気鋭落語家・林家たけ平 「通過点の役になりたい」

気鋭落語家・林家たけ平 「通過点の役になりたい」

浅草演芸ホールの前で「初めて落語を聞くお客さんに喜んでもらいたい」と意欲を見せる林家たけ平

 【牧 元一の孤人焦点】林家たけ平の落語を浅草演芸ホールで聞いた。昼間の前半の出番で持ち時間は10分。雑談のような短い話をつないで客席を笑いに包んだ。

 印象的なのは、腹の底から出ている声の強さ。迫力があり、自然に話に引き込まれる。「うちのおばあさんがピーマンを口にくわえて料理してた。『何してんの?』と聞いたら『料理の本に書いてある』。なるほど書いてありましたよ。『チンジャオロースはピーマンを加えてください』」。客席の反応が薄いと、すかさず「拍手の練習をしましょう」と促し、拍手をもらうが「いまさらやられるとバカにされた感じになる」と嘆いて笑いを取る。観客一体型の親しみやすい話芸だ。

 浅草演芸ホールの松倉由幸社長は「たけ平さんは足立区出身。下町ならではのキャラクターで、浅草に非常に合っている。ふだんは雑談みたいなものをやっているが、トリを取れば古典落語をしっかりやる。11月には、ここでトリを取る予定。若手だが、とてもセンスが良く、力があって、これから楽しみ」と大きな期待を寄せる。

 近所の喫茶店で本人に話を聞いた。ざっくばらんな語り口で、なじみやすい。

 「落語を初めて聞くお客さんに喜んでもらえるポジションにいたい。僕のを聞いてもらって『じゃあ、次は古典を聞いてみよう』と思ってもらい、他のうまい人のを聞いてもらって染まってもらえばいい。僕は通過点の役になりたい」

 現在、42歳。小学生の頃から寄席に通い、成人後に就職したものの、演芸に関わる仕事を求め、林家こぶ平(現・正蔵)のマネジャーになった。間もなく落語家に転身。決心のきっかけは、自分の誕生日に、ふだん雑談のような話で笑いをとっていた、こぶ平が珍しく古典落語を演じたことだった。

 「僕が『なんでですか?』と聞くと『おまえ、きょう誕生日だろう』と言うんです。面白いな、と思いました。師匠は、僕が子供の頃から寄席が好きだったことを知ってたんですね。それ以上は聞きませんでしたけど…。こぶ平を見てると、どこに行っても、初めて落語を聞く人が笑う。凄く良い仕事だと思ったんです」

 16年に真打ちに昇進。寄席でトリを取るようにもなった。しかし、基本姿勢は変わらない。

 「その日の寄席で、自分が何を求められているかを考え、その役割を果たすことが仕事だと思ってます。寄席にはあれだけ多くの人が出るんですから、その全部を受け止めたらお客さんは消化不良になってしまう。『オレの落語を聞け!』じゃなく、お客さんを和らげる程度の人がいた方がいい。自分がトリを取る時や独演会は別ですけどね」

 これから迎える円熟期。50歳、60歳、70歳と年齢を重ねていく中で芸風はどう変化していくのか。

 「寄席の途中の出番に限って言うならば、思い出に残らない噺(はなし)家になりたい。『あのじいさん、何話したっけ?』と言われるくらいがいい。『記憶に残らない噺家』として記憶に残りたい」

 徹底したプロ意識。今後もますます寄席を盛り上げて行くことになるだろう。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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