この国の“日没”をきっちり描く「17才の帝国」が面白すぎて震える 腐った政治を若者は変えられる?

この国の“日没”をきっちり描く「17才の帝国」が面白すぎて震える 腐った政治を若者は変えられる?

「17才の帝国」(NHK総合、土曜22時〜)?吉田潮

 今期ドラマにちっとも胸ときめかない絶望の中、ひと筋の光が。もとい、3本の塔が放つ光が見えた。NHK「17才の帝国」の話だ。

 初回しか観ていないが、設定が面白くて役者もそろっている。もう期待しかない。

 風光明媚な港町を見下ろす丘にそびえたつ3本の塔には、政治AI「ソロン」が設置。膨大なデータをもとに、経済成長・生活文化(ウェルビーイング)・持続可能性を重視した具体的な政策を提案できるという。このソロンと共に、選ばれし若者が閣僚となり、実験都市の政を行う物語だ。

 その背景には「日没」がある。経済状況は悪化、失業率は10%超え、GDPも戦後最大に落ち込んだ日本は「サンセットジャパン」と揶揄されている。G7からも外されたという強烈な皮肉(さもありなん!)。人口の40%が65歳以上、内閣も年寄りだらけ。現・総理大臣(柄本明)は現状を打破するテイで、AIと若者にある実験都市の行政を任せてみることに。これが「プロジェクト・ウーア」である。もはやSFではない。舞台設定も技術的にも、すぐそこにある現実だなと思った。問題は人間である。

 実験都市ウーアの総理大臣は17歳。演じるのは、ミステリアスな無表情の神尾楓珠(ふうじゅ)。彼が補佐官に指名したのは同じく高校生の山田杏奈。ふわふわしているが、大人の政治的無関心を糾弾する強さはある。実際、父(杉本哲太)はリストラで失職中、母(西田尚美)といじめられてひきこもりになった弟(加藤憲史郎)と暮らしていたが、今後介護が必要になる祖父(綾田俊樹)もいる。将来に不安しかない高校生を代表する役だ。

 厚生文化大臣にはひょうひょうとした22歳の弁理士(望月歩)、財務経済大臣には超合理的で毒舌、MBA取得の22歳マルチリンガル(河合優実)、そして現・総理大臣の25歳の孫(染谷将太)。染谷は既にクズのニオイというか、腐りがちな世襲政治家独特の横柄さを備えている。

 このプロジェクトの責任者で、若き閣僚をサポートするのが官房副長官の星野源。老獪で癒着と腐敗がデフォルトの年寄り政治家と、透明性と合理性を求める若者たちの間に立つも、事実上は権力側。総理・総裁の椅子を狙う上昇志向の強い人間でもある。星野と懇ろの新聞記者(松本まりか)も、プロジェクトをやや批判的に報道。

 のっけから市議会の廃止、市職員の削減を提案する若き閣僚たち。当然ハレーションが起きる。利権がらみで町を牛耳ってきた年寄りの市議会議員(田中泯・岩松了、適役)は激怒。ある種、水も空気も通さぬ粘土層ね。

 今後、17歳の総理がどんな政を行うのか、興味津々である。腐った政治を改めて問い、政治的無関心の大人を責め、先行き不安しかない若者の憂いと声をすくい上げる構図。現実味のある発想、観たことのない世界観、美しい映像。新しくて面白い作品の登場に震えた。

 実際、これだけ政治がおかしなことになって、マジで日没しかけているのだから、ドラマでもきっちり描くべきなのに誰もやらない。神尾のセリフに首がもげるほどうなずく、そんな土曜日だ。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビドラマはほぼすべて視聴している。

「週刊新潮」2022年5月26日号 掲載

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