片寄からの最後のメッセージ

片寄からの最後のメッセージ

先日東京オリンピック関連のイベントに参加させて頂きました。歴史ある聖火が灯ったステージで歌わせて頂いて…生きているうちにこんな経験ができて大変光栄に思います

■片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)×作詞家・小竹正人 往復書簡39


 コロナ禍に始まっていまだコロナ禍の中、幕を閉じようとする往復書簡。今回で片寄パートはラストとなる。

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拝啓 小竹正人さま

 この往復書簡が始まる頃の打ち合わせで「初めは僕が書いたほうがいいと思う」と提案させて頂いたことを思い出した。そのときは「返事の来ない手紙」を最後に小竹さんに書かせることになるとは全く思っていなかった。

 僕としてはこのメッセージが最後。あえて僕の短い人生のなかでの、些細な思い出話のようなものを綴らせてもらおうかと思います。

 なんてことのない物や出来事を通じて、必ずよみがえるエピソードがあります。

 例えば割り箸を割るたびに思い出すこと。僕は割り箸を割ったあと、割れた箸同士の割れた面を合わせて擦るクセがあるのですが、小竹さんとの食事の席で割り箸を割ったときにそれを「いま何したの??」と揶揄(からか)うように突っ込まれたこと。

 またそれも食事をご一緒しているとき。食事も一通り済みそろそろ帰ろうかという頃、小竹さんが結露したグラスに付いた水滴を何気なく指で引っ張ったことがあった。

「こういうのを歌詞にするんだよ」とボソッとおっしゃった数年後に生まれたGENERATIONSの「Stupid〜真っ赤なブレスレット〜」という楽曲。その歌いはじめは「曇ったガラスを指でなぞったら 水滴散らかしながら一本の線ができる You know」でした。

 なんの引き合わせかそのパートを僕が歌うことになったのですが、僕の脳裏には歌うたびに必ずそのときの画が鮮明に浮かぶ。でも何も知らずに歌詞だけを見たら、これは冬の窓ガラスなんだろうなと想像する人は少なくないだろうなとも思う。

 小竹さん自身が僕との食事の席でのそんな一瞬を覚えているとは考えにくいのですが、僕自身はそんな些細なことを妙に頭にこびり付かせてしまうことがあるのです。

 親からもらった言葉でも忘れないものがある。

「こんにゃくはお腹の掃除をするんだよ」と母から言われ、子供心に“お腹が掃除される”ことを想像して必ず食事の最後に食べないと気が済まなくなったこと。まだ4、5歳の頃に「『チュウトハンパ』という言葉の意味がわからない」と母と買い物をしているときに聞いたことがあった。すると母は乗っているエスカレーターのひとつ上の段に片足を乗せて「これが『中途半端』だよ」と教えてくれた。

 この話を母にしたら、もちろん覚えていなかったのですが、もし自分に子どもができて同じことを聞かれたら、同じように教えてあげようと思う。

 小竹さんが書いてくれたように、確かにこの往復書簡を通して、僕自身も「知らない自分」に出会うことができたのだと思いました。

 でもこういった些細な思い出を記し、思い返せるような場所だったなら、その自分は決して「知らない自分」ではなくて、僕自身が大切にしてきた「大切にしたい自分」だったんじゃないかと思う。

「自分を大切に」と言うと、自己愛やナルシストっぽいかもしれないですが、この往復書簡を通して「僕自身が好きな片寄涼太」をお届けできたのではないかな。

 この往復書簡を覗き見してくれた読者の皆さまにとって、ほんの些細な…でも頭にこびり付くような言葉や思い出が少しでもお届けできていたらなと願って。

 小竹正人さま、心から…ありがとうございました。

片寄涼太

敬具

片寄涼太 Ryota Katayose
GENERATIONS from EXILE TRIBEのボーカル。1994年8月29日生まれ。大阪府八尾市出身。祖父と父が音楽教師で、若いころからピアノに親しむ。2012年にデビュー。14年にドラマ「GTO」で俳優デビュー。19年に映画「午前0時、キスしに来てよ」で橋本環奈とW主演。GENERATIONS、25枚目のシングル「雨のち晴れ」が発売中。

小竹正人 Masato Odake
作詞家。3月10日生まれ。新潟県出身。東京・本郷高校、カリフォルニア州立大学卒業。 作詞曲「Unfair World」で第57回日本レコード大賞受賞。「花火」(三代目J SOUL Brothers from EXILE TRIBE)など、数百曲を手掛けた。小説は『空に住む』『三角のオーロラ』(共に講談社)、歌詞&エッセイ集に『あの日、あの曲、あの人は』(幻冬舎文庫)。2017年から、自身の歌詞をモチーフに、三池崇史、行定勲、河瀬直美、石井裕也らが映像化する「CINEMA FIGHTERS project」のコンセプトプロデューサーを務める。

2021年4月18日 掲載

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