本田望結インタビュー 青森山田の高校生活、モヤモヤを晴らしてくれた中村玉緒さんの言葉

本田望結インタビュー 青森山田の高校生活、モヤモヤを晴らしてくれた中村玉緒さんの言葉

2018年12月13日、ブロードウェイミュージカル「クリスマス・ワンダーランド」公開稽古で華麗なスケーティングを披露した本田望結

 40%超えという高視聴率をたたき出した連続ドラマ『家政婦のミタ』(2011年・日本テレビ系列)に出演し、一躍その名前を知られることになった本田望結(みゆ、17)。フィギュアスケーターとしても活躍しており、現在も大きな注目を集めている。

 前回、【『家政婦のミタ』から10年、本田望結が語る、フィギュアスケーターと俳優の二刀流を続ける理由】で、本田は俳優とフィギュアを「両立」することへの葛藤を告白した。その時期を乗り越えた彼女が、気持ちを新たにしたという試合、「演技」について考えさせられたという作品、そして「3つ目の顔」である高校生活について語る。


■あのときに完璧な演技をしていれば


 俳優とフィギュアスケーターそれぞれに全力で取り組む中、フィギュアでは「どうしても続けたい」と思わせる試合があったという。

「2014年、ノービスBの2年目は、全日本で表彰台も狙える位置にいたので、自分でもかなり気合いが入っていました。それなのに、本番ではこれまでしたことのないミスを連発して結果は25位。悔しくて悔しくて、毎日泣いていました。もしあのとき私が完璧な演技をしていれば、スケート1本に絞っていたかもしれません。あるいは、ここまでやれたと満足して、お芝居の世界だけに向き合うことを決めたかもしれません。悔しさをバネに、またスケートをこれまで以上にしっかりやろうと思えた経験でした」

 本田はジュニア(13歳以上18歳以下)となった2017年と2018年も、全日本という大舞台に立っている。17年は「出るだけで満足していた」と言うが、18年は異なる気持ちで臨んだ。

「18年も調子が良く、全日本で上位に食い込めるかもと思っていました。しかし、結果は12位。そのときも人生でこんなに落ち込んだことはないんじゃないかというぐらい落ち込んで、なかなか立ち直れませんでした。ですが、14年のときのように、スケートへの気持ちを新たにすることができたんです」

 試合後のインタビューでも、「自分の中で何か今日で大きく変わる気がしている。スケートをさらに本気でやりたい気持ちになっています」と答えている。

「今、フィギュアの成績が良くても悪くても、あまり追い詰められるようなことはなく、目の前のことだけに集中できているのは、こうした悔しい経験があったからだと思っています」


■「絶対涙を流してはいけない」


 俳優としても、「演技」を考えるうえで印象に強く残った経験がある。山田洋次監督の『母と暮せば』(2015年公開)で、風間民子を演じたときのことだ。

「『家政婦のミタ』以降、仕事で“本田望結”を指名していただけることも増えましたが、この作品はオーディションを受けて参加しました。役者として山田監督の作品に携わりたいという強い思いもあったし、子役が出ることのできる映画も少ないのでチャンスだと思ったんです。でも、オーディション会場のドアを開けて入った途端、監督を中心とした山田組のスタッフさんたちのオーラに圧倒されてしまいました。空気までが変わったようで、あまりの緊張にオーディションの後、直前まで覚えていたはずのセリフがすべて飛んでしまったほどです。

 オーディションでは部屋に入るシーンだったので、私は扉を開けるときに『失礼します』と、アドリブを付け加えてしまったんです。すると『台本に書かれているセリフ以外は言わないでください』と注意されました。監督は余計な言葉を必要としないんだなと思い、目線やまゆげの動き、顔の向きなどに注意してお芝居をしたことを覚えています。

 あるシーンで、民子は泣いちゃうだろうなと思っていたのですが、監督から『絶対涙を流してはいけない。我慢して』と演技指導がありました。映画の公開後、『民子ちゃんを見て泣いてしまいました』という声をたくさんいただいたのですが、登場シーンでは民子は涙を見せていません。作品を見て泣くのは、登場人物の涙につられるからと先入観を持っていたので、“泣かなくても伝えられること”について、とても考えさせられました。

 本田望結という名前ではなく、オーディションで評価していただいたことも自信につながりましたし、監督から演技についても認めてもらえた瞬間は、何事にも代えがたいうれしさがあります。本当に貴重な経験でした」


■自分の心に絶えず向き合うこと


 俳優とフィギュアの共通点は「表現すること」だという。しかし、それ以上に「探せば探すほど似ている部分が出てくる」と本田は語る。

「フィギュアは一発勝負。対してお芝居は、ミスをしても何度もやり直せると思われているかもしれませんが、実はそうではありません。私はリハーサルで一番良い演技ができることがあって、それは最初にもっとも緊張感を持って演技に入れるからです。自分の中では心から楽しむような演技でなければ、泣く、怒るといった演技は、役に入り込んだうえで緊張していた方が良い演技ができるんです。だから、何度も繰り返すと、むしろ良い演技から遠ざかってしまう気がします。

 フィギュアでもある程度緊張感があった方が試合ではうまくいきますが、練習でできていたことでも試合でミスをしてしまうというのはよくあることです。フィギュアでもお芝居でも、いかに本番にピークを持っていくか、“緊張感”をコントロールできるような強いメンタルを持たなくてはなりません。

 また、お芝居は相手役に頼ってばかりでは良い演技はできません。フィギュアもコーチや仲間はいるけど、結局は1人。自分の心に絶えず向き合うことは、お芝居でもフィギュアでもとても大切なことです。日々、ここも似てる、こんな点も共通していると感じることがあるので、この先もしっかりアンテナを張って、それぞれへ良い影響を与えることができるようにしていきたいなと思います」


■周囲は上を目指すアスリートばかり


 本田は現在、青森山田高校の2年生でもある。つまり、「俳優」「フィギュアスケーター」のほか、「高校生」という3つ目の顔を持つ。多忙な日々を過ごす中、どのような高校生活を送っているのだろうか。

「卒業生に卓球の水谷隼さんや福原愛さん、サッカーの柴崎岳さん、姉の真凜(まりん)もいるスポーツの名門校なので、周囲は上を目指すアスリートばかりです。クラスメートといると、私も同じアスリートであることを再認識できるし、すごくエネルギーをもらえます。

 みんなとは授業と授業の合間ぐらいしか話せる時間はないのですが、試合前には連絡を取り合ってお互いにエールを送っています。私のお仕事についてグイグイ聞いてくるような人もいないし、青森なまりの強い先生の言葉につられちゃって笑ったり……。高校はとても幸せな空間だなって思えるんです。ちょうど入学したときに新型コロナの感染が拡大してしまったので、思い描いていた高校生活とはちょっと違っていますが、くよくよせずにしっかり受け止めて、できるだけ出席したいです」


■考えた“結果を出すこと”


 1年生のときには、若手女優の登竜門とも言われる第99回全国高校サッカー選手権大会の16代目応援マネージャーに就任した。青森山田高校サッカー部は、この大会で優勝候補の大本命だった。

「黒田(剛)監督とも交流がありますし、学校でも仲の良いお友達が選手として出場しているので、試合会場などで会うのは不思議な感じがしました。準優勝でとても残念だったのですが、そのときも“結果を出すこと”について考えました。

 サッカー部は全国大会で優勝するべく、どこにも負けないと言えるぐらいの練習量をこなしています。そしてプレッシャーをはねのけて、青森県大会では25年連続で優勝していますし、全国大会でも決勝まで進みました。でもどんなに完璧な練習をしても、強い気持ちを持っていても、必ず勝てるわけではない。それがスポーツの残酷さであり、おもしろさでもあるのですが……。ただ、勝つことよりも負けることから学ぶことが多いと思うので、今後、みんなが進学したりプロに行ったりしたときに、あのときの悔しかった思いを晴らしてくれると信じています。

 私もインターハイでは『青森山田』と書かれたジャンパーを着て試合に臨むので、その名前を背負うのに恥じないような成績を残したいです」


■役を完璧に演じ切ること


 来年は高校生活最後の年になる。フィギュアでは昨年シニアデビューを果たしたばかりだ。俳優として、またフィギュアスケーターとして、本田はどこへ向かうのだろうか。

「今、子役から女優になる大事な時期ですが、まずはいただいた作品ひとつひとつを丁寧にこなすことが重要だと思っています。以前、特定のイメージがつくことに悩んだ時期があったのですが、映画『ポプラの秋』(大森研一監督)で共演した中村玉緒さんに、『望結ちゃん、嫌われる役が来たら、本田望結は大っ嫌いだと言われるまで、その役をまっとうしなさい』と言われたことがあるんです。役者としてやらなければならないのは、イメージ以前にいただいた役を完璧に演じ切ることだと。玉緒さんの言葉でモヤモヤした気持ちは消えて、今は、この先どんな役が来ても必要とされたら裏切らない演技をして、次につなげていこうと思っています。

 それと、『家政婦のミタ』で共演した松嶋菜々子さんや長谷川博己さん、中川大志さんをはじめ、幼いころに共演した方々と、再共演してみたいです。あのころにはあって今は失われている部分を取り戻せるような気がして、再共演は特に実現したいという思いが強いです。

 フィギュアでも、ちょうど今、体の変化が大きく大変な時期を迎えています。体をグッと絞ることはできますが、女優として今後も仕事をこなしていくことを考えるとバランスをとるのは難しい。フィギュアスケーターの目標はシニアで全日本に出場することで、これがかなわない限りはスケートを辞めるつもりはありません。とにかく後悔をしないように、体のこともしっかり考えていきたいと思っています。

 そして、真凜と紗来(さら)と姉妹3人で全日本に出場したいというわがままな夢もあります。ただ、これは3人それぞれが自分の目標をクリアして行けばかなうはずなので、まずは自分の技術を少しでも上げていけるよう、限られた時間の中でしっかり練習したいと思います」

(了、敬称略)

デイリー新潮編集部

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