松本伊代 「落とし穴」企画で重症 長きにわたってケガ人が出なかった意外な理由

松本伊代 「落とし穴」企画で重症 長きにわたってケガ人が出なかった意外な理由

松本伊代

 TBSの佐々木卓社長は11月30日の定例記者会見で、タレントの松本伊代(57)がバラエティ番組「オオカミ少年」の収録中に腰椎を圧迫骨折した事故について謝罪した。これまでテレビのバラエティ番組などで、出演者がケガをした例は少なくない。しかし意外なことに、「“落とし穴企画”でケガ人が出たという話は聞いたことがない」とベテランのテレビマンは言う。

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 松本伊代がケガをしたのは、11月24日に行われた「オオカミ少年」の企画“ソクオチ”の収録中だった。クイズの不正解者がウレタンのクッションで満たされた穴に落ちるというもので、バラエティ番組ではよく見る落とし穴企画だ。

 ところが、不正解で落とされた彼女は腰を痛め、病院で診察を受けた結果、腰椎の圧迫骨折と診断された。治癒には3カ月程度かかるという。ベテランの民放プロデューサーは言う。

「ドッキリ番組の落とし穴企画は危険、という声はよく聞かれます。しかし、過去にバラエティ番組でケガ人が出たことはあっても、落とし穴企画でケガ人が出たという話は聞いたことがないのです」

 最近、番組収録中にケガをした例を挙げてみよう。


■落とし穴の犠牲者は


●22年8月26日:「アメトーーク!」(テレビ朝日)
お笑いトリオ・ジェラードンのアタック西本が、“ぐるぐるバット”を行った後に三段跳びをする企画で着地に失敗し、鎖骨を骨折。全治3カ月。

●22年8月21日:「新しいカギ」(フジテレビ)
俳優でタレントの武田真治が、プールに浮かべた山型のフロート(いかだ)に登るゲームに参加し、プールの底に右足のかかとを強打して骨折。全治2~3カ月。

●22年3月17日:「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ)
お笑いコンビ・ロッチの中岡創一が、室内ランニング機を使った撮影で転倒し、右足関節外果骨折。全治2カ月。

●22年2月8日:「サバイバル水鉄砲!一撃」(日テレ)
モデルでタレントのゆうちゃみ(古川優奈)が、ロケで走っていた際にバランスを崩して転倒し、左下腿骨を骨折。手術を受け1週間程度の入院。

●21年11月5日:「とんねるずのスポーツ王は俺だ!!」(テレ朝)
プロ卓球選手の吉村真晴が、レスリングを体験する企画のロケで、うつ伏せになった体をひっくり返された時に左第6肋骨を骨折。全治4~8週間。

●21年3月3日:「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」(日テレ)
お笑いコンビ・ライセンスの藤原一裕が、ソフトボールのロケで一塁に走り込んだ際にバランスを崩して転倒し、左鎖骨遠位端骨折。

●20年11月15日:「news23」(TBS)
歌手のMISIAが、乗馬のシーンを収録中に落馬し、胸椎棘突起部を骨折。全治6週間。

●20年10月8日:「でんじろうのTHE実験」(フジ)
お笑いコンビ・トレンディエンジェルの斎藤司が、尻の下に敷いたエアバッグを急に膨らませると体は浮くのかという実験で、想定以上に体が浮き、地面に落ちた際に腰などを強打し、背骨を圧迫骨折。全治3カ月。

●19年11月6日:「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!年末スペシャル」(日テレ)
俳優の佐野史郎が、液体窒素を充填したペットボトルを破裂させた力で宙に浮くという企画で腰を打ち、腰椎を骨折。全治2カ月。


■落とし穴企画で半世紀


 バランスを崩して転倒した際にケガをするパターンが多いが、確かに落とし穴の事故例はいない。前出のプロデューサーは言う。

「バラエティ番組の落とし穴企画は歴史が長いんです。1970年代の『元祖どっきりカメラ』(日テレ)の頃にはありましたからね。雪道に穴を掘って、その中に落とすという企画でした。雪なので人力で掘れるし、ネタバレしにくいので、手軽に仕掛けられたのだと思います」

 半世紀もの歴史があるのか。

「その後、落とし穴企画は、『ロンドンハーツ』(テレ朝)でお笑いタレントの出川哲朗のプロポーズドッキリなどで登場しました。『ロンハー』の落とし穴企画は次第に大掛かりになり、セットで一軒家を作り、芸人を2階から1階へ落下させるなど、人気企画になりました。そして『とんねるずのみなさんのおかげです』(フジ)の“全落”や“水落”がきっかけとなり、出演者を“落とす企画”がバラエティ番組でブームになりました」

 いまや落とし穴企画は、バラエティ番組だけではなくなった。

「クイズ番組の不正解で落としたり、罰ゲームで落とすこともあります。2017年にはテレビ東京が年越し番組で、『落ちましておめでとうございます』という落とし穴だけの2時間番組を放送したこともありました。現在は『ニンゲン観察バラエティ モニタリング』(TBS)や『水曜日のダウンタウン』(同)、『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジ)などで、落とす企画を放送しています」

 日本人は落とし穴が好きなのだろうか。


■落とし穴を支えるプロ集団


「ドッキリの落とし穴は、落とされるまでのドキドキ感と、落ち方や落とされ方のリアクションなど、バラエティとして面白い要素が多々あります。本来の落とし穴企画は、ドッキリだからこそ面白いと言っていいでしょう。オチにはもってこいの仕掛けですからね。そして落とし穴企画がなくならないのは、これまでケガ人が出てこなかったからでしょう」

 ケガ人が出なかったのは、プロ集団がいるからだという。

「業界には落とし穴のプロ集団がいるんです。例えばテルミックは、テレビやコンサートの美術制作を請け負う業界御用達の会社ですが、バラエティ番組で見る大掛かりな落とし穴の多くはここが手がけています。古くはドリフターズの『8時だョ!全員集合』(TBS)で階段が一瞬で坂道に変わるセットなども、ここが手がけました。歴史のある会社です」

 同社のホームページには、《ドッキリでおなじみ落とし穴マシン“落とし穴ユニット”》も紹介されている。

「番組側のオーダーにも対応してくれて、大きさ、耐久性、機能など、本格的な落とし穴を作ってくれる会社です」

「オオカミ少年」の落とし穴も、ここが手がけたものだろうか。


■クッションが少なめ?


「番組の技術協力に社名が出ていないようですから、関係ないのでしょう。『オオカミ少年』の落とし穴は、他の番組とは異なる見せ方をしていました。落とし穴に落ちた後のリアクションまで視聴者が見られるように、ウレタンクッションが入れられた穴の前面をアクリル板にしてあるんです。通常、テレビに映るのは、穴に落ちた瞬間だけですから、クッションはたっぷり詰めてある。それに比べて『オオカミ少年』は、落ちていくリアクションも見せるためにクッションが少なめだったという声も聞きます」

 そもそも松本伊代にオファーしたのが間違いという声もある。

「事前にスタッフがテストをして、安全確認は行っていたと思います。でも、テストをするのは若いスタッフですから、誰が落ちるのか一人ひとり想定して、安全確認をすべきだったかもしれません。年齢や性別、体型、体重、持病や運動神経まで考慮する必要があったと思います」

 TBSは、彼女がケガをしたシーンは放送しない方針という。

「『オオカミ少年』はしばらく、落とし穴企画はやらないでしょうね。今回の件で、『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジ)を心配する声も上がっています。ものまねのオチとして落とし穴が使われていますが、演技中でも複数人でも落下するので、落ち方次第ではケガ人が出てもおかしくない。年1回の特番ですが、人気番組だけにケガで打ち切りなんてことになってもらいたくないですね」

デイリー新潮編集部

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