「TOKYO VICE」原作者が語る渡辺謙のプロ精神 「彼の提案したセリフが採用されることも」

「TOKYO VICE」原作者が語る渡辺謙のプロ精神 「彼の提案したセリフが採用されることも」

裏社会に通じた刑事・宮本役の伊藤英明と

 日本の闇社会に光を当てた海外ドラマ「TOKYO VICE」(WOWOWで放送中)が欧米で人気を集めている。同名のノンフィクションが原作で、著者は外国人初の記者として読売新聞で活躍したジェイク・エーデルスタイン氏(53)だ。

「埼玉県の浦和支局をはじめ、警視庁記者クラブなどに勤務しました。地方部と社会部に所属したブンヤ生活はおよそ12年半。大事に保管していたメモや当局の発表資料などをもとに、実際の経験をまとめた本を2009年にアメリカで出版したところ、今回の映像化に結び付いたんです」

 ドラマでは殺人や麻薬密輸、強盗といった凶悪事件をはじめ、さまざまな事故現場における当時のジェイク氏の取材活動の様子に加え、彼が現役時代に親しく付き合った警察官との交流や、取材を通した暴力団組織の大幹部との攻防などがリアルに描かれる。


■細部のチェックは渡辺謙も


 監督はかつて日本でも人気を博した「特捜刑事マイアミ・バイス」やクライムアクション映画「ヒート」、企業内部の告発モノの「インサイダー」といった社会派ドラマを得意とする、マイケル・マン(79)が務める。

「監督はボクに“単なるヤクザ映画ではなく、調査報道やジャーナリズムが社会にとっていかに大切かを描きたい”“取材者として真実を探るためにはどんな犠牲が付きまとうのか。それにはどれほどの意味があるのかということを、現実に即したストーリーで表現したい”と語っていました。撮影の際にはディテールにも徹底してこだわり、一切、妥協はありませんでした」

 細部のチェックは、マル暴刑事役を務めた渡辺謙(62)も手伝ったそうだ。

「撮影の途中から、謙さんが脚本のチェックに加わったんです。あるセリフについて“責任を取りたい”か“謝罪したい”かで意見が割れた時“罪滅ぼししたい、ではどう?”という彼の提案が採用されたことも」

 日本特有の言葉使いを英訳したこともあった。

「日本では部下や後輩を叱責する時に“オイ、酒井!”という具合に名字を呼び捨てにすることがありますね。それを英訳すると、ただの呼びかけになって意味が通じない。だから謙さんは“ここはファック・ユー!だ”と。日米の撮影現場を熟知しているだけに、説得力がありました」


■ヤクザの描き方問題


 海外の演出担当者たちは、ヤクザが刑事や警察官に怒鳴り声を上げて殴りかかったり、胸倉を掴んで喰ってかかるような暴力的なシーンの撮影を欲したという。

「でも、本物のヤクザは絶対に警官を殴ることはしません。せいぜい顔を相手の鼻先に近づけて“覚えとくぞ”とささやくようにすごむ程度。また、警察が暴力団事務所に強制捜査に入るシーンでは、刺青をあらわにしたチンピラたちが制服警官や機動隊員に襲いかかるような演出があったので、すぐに“あり得ない”とNGを出した。だって公務執行妨害で逮捕されたら終わりですから」

 当の新聞記者・ジェイク役を演じるのは、ハリウッドで活躍する若手のアンセル・エルゴート(28)だ。

「彼は素直なナイスガイで、“ボクのことは気にしないで自由に演じて下さい”と伝えても、気が付くとこちらをずっと観察している。そのせいか、放送を見たボクの娘は“困って頭を掻く仕草とか、怒って興奮している姿はパパそっくり”と感心していましたよ」

 原作はすでに25カ国語に翻訳されており、アメリカではドラマのシーズン2の制作が決定している。

「週刊新潮」2022年6月23日号 掲載

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