朝の「情報番組」戦争 視聴率トップ「羽鳥モーニングショー」の知られたくない弱点

朝の「情報番組」戦争 視聴率トップ「羽鳥モーニングショー」の知られたくない弱点

テレビ朝日「モーニングショー」公式ページより

 平日の午前8時からは4つの情報番組が始まる。「スッキリ」(日本テレビ)と「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日)、さらに4月から始まった「ラヴィット!」(TBS)と「めざまし8」(フジテレビ)である。2つの新番組のスタートから約半年が過ぎた。午前帯の情報番組戦争に異変は起きたのか(視聴率はいずれもビデオリサーチ調べ)。

 論より証拠。まず関東地区の世帯視聴率、個人全体視聴率、加えて購買意欲が旺盛でスポンサーに最も歓迎されるF1層(女性20〜34歳)の個人視聴率を見てみたい。

●9月13日(月)関東地区
「スッキリ」(1部、午前8時〜同9時30分、以下同)世帯6.7%、個人全体3.4%、F1層3.1%
「モーニングショー」世帯9.9%、個人全体5.3%、F1層0.2%
「ラヴィット!」世帯2.7%、個人全体1.4%、F1層1.0%
「めざまし8」世帯5.7%、個人全体2.9%、F1層2.0

 世帯と個人全体は「モーニングショー」がトップで、「スッキリ」と「めざまし8」が追い、「ラヴィット!」は水をあけられている。

 この構図は、「めざまし8」の前身番組「とくダネ!」、「ラヴィット!」の前身番組「グッとラック!」が、それぞれ放送されていた3月末までと同じ。午前帯の情報番組戦争に異変はないように映る。

 もっとも、それは表面上の話。非公開データであるF1層のデータを見ると、「モーニングショー」のF1層の視聴率が深刻なまでに落ち込んでいる。

 同番組の9月13日のF1層視聴率は0.2%。テレビ東京が同じ時間帯でやっている韓流ドラマ「魔女たちの楽園〜二度なき人生〜」(月〜金曜午前8時15分〜9時11分)のF1層視聴率は0.5%だから、それより下なのだ。


■コメンテーターを改革するも


 この日に限らない。翌14日の同番組のF1層視聴率は0.4%、15日も0.5%……。これでは世帯と個人全体が高視聴率でも安泰とは言い難い。若い視聴者が得られないとCMの価格は上がらないからだ。

「視聴者の年齢層が高いのは以前からのことで、それを背景に番組幹部は硬いイメージが強かったジャーナリストの青木理氏や女優の高木美保さんらを3月いっぱいでコメンテーター陣から退いてもらった。代わりに4月からはハーバード大とジュリアード音楽院をどちらも首席で卒業した廣津留すみれさん、若い人から尊敬されている社会活動家の石山アンジュさんらを新コメンテーターに招きました。けれど今のところ目に見える効果はない。冗談交じりに『連日出ている玉川(徹)さんが若い女性にウケないんじゃないか』と言うスタッフもいます」(テレビ朝日報道局情報番組センタースタッフ)

 確かに差が付くとしたら、コメンテーター陣か番組の取材力・構成力だろう。MC4人は個性こそ違うものの、いずれも当代屈指の売れっ子で、優劣が付けがたいからだ。

「スッキリ」の加藤浩次(52)は「人生最高レストラン」(TBS)などMCのレギュラーが4本、羽鳥慎一(50)は「人生が変わる1分間の深イイ話」(日本テレビ)など同3本、「ラヴィット!」の麒麟・川島明(42)は「ウワサのお客さま」(フジ)など同5本、「めざまし8」の谷原章介(49)は「うたコン」(NHK)など同5本ある。古くから午前帯の情報番組のMCはその時代の実力者が務めてきたが、今は特にそうなのだ。

 新規参入の川島と谷原も慣れてきたのが分かる。持ち味が発揮されるようになってきた。川島はサブカルなどの情報を提供する時、自分の知識をさりげなく付け加えている。嫌みがないのが川島の特長の1つである。

 一方、谷原は3男3女の父親の顔が出てきた。9月14日、福島県会津若松市の猪苗代湖で昨年9月に小学3年生の男子をひき逃げして死亡させた容疑者(44)が逮捕されたことを伝えた際、10秒ほど言葉を失った。子煩悩で知られることから、感極まったのだろう。怒りや悲しみが自然と表れるようになった。

 このひき逃げ事件で「めざまし8」は男児の母親を独占取材した。フジは事件に強い。天達武史氏(46)のお天気コーナーも視聴率が伸びる。「モーニングショー」の看板は言うまでもなく新型コロナ禍情報だ。

「スッキリ」はエンタメ情報に力が入っている。ダンス&ボーカルグループ「BE:FIRST」が誕生する過程などを追った。「ラヴィット!」は時事ネタを追わず、生活に密着した情報の提供に特化している。

 これらのカラーのうち、どれを好むかは地域差があるようだ。例えば関西の人は事件が肌に合うのか、このところ「めざまし8」が関西で視聴率を伸ばし、「モーニングショー」の脅威になっている。

 8月16日に関西テレビで放送された「めざまし8」の世帯視聴率は14.4%。ドラマの大ヒット作並みだったことから、在京キー局のスタッフも驚き、話題になった。ただし、この日は「モーニングショー」(朝日放送)がお休み。代わりに甲子園から高校野球を中継していた。


■F1層視聴率が低い「モーニングショー」


 もっとも、その後も「めざまし8」が「モーニングショー」を攻める構図は変わらない。世帯と個人全体でトップを取ることもある。

●9月13日(月)関西地区
「スッキリ」(読売テレビ)世帯5.7%、個人全体3.0%、F1層3.1
「モーニングショー」(朝日放送)世帯8.1%、個人全体4.3%、F1層0.9%
「ラヴィット!」(毎日放送)世帯3.5%、個人全体1.6%、F1層1.1%
「めざまし8」(関西テレビ)世帯9.2%、個人全体4.8%、F1層2.7%

 在京キー局の人間は「関西の話だから無関係」とは思わない。2006年に関西ローカルで始まった午後帯の情報番組「ミヤネ屋」は2007年から関東でも放送されるようになると、短期間で人気番組になった。「めざまし8」は関東では3位だが、その動きはライバルから注目されている。

 一方、関西と関東で同じなのは「モーニングショー」のF1層視聴率の低さ。週に5日、約2時間ずつ放映している番組だから、これは痛い。

 「モーニングショー」はファン層が50歳以上に集中しているのだ。同番組の性別、年齢別の個人視聴率を見てみよう。

●9月13日(月)関東地区
*男性20〜34歳 0.4%
*男性35〜49歳 2.0%
*男性50歳以上 9.7%
*女性20〜34歳 0.2%
*女性35〜49歳 2.0%
*女性50歳以上 9.8%

 若い視聴者が観ている番組のほうが優れているというわけではない。とはいえ、現在の「モーニングショー」は視聴者層が偏っていると言わざるを得ず、円滑な番組運営を考えると、若い視聴者も早急に取り込みたいところだろう。

 なぜ、「モーニングショー」は若い視聴者に人気薄なのかというと、世間の風潮と同じく、若い人はミドル層・シニア層ほどは新型コロナ禍に関心がないからではないか。

 芸能スキャンダル、エンタメ情報をほとんどやらないことも理由に違いない。

「ノウハウはあるから、やろうと思ったらすぐ出来る。半面、本当にやったら、硬派色を好むこれまでの視聴者の一部は逃げてしまうだろう。だから安易には舵を切れない」(テレビ朝日報道局情報番組センタースタッフ)

 意外や方向性について最も頭を痛めているのは世帯も個人全体も関東ではトップの「モーニングショー」なのかも知れない。

 午前帯の情報番組戦争には終わりがない。果てしなく続く。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年9月21日 掲載

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