「チコちゃん」パワハラ炎上 民放テレビマンが「マナー講師ではなくNHK」に違和感を覚えるワケ

「チコちゃん」パワハラ炎上 民放テレビマンが「マナー講師ではなくNHK」に違和感を覚えるワケ

チコちゃん

 FLASH(電子版)は5月22日、「岡村隆史も違和感『チコちゃん』炎上で噴出する“マナー講師への疑問”…『押しつけは不愉快』との声も」との記事を配信した。

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 記事タイトルの「チコちゃん」はもちろん、人気番組「チコちゃんに叱られる!」(NHK総合・金・19:57)を指す。

 いかにもNHKらしい万人向きの演出は、「国民的人気番組」と形容されることも珍しくない。炎上とは無縁な印象だが、一体何があったのか。担当記者が言う。

「5月21日に放送された回で、『フォークの歯が4本なのは、スパゲティを上手に食べるため』というテーマが取り上げられました。番組によると、18世紀のフォークは3本歯だったそうです。なぜもう1本増えたのか、という説明で、イタリアにあった両シチリア王国のフェルディナンド1世(1751〜1825)が紹介されました」

 当時、スパゲティは庶民の食べ物で、手づかみで食べていた。味を気に入ったフェルディナンド1世は宮廷で供するよう指示を出したが、ここで思わぬ“横槍”が入る。

「妃が『手づかみは下品』と反対したのだそうです。そのためフォークで食べることが決まりますが、3本歯では巻き取りにくかったのです」(同・担当記者)

 フェルディナンド1世が改良を命じ、4本歯にすると上品に食べることができた。爾来、フォークの4本歯が定着した──。


■脅えた女性スタッフ


「これだけで終われば、NHKらしい教養番組の側面もあり、面白かったと多くの視聴者が好感を持ったのではないでしょうか。少なくとも炎上などするはずもなかったでしょう。ところが番組は続き、『本当に4本歯のフォークでなければ、スパゲティは上品に食べられないのか』と検証を開始したのです」(同・担当記者)

 ここで登場したのが、マナー講師の女性。映し出された字幕には「鬼のマナー講師」と記載されていた。

「2本から5本までのフォークが用意され、どの食べ方が最も上品か、実験することになりました。挑戦するのは番組の女性スタッフ。ところが、スタッフが登場すると、講師は早々に彼女の“仏頂面”を問題視しました」(同・担当記者)

 そして、挨拶をする際は相手の目を見るべきと助言。ところが女性スタッフは萎縮したのか、思わず頭を下げて「はい」と返事をしてしまう。

 目線は床を向いてしまったことから、女性講師は「下を見るなと言うてるやろ!」と叱責した。この場面がSNSなどで問題視されたのだ。


■SNSは炎上


「女性スタッフは辛うじて笑顔を浮かべますが、思わず涙をこぼしてしまいました。番組は更に続き、女性講師は椅子の座り方についても厳しい注意を与えます。この時、MCの岡村隆史さん(51)が『(スタッフが仕事を)辞めてしまうよ……』と呟きました。こうした放送内容に、『これではただのパワハラではないか』と視聴者が反発したのです」(同・担当記者)

 念のためTwitterに投稿された批判を引用しておこう。

《知らない事を習うのが講習であってそれを教えるのが講師でしょ。相手の無知につけ込んでヒステリックに罵倒するのは講習でも何でもないただのパワハラです》

《マナー講師のパワハラぶりに反吐が出る。本題(フォークの歯の本数)と何も関係ないじゃん。制作側はあんなのおもしろいと思ってんのかな。AD?の女の人が可哀想》

《大変気分が悪くなりチャンネル変えた。あれは、ほとんどパワハラ。いきなり怒鳴る人とは話したくない聞きたくない》


■NHKらしからぬ判断


 民放キー局でバラエティ番組を担当しているディレクターは、「NHKがあんな演出を許すのかと驚きました」と言う。

「女性講師はテレビ出演の経験も豊富で、以前から厳しい指導が話題でした。彼女はいつも通りに“キャラ”を演じただけで、そのこと自体は問題ではないと思います。問われるべきは、NHKの演出姿勢と、あの場面を『これはパワハラに当たらない』と判断したことの正否です」

 基本的に、NHKは民放より“コンプライアンス”に厳しいというイメージがある。だからこそ、「チコちゃん」の炎上には多くのテレビ関係者が驚いたという。

 おまけに、民放であれNHKであれ、撮影して編集したものを、そのまま放送することはない。試写が行われ、局内で内容が厳しくチェックされる。

「女性スタッフが涙をこぼした場面は、民放キー局の試写でも問題視されたと思います。バラエティ番組として笑える内容にとどまっているのか、女性講師が悪者に見えないか、議論を重ねたに違いありません。この際、注目されるのは女性講師の“パワハラ”ではないでしょう。涙をこぼしたのが“素人”だった点のはずです」(同・ディレクター)


■NHKの判断に疑問の声


 この女性講師、お笑い芸人・江頭2:50(56)の公式YouTubeに複数回の出演経験がある。動画では同じように厳しい指導を行っているが、特に炎上はしていない。

「『チコちゃん』でも、叱責されたのがタレントやお笑い芸人だったら、視聴者の反応は違ったかもしれません。彼らの“リアクション”で笑えたかもしれないからです。プロの絶妙な反応で、ぎりぎりパワハラに見えない演出が成り立つことがあります。しかし『チコちゃん』に登場したのは“素人”で、おまけに涙を浮かべました。これで笑うのは、かなり難しいでしょう」(同・ディレクター)

 涙を浮かべた女性は番組スタッフであり、完全な素人ではない。

「以前のテレビ業界は、パワハラが横行していました。そして昔の感覚でも、あの場面は笑えません。ディレクターが撮影を止め、女性スタッフに『泣くな!』と怒鳴り、再撮して解決したでしょう。現在の規準では問題のある行動ですが、涙を浮かべる場面は放送されなかったはずです。今はパワハラに敏感な時代です。なのになぜ、NHKはあの場面を放送したのか、より疑問に感じてしまいます」(同・ディレクター)


■素人の危険性


 いずれにしても、素人のリアクションだと笑えるものも笑えなくなる、というのは間違いないようだ。

「最近のテレビ業界は、素人を使うのが流行っています。うまくハマれば面白い時もありますが、『チコちゃん』のように視聴者が反発するリスクがあります。特に今は、出演者をイジることに視聴者は敏感です。今回の一件で、安易に素人を使うことは危険だと、テレビ業界は肝に銘じるべきでしょう」(同・ディレクター)

 ネット上で「チコちゃん」への批判が話題になると、テレビ局のディレクターたちは「あれがセーフなら、もっと部下に厳しく当たりたい」と苦笑しているという。

「男女差別やセクハラ的な会話をしない。残業時間を減らす。指導の範疇を超えた言動を控える……と、今のディレクターは“コンプライアンス”でがんじがらめになっています。それこそ女性講師のようなディレクターは、昔なら山のようにいました。しかし、今は激減しています。自分たちの職場でさえ、厳しい指導が“アウト”というのは常識です。にもかかわらず、NHKは“セーフ”と判断し、再撮も行わなかった。やはり謎でしかありません」(同・ディレクター)

デイリー新潮編集部

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