「THE TIME,」初回視聴率は「あさチャン」より大幅アップ めでたさも中くらいのワケ

「THE TIME,」初回視聴率は「あさチャン」より大幅アップ めでたさも中くらいのワケ

TBSテレビ「THE TIME,」番組公式サイトより

 司会を安住紳一郎アナ(48)と香川照之(55)が務めるTBSの朝の情報番組「THE TIME,」(平日午前5時20分〜同8時)が10月1日に始まった。その初回視聴率の大勢が分かった。大物投入の効果はあったのだろうか(視聴率はすべてビデオリサーチ調べ、関東地区)。

 10月1日(金)に放送された「THE TIME,」の午前7時台の視聴率は「あさチャン!」より大きくアップした。

 1週間前の9月24日(金)放送の「あさチャン!」第2部(午前7時台)は世帯視聴率4.0%、個人視聴率2.2%だったが、「THE TIME,」の初回は世帯も個人も数字が約1.5倍になった。

 月曜から木曜までの司会を務める安住紳一郎アナと金曜日の司会担当の香川照之は本来、一緒に出演しないが、初日は2人そろって登場。ユーモアとウイットに富んだトークを繰り広げた。その効果が数字となって現れた。

 もっとも、ニュースも情報番組もやっていないテレビ東京を除くと、横並びでTBSが最下位という構図に変化はなかった。「あさチャン!」と他局の間に大きな開きがあったためだ。

 世帯と個人の順位は同じで、以下の通りだった。(1)NHK「おはよう日本」(2)テレビ朝日「グッド!モーニング」(3)フジテレビ「めざましテレビ」(4)日本テレビ「ZIP!」(5)TBS「THE TIME,」=いずれも午前7時〜同8時=。

 めでたさも中くらいというのがTBSの本音ではないか。

 やはり「あさチャン!」から引き継いでしまったのが、T層(男女13〜19歳)とF1層(女性20〜34歳)からの支持の低さ。世帯、個人ともに民放同時間帯の年間視聴率が3年連続で1位のフジテレビ「めざましテレビ第2部」(平日午前6時10分〜同8時)はT層とF1層の支持が厚く、対象的だ。

 今の時代はこの2つの層が朝の時間帯のチャンネル権を支配しているのが実情。横並びで上位を狙うなら、この2つの層の支持を得ることが不可欠だ。


■T層、F1層を取り込めるか


 もちろん「THE TIME,」もT層、F1層を意識しているはず。乃木坂46の梅澤美波(22)をコーナー担当者にした「TIMEスタンド」が設けられていたことからも、それは分かる。この番組のコンビニという位置付けで、ハロウィンスイーツや新刊雑誌などが紹介された。

「今日の天使ちゃん」というタイトルで犬や猫を紹介するコーナーもT層、F1層狙いに違いない。「めざましテレビ」の「きょうのわんこ」のパクリであるのは誰の目にも明らかだが、この程度のパクリは各局ともやっているから、目くじらを立てることもないだろう。

 T層、F1層が関心の高いエンタメ情報も他局並みに盛り込まれていた。フワちゃん(27)がモバイルバッテリーのイメージキャラクターになった話題から、Eveの新曲「群青讃歌」のプロモーションビデオが解禁になった話まで取り上げていたから、ほかの時間帯の情報番組よりエンタメ情報は手厚い。

 半面、番組冒頭で安住アナは「夏目(三久)さんの笑顔を見たかった方、申し訳ない。今月から、おじさん2人が担当することになりました」と挨拶。香川も「(安住アナと)2人合わせると103歳です」と自虐的に語るなど、2人ともおじさん色が濃い番組であるということは自覚しているようだ。

 構成もT層とF1層にターゲットを絞った番組とは言い難い。例えば毎日放送(大阪)の福島暢啓アナが兵庫県姫路市のカフェが出しているデカ盛りのモーニングを伝え、HBC(札幌市)の堀内大輝アナが苫小牧市の漁港にある食堂の海鮮丼などを紹介した。

 ミドル層、シニア層が喜ぶテレビ東京のグルメ旅番組の趣だった。内容は興味深く、事前に準備を重ねたことが伝わってきたが、若い人が登校前や出勤前に見たがるかというと、どうだろう。もし、T層とF1層をもっと取り込むつもりなら、若い人の関心を探り、中継のテーマにすべきではないか。

 ニュース、天気予報はふんだんにある。もとから「報道のTBS」なのだから、取材力に不安はない。気象予報士は17人もいるという。初日はその効果が出し切れていたとは思えないが、今後が期待できる。


■残る課題は


 課題もある。1つは伝えるニュースが世間で話題になった話に偏り過ぎているところ。前日にツイッターで話題になったトップワード10を解説付きで伝える「ニュース&トレンド バズったワード デイリーランキング」のコーナーなどである。

 世間の関心事を伝え、掘り下げることも必要だろう。半面、折角2時間40分もあるのだから、番組側が視聴者に有益な情報を独自に探し、取材して伝えることも求められるはず。事実、「おはよう日本」は視聴者に有益な硬軟の独自情報を提供し続けている。

「THE TIME,」のマスコットは小鳥のシマエナガ。安住アナの故郷である北海道に生息し、「雪の妖精」とも呼ばれている。番組との関連性はさっぱり分からなかったが、おそらくスタッフが懸命に考えたのだろう。苦労がしのばれた。

 午前7時に「朝の歌」が流れ、安住アナも香川も踊ったのには面食らったが、これもシマエナガと同じくスタッフが考えた個性なのだから、良いと思う。ただし、好まない視聴者もいるのは間違いない。安住アナも香川もビシッとスーツを着こなしていたが、スーツでの踊りは万人受けしない。

 安住アナが「いってみよう!」とザ・ドリフターズのノリで掛け声を掛けた後、♪今日もいい日であるように いつでも笑ってやさしくね――という「朝の歌」が流れた。ゆるゆるで謎の歌だった。惜しかったのは、この歌の正体が説明されなかったところ。来週以降、解説が求められる。

 安住アナはアドリブが抜群にうまい。名人芸と言っていい。それがあらためて知らしめられた。話し方の間もテンポも良いから、胸の内をポツリポツリと言葉にするだけで当意即妙のアドリブになる。

「朝の歌」の前には「朝の歌はEテレ以外では見ることができません」と漏らし、笑わせてくれた。ほかのアナが同じことを言ってもおそらく笑えない。

 香川は「緊張している」と言いながら、全くそう見えないところが良かった。役者デビューから32年の百戦錬磨。次回8日からは1人での司会を余裕でこなすのではないか。

 香川は役者、歌舞伎役者の仕事で大忙しだが、司会も本格的に初めても良い気がする。知性とユーモアを兼ね備えたところが、故・児玉清さんや柳生博(84)を彷彿とさせた。

 初回は安住アナと香川を見たくてチャンネルを合わせた視聴者も相当数いただろう。いわゆるご祝儀的な視聴率が上積みされていたはず。

 土曜、日曜を挟んでの4日からの放送が本当の勝負だ。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月3日 掲載

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