「相棒」、タイトルバックの歴史 亀山薫(寺脇康文)が9話で卒業したシーズン7は異質

「相棒」、タイトルバックの歴史 亀山薫(寺脇康文)が9話で卒業したシーズン7は異質

現シーズンは「シーズン4〜6の雰囲気にかなり近い」tvasahi公式YouTubeチャンネルより

 水谷豊主演の人気刑事ドラマ「相棒」(テレビ朝日系・毎週水曜21:00〜)は、謎解きの面白さもさることながら、シーズンごとに異なるオープニングのタイトルバックも魅力である。今作でシーズン20を迎えた「相棒」は、7シーズンにわたって相棒を務める反町隆史が卒業することでも注目されている。そのタイトルバックの歴史について繙いてみたい。

 今やお馴染みとなった「ちゃ〜ちゃららっ♪ ちゃっちゃ〜ちゃら〜♪」というメインテーマを作曲したのは、主にドラマやアニメなどの劇伴音楽を手掛けている作曲家・アレンジャーの池頼広(いけ・よしひろ)氏である。新シーズンが始まるたび、斬新なアレンジがなされている。

 だが、この曲がタイトルバックに使われるようになったのは、実はシーズン3からだ。

 シーズン1のオープニングテーマ曲はドラムの音がメイン。そこにベースなどの音が少しだけ入る、かなりシンプルな仕上がりだった。シーズン2では、この曲に音数を増やし、スピード感も出すなどしてパワーアップさせた。この2曲はともに往年の刑事ドラマのような緊迫感と迫力に満ちたサウンドで、現在のテーマ曲とは似ても似つかない。さらにシーズン1のオープニングではラストに「相棒!」という男性の声が聞こえる。正式な番組タイトルが土曜ワイド劇場時代を引き継いだ「相棒・警視庁ふたりだけの特命係」だった点も特長だ。

 シーズン3以降、オープニングテーマ曲として現在のものが定着していくわけだが、シーズン6までの計4シーズンは、一度もアレンジが変えられなかった。シーズン5と6で、ともに最後の曲の終わり方に少しの違いがある程度の差だ。これによって、“「相棒」といえば、この曲!”ということを広く認知させることに成功したといえるだろう。

 シーズン7では、一つのターニングポイントを迎えることになる。まず長さが約12秒と歴代最短になった。映像もガラスが割れて飛び散っているだけで、なんとタイトルバックに杉下右京もその相棒も登場しない。さらに「Love is the game〜♪」という歌い出しから始まる、外国人女性ボーカルの英語歌詞付きバージョンとなっているのだ。当時、ファンの間では「歌詞が聞き取れない」「日本語訳を教えて」などと話題になった。

 このシーズン7は第9話をもって寺脇康文演じる初代相棒・亀山薫が番組を卒業することが放送開始前に発表されていた。おそらく途中で相棒役の映像を差し替えることを避けるため、このようなバージョンになったと推察される。そしてこれ以降、オープニングのアレンジがガラッと変わっていくこととなる。


■2代目相棒時代


 2代目相棒となった神戸尊(及川光博)が本格的に活躍するシーズン8では、大人の雰囲気漂うジャズ風のアレンジがなされた。映像はラストの部分で飛び散ったガラスが天に向かって舞い上がっていく構図だ。前シーズンの「割れたガラスが飛び散る映像」に連なる演出である。このつながりが単なる偶然なのか、それともスタッフが意図したものなのかは不明だが、亀山薫から神戸尊へと相棒のバトンが受け継がれた、と読み取れなくもない。

 シーズン9ではトランペットが、シーズン10ではアルトサックスの音色が軽快に鳴り響く印象的なアレンジがなされた。8からジャジーな雰囲気はあったが、シーズンが進むにつれて段々とその要素が濃くなっていく。特に10はかなり大人な感じだ。曲のスピードも速くなり、よりリズミカルでテンポが良くなっている。この3シーズンはクールでかつキザ、そしてエリートという神戸尊のキャラクターに合わせたかのようなアレンジだったといえよう。


■3代目相棒時代


 これが3代目相棒・甲斐亨(成宮寛貴)が登場したシーズン11になると、雰囲気がガラッと変わる。オーケストラ仕様となり、壮大なイメージになった。シーズン12ではよりダイナミックなサウンドとなってサスペンス感が加わり、彼が卒業となったシーズン13ではミステリアスな方向のアレンジに。サスペンス感をより突き詰めた雰囲気になっている。

 甲斐亨が相棒だった3シーズンは映像面でもかなり凝った作りだった。11は降りしきる雨が、12は途中途中に水溜まりの映像が挿入され、最後の13は霧もしくは靄の中をさ迷いながら前に進む特命係2人の姿が描かれた。注目は亨の立ち位置だ。11と12では杉下右京の後をついていくだけだった亨が13では肩を並べて歩いているのだ。亨の成長過程を表しているかのようなオープニングである。


■4代目相棒時代


 現在の4代目相棒・冠城亘(反町)になると、シーズン14ではチェス、シーズン16ではビーチフラッグ、シーズン17ではハシゴ上りというように、特命係の2人が競い合うシーンが登場する。

 17では荒れた天候のなか、天に向かって伸びる1本のハシゴを特命係の2人が競い合うように上っていく。その途中で天空から「誰か」が落下。それを目撃した右京が追うように飛び降り、続く形で冠城も地上へと飛び降りる。そして最後は天候が穏やかになるなか、2人が笑顔で合流する――というなんとも摩訶不思議な内容なのだ(落下した人物はシーズン16の最終話で特命係に左遷された青木年男(浅利陽介)ではないかという説が囁かれたが、真相は不明)。音楽テンポが速く、歴代のなかでもっともスピード感、ダイナミズムを感じさせた。

 シーズン19は解釈に困る映像だ。薄く大きな白いカーテンのような布が無数に垂れ下がるなか、特命係の2人が何かを探しているような映像で、13にやや近い印象を受けた人も多かったのでは。“迷宮感”が漂っているのである。この意味ありげな映像に重なった音楽は、これまでにないくらい壮大だった。

 この流れが一転したのが現在のシーズン20だ。昼間の大都会のビル群の前に特命係の2人が現れ、冠城が足元の砂をつかみ、投げる。するとそれが光の粒に変わり、天に舞い上がったかと思った次の瞬間、舞台は夜のビル群に変貌を遂げるという流れである。分かりやすさに加え、音楽も軽やかなアレンジになっている。シーズン4〜6の雰囲気にかなり近い。節目のシーズンで“原点回帰”したということになる。


■豆知識3つ


 最後にオープニングのタイトルバックに関する豆知識を3つご紹介したい。

 その(1)「特命係の部屋が登場したのはシーズン15のわずか1回のみ」。特命係の部屋と東京の夜景が重なるような映像のなかに2人が佇むという流れで、プロジェクションマッピングを使ったかなり凝った作りだった。お馴染みのテーマ曲もかなりドラマチックにアレンジされていて、歴代屈指のカッコいいオープニングとなっている。

 その(2)は“初期はロケが多かったが、シーズン11以降はCGが多い”。シーズン11以降、明らかにロケで撮っているのはシーズン18である。実は撮影の舞台は、東京・池袋にある自由学園明日館。国の重要文化財にも指定されている建物だ。そこに特命係の2人が迷い込んだような設定で、音楽もラテンジャズ調のアレンジがなされている。ミステリアスな雰囲気が色濃いのである。

 その(3)は「シーズン1〜6までは役者紹介のテロップが出ていたが、それ以降では8と9のみである」。寺脇康文演じる初代相棒・亀山薫の時代は“水谷豊”“寺脇康文”というテロップが出ていたが、以降で確認できるのは及川光博の神戸尊時代の2シーズンのみ。ただ、この2シーズンはローマ字表記に変更されていて、役者名ではなく“役名”のみの表記となっていた。

 「相棒」の歴史とともに様々な変化を遂げてきたオープニングのタイトルバック。映像も音楽も毎シーズン凝った手法で視聴者を楽しませてくれるだけに、お気づきでない方はぜひ注意してご覧いただきたい。

上杉純也

デイリー新潮編集部

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