手塚治虫の未亡人が「虫プロ」を提訴 経営危機で家賃を2年間滞納

手塚治虫氏の妻が「虫プロ」を提訴 経営危機で家賃を2年間滞納が原因か

記事まとめ

  • 手塚治虫氏が創業した「虫プロ」の後継会社が、手塚氏の妻に訴えられているという
  • 「虫プロが会社として体をなさなくなり、家賃も払えなくなった」とジャーナリスト
  • 5年程前から支払いが遅れ始めたそうで、開店休業状態となっているとも

手塚治虫の未亡人が「虫プロ」を提訴 経営危機で家賃を2年間滞納

手塚治虫の未亡人が「虫プロ」を提訴 経営危機で家賃を2年間滞納

草葉の陰で何思う

「進撃の巨人」に「鬼滅の刃」。日本アニメの隆盛は続くが、その礎を築いた会社にしては悲しい顛末である。故・手塚治虫が創業した「虫プロ」。その後継会社が経営危機に。家賃の未払いで、手塚未亡人に訴えられているというのである。

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〈被告らは原告に対し、1148万7千円を支払え〉

〈物件目録記載の建物を明け渡せ〉

 そう記された訴状が提出されたのは、今年6月のこと。現在、東京地裁で訴訟が進行中である。

 被告とは、「虫プロダクション株式会社」、通称、虫プロとその代表取締役。原告は御年89歳になる、故・手塚治虫の未亡人である。

「虫プロは、日本アニメの祖ともいえる会社です」

 と述べるのは、脚本家・推理作家の辻真先氏。「鉄腕アトム」や「ジャングル大帝」など、手塚の主要なアニメ作品の脚本も担当してきた。

「初の国産テレビアニメシリーズを生み出し、そこで育ったアニメーターから生まれたのが、古くは『ガンダム』『宇宙戦艦ヤマト』、近年では『進撃の巨人』ですよね。日本アニメの歴史に残る作品を作り出してきたんです」


■開店休業状態となった虫プロ


 ディズニーアニメに憧れていた手塚の手によって、虫プロが設立されたのは1962年のこと。翌年には日本初の連続テレビアニメ「鉄腕アトム」を作り、「ジャングル大帝」「リボンの騎士」「あしたのジョー」など、次々と名作を生み出したが、次第に経営は悪化。社長退任後、73年に倒産し、手塚が莫大な負債を肩代わりする。ここで中核スタッフは飛び出し、その4年後、残ったスタッフが再建したのが、現「虫プロ」というわけなのだ。

 かように縁ある会社を、なぜ未亡人は訴え出たのか。

「虫プロが会社として体をなさなくなり、家賃も払えなくなったからですよ」

 とは、訴訟を取材したジャーナリスト。

 同社は練馬区富士見台に本社を構えているが、この一帯はもともと400坪の手塚邸があった土地。倒産後、手塚は借金返済のために自宅を売り払ったが、この土地と社屋だけは残し、現虫プロに貸し出していたという。

「しかし、5年程前から支払いが遅れ始めた。賃料は月38万円ほどでしたが、滞納し、数カ月まとめて支払うということが続き、2年前からは一切、振り込みがなくなった。督促をしても無視されるか、“再生プランを出すから待ってほしい”と言われるばかり。一向に支払われる気配がないため、建物の明け渡しと未払い賃料の清算を求め、訴訟に打って出たというわけです」(同)

 虫プロ側にとっては厳しい訴訟となりそうだが、一体なぜ、伝統ある会社がこのような状態になったのか。

 さるアニメ業界関係者によれば、

「手塚先生は『手塚プロダクション』という会社も設立していて、先生のアニメの版権はほとんどそちらが持っているので、虫プロの利益にはならない。オリジナルを作らなくては稼げませんが、旧虫プロ時代からのスタッフも高齢化し、3年前には再建時からの社長も亡くなった。近年は新作もほとんど作っていませんでした」

 実質的には開店休業状態だったのだろう。

 当事者双方に取材を申し込んだが、いずれからも回答はなかった。

 前出・辻氏が言う。

「10年程前、テレビの取材で虫プロに行ったら、手塚先生が使っていた映画撮影用の特殊カメラがそのまま残っていてね。みんなで触ったり撫でたりして懐かしかったな。新旧では別会社とはいえ、あの虫プロがそんなことになっているとは、本当に残念ですよ」

 奇しくも今年は手塚の33回忌に当たる。

「週刊新潮」2021年10月14日号 掲載

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