デビュー39年「原田知世」の変わらぬ本質 椎名桔平、角川春樹氏もそこに惹かれた

デビュー39年「原田知世」の変わらぬ本質 椎名桔平、角川春樹氏もそこに惹かれた

原田知世

 椎名桔平(57)と原田知世(53)の焼き肉デートが6月に発覚して以降、2人の動向に熱視線が注がれている。ともに50代でバツイチ同士でありながら、まるで20代カップルのような注目度。その一番の理由は原田が少女性を失っていないからではないか。

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 原田の芸能界入りは14歳だった1982年。芸能界同期には中森明菜(56)、小泉今日子(55)、早見優(55)、堀ちえみ(54)、三田寛子(55)、松本伊代(56)らである。

 デビューから39年目。超が付くほどのベテランだ。大御所と呼ばれても不思議ではない。それなのに不思議と初々しい。

 原田のイメージと雰囲気は初主演映画「時をかける少女」(1983年)で芳山和子を演じたころから大きく変わっていないのではないか。いまなお少女性を感じさせる。特に、屈託のない笑顔は10代のころから同じ。長く原田を見てきた人なら、ご存じのはずである。

 だから、2019年に「あなたの番です」(日本テレビ)で田中圭(37)とダブル主演し、新婚夫婦役を演じても、違和感を抱かせなかった。2人の年の差は16歳8カ月。原田自身、放送前には「(出演依頼に)びっくりしました」と話していたのだが、肝心の視聴者側からは「釣り合わない」といった声は上がらなかった。

 NHK連続テレビ小説「半分、青い。」(2018年度前期)への出演時もそう。少女性が生かされた。原田が演じた和子は、ヒロイン・鈴愛(永野芽郁、22)の幼なじみ・律(佐藤健、32)の母親なのだが、ほんわかしていて、金八先生とマグマ大使に出て来るゴアのモノマネが大好きだった。ほかの女優が演じたら、痛々しくなりかねない役柄だった。

 コンサートでは今も主演映画の主題歌「時をかける少女」を歌う。これも原田以外の同世代には歌いこなすのは難しいはずだ。歌唱力が問われるのではない。キャラクターの問題である。下手をすると失笑を買う。けれど原田が歌うと、往年の味わいのままで、観客席は熱狂する。


■変わらない内面


 原田は健康と美容に熱心らしく、30代からヨガを始めたという。腸活がブームになる前から乳酸菌飲料を摂り、水素水も飲み、シミの素になる紫外線も浴びないよう注意している。

 アンチエイジング対策は万全らしい。だが、それは外観の問題だ。原田の少女性の源泉は内面にある。生き馬の目を抜く世界とも称される芸能界で長く過ごしながら、どうして大きく変わらずに済んだのだのだろう。

 理由の1つはおそらく芸能人という自覚が良い意味で薄いからだ。

 原田は長崎市内に住む中学3年生だった1982年、角川映画の新人オーディションを受けた。主催者側の目的は真田広之(60)が主演した映画「伊賀忍法帖」の相手役を探すことだったものの、原田の目的は単純に真田と会いたいだけだった。

「どうしても女優になりたいという強い思いで上京したわけではなかったんですよね」(原田*1)。

 その時の気持ちが今も残っているのだろう。例えば仕事を得るためには芸能プロダクションに所属したほうが圧倒的に有利なのに、所属先の「ショーン・ハラダ」はほぼ個人事務所で、ほかの在籍者は実姉の原田貴和子(56)だけ。芸能人仲間と遊び歩く姿が報じられたこともない。

 角川映画のオーディションで原田に特別賞を与えた角川春樹氏(79)自身、実は原田を芸能界入りさせることを躊躇した。純粋無垢だった原田が芸能界入りによって変わってしまうことを恐れたためだ。「息子の嫁にしたいくらい」と言うほど惚れ込んでいた。

 そこで角川氏は原田に1作だけ主演映画をプレゼントしようと考えた。それが「時をかける少女」である。監督は親しい故・大林宣彦氏に依頼した。制作費の約1億2000万円は角川氏のポケットマネーから出した。文字どおり1作限りのプレゼントのつもりだった。

 その映画はタイムリープの能力を得た高校1年生の和子が、西暦2660年から現代に訪れた少年に恋をする物語。少年が未来へ帰る日、自分に関する記憶を和子から全て消そうとすると、「消さないで」と懇願する。切ない物語だった。

 この映画は薬師丸ひろ子(57)が主演した「探偵物語」の併映作だった。つまり添え物。プレゼントなのだから。ところが、口コミで「凄い映画だ」という評判が瞬く間に広まり、1983年の「キネマ旬報」読者選出ベスト・テンで3位に入る。思想家の故・吉本隆明さんが「傑作」と評したことでも知られる。

 角川氏はかつて筆者に対し、この映画について「知世の魅力がすべて入っている」と語った。さらに次の角川氏の一言が、現在も変わらぬ原田の本質に違いない。

「男がいつまでも持ち続ける純な部分を思い起こさせてくれる映画でもありました」(角川氏)

 「映画」は「原田」にも置き換えられる。原田は昔も今も視聴者を純な気分にさせてくれる存在なのである。「あなたの番です」で演じた菜奈も「半分、青い」の和子もそうだった。酸いも甘いも噛み分けたはずの椎名桔平が、原田に惹かれた理由もここにあるのではないか。


■少女性が発揮された役柄


「時をかける少女」が絶賛されたことにより、原田は芸能界に留まった。その後、角川氏が用意した主演映画は「愛情物語」(1984年)、「天国にいちばん近い島」(同)、「早春物語」(1985年)。演じたキャラクターはそれぞれ違ったが、少女性が前面に押し出されているという点は一致していた。

「時をかける少女」からの計4作で原田のイメージは揺るぎないものになった。そもそも原田が少女性を内包していたから、これらの役柄を自然体で演じられたのだろう。原田知世という女優の誕生と角川氏は切り離せない。

 1985年に角川春樹事務所から離れた後に出演した映画「私をスキーに連れてって」(1987年)でも原田独特の持ち味は発揮された。例えばゲレンデの原田が手を拳銃の形にして、それを三上博史(59)に向けたシーンである。直後に原田は「バーン!」と言った。

 よく知られるシーンだが、ほかの女優ではサマになりにくかったのではないか。大人っぽい女優が同じことをやったら、滑稽になってしまう恐れがある。純粋無垢に見える原田だからこそ成立したシーンだった。

 その後の役柄も同じ。原田独特の個性があったから演じられた役ばかり。戦時下、好きな人に告白することが出来ず、その人が特攻に行くことを知って涙する女性を演じた映画「紙屋悦子の青春」(2006年)、大泉洋(48)とパン店を営む夫婦に扮し、訪れる客の心を温めた同「しあわせのパン」(2012年)……。

 同「あいあい傘」(2018年)では、妻子を置いて家出した男(立川談春、55)を家に連れて帰り、そのまま黙って面倒を見て、夫婦同然に暮らす女性を演じた。男には妻子が居て、いつ出ていくか分からないことを知りながら。

 こんな女神のような女性が実在するとは思いづらいが、原田が演じると、不思議とリアリティーが生じる。それも原田が純粋無垢に映るからだろう。

 10月8日からはテレビ東京の新連続ドラマ「スナック キズツキ」(金曜深夜0時12分)に主演する。傷ついた人だけがたどり着き、癒やしてくれる「スナック キズツキ」の店主に扮する。

 これまた現実味の薄い役柄だが、原田が演じることによって、どこかに存在している気にさせられるのだろう。

*1「an・an」2018年10月17日号

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。1990年、スポーツニッポン新聞社入社。芸能面などを取材・執筆(放送担当)。2010年退社。週刊誌契約記者を経て、2016年、毎日新聞出版社入社。「サンデー毎日」記者、編集次長を歴任し、2019年4月に退社し独立。

デイリー新潮取材班編集

2021年10月8日 掲載

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