくらい。監督が『もう1回!』、『もう1回!』って。何回もやることは構わないんですけど、自分が何も出てこない。何もできないというところまで監督に追い詰められて、監督が最後の最後にOKを出したんですね」と振り返った。

 繰り返されるNGの中で、自分の引き出しのなさと実力不足を痛感したという。「厳しいのは構わないんですけれども、そういった意味で、才能もないのに皆さんが私にかける時間が多すぎて、『才能なんか本当にないんだろうな』ということの“究極”を突きつけられたのを、自分自身に問いただしたのがこのラストシーンだったんです」と苦い思い出を語った。

 映画公開はまだ20歳の時だったが、この作品の後、しばらく女優業から離れることになる。「実際、やめましたし、しばらくの間、仕事も。そういうラストでした」。苦しい思い出とは対照的に、同作で薬師丸は高い演技力が評価され、ブルーリボン賞の主演女優賞を受賞している。

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