NHKが画策する「ネット同時配信」の狙い 民放大反発で“見切り”発車の声

NHKテレビ放送とインターネット「常時同時配信」進める 見切り発車と指摘も

記事まとめ

  • NHKは、テレビ放送とインターネットの「常時同時配信」を2020年に向け進めている
  • ネットTVの先駆けであるAbemaTVは、設立以来“年200億円”の赤字を出している
  • NHKの同時放送には“見切り発車”と、芸能ジャーナリストから指摘もある

NHKが画策する「ネット同時配信」の狙い 民放大反発で“見切り”発車の声

NHKが画策する「ネット同時配信」の狙い 民放大反発で“見切り”発車の声

「チコちゃんに叱られる!」(NHK総合・金曜・午後7時57分〜)

“放送法に基づく特殊法人”としてNHKが設立されてから、来年70年。これにあわせたわけでもなかろうが、目下、NHKは“放送”のあり方を大きく変えるプロジェクトを2020年に向け進めている。テレビ放送とインターネットの「常時同時配信」だ。

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 金曜20時にテレビをつければ「チコちゃんに叱られる!」が放送されている。同じタイミングでサイトにアクセスすれば、テレビと同じ「チコちゃん」を鑑賞できる――。NHKの同時配信はこんなイメージだ。

 3月5日には、これを可能にする放送法の改正案が閣議決定され、政府は今国会での成立を目指すという。石田真敏総務相は「スマホなどを用いて様々な場所で放送番組を視聴したいという国民視聴者の期待に応える」と語り、一見、いいことづくめのように見えるが……。3月6日付の朝日新聞はこの決定を次のように報じた。

〈2010年にNHKが同時配信に乗り出す方針を表明して以来、ようやく政府がゴーサインを出した形だが、約6900億円の巨額の受信料収入を持つNHKが肥大化するとの懸念はずっとついて回ってきた。このためNHKは総務省の求めに応じ昨秋、受信料の値下げを発表。ガバナンスの徹底や会計の透明化に取り組むことも表明した〉

 その〈懸念〉を抱く急先鋒が民放各社だ。さるキー局関係者が胸中を語る。

「そりゃ、われわれ民放からすれば“NHKが受信料で好き勝手やってる”という話になりますよ。スタートにも維持にもカネがかかるネット同時接続なんて、NHKだからこそできること。NHKが民放より採算性が問われないなんてことは、改めて説明するまでもないですよね。低視聴率の『いだてん』を打ち切らずに続けられるくらいなんだから……。それはともかく、日本民間放送連盟の会長の大久保(好男・日本テレビ社長)さんは、“民業を圧迫しないでほしい”と常々釘を刺してきました」(キー局関係者)

 今のところ、NHKがネット関連業務に費やせる金の上限は“受信料収入の2・5%”としている。先の朝日新聞報道の受信料収入に照らせば、およそ172億円だ。

「日本におけるネットTVの先駆けである『AbemaTV』が、設立以来“年200億円”の赤字だというのが、比較の参考値でしょうか。Abemaの場合は、配信だけでなく番組の制作予算込みでこの赤字なわけですが、NHKはテレビ用のコンテンツを作る予算が別途あり、基本的にネットでそれを流すだけ。制作費は無視して172億円をネット配信に費やせるわけですから、かなり有利といえる。人件費などの点でも、どこからどこまでがネット関連の仕事なのか、現状では線引きが曖昧です」

 しかも、引き続き“2・5%”ルールをNHKが守るかどうかは不明――。読売新聞の取材に答えた上田良一NHK会長は〈20年度以降は「(著作権に関する)権利処理が大きな課題。どの程度費用がかかるか予測困難」とし、「適正な上限を設け、抑制的な管理に務め、民放や視聴者の皆さんのご理解を得られるよう説明責任を果たしていく」と含みをもたせた〉(2月4日付夕刊)。


■見切り発車の同時視聴


 その上、NHKの同時放送には“見切り発車”との指摘もある。ニュースサイト「BLOGOS」に「リスク高く茨の道を歩みそうなNHKの常時同時配信」(3月6日配信)を寄せた芸能ジャーナリストの渡邉裕二氏はいう。

「サービス開始にあたっての整備をどうするのか、という点が見えてきません。今のところNHKは、受信契約者にID(視聴者番号)とパスワードを与え、それでネット視聴もできるようにするとしています。では、受信料を払っているひと家庭に、いくつIDを与えるのか。世帯あたりで何人がネット視聴を利用できるようにするのか、そのあたりをまったく決めていないようなのです。当然、IDをどう管理するのかも未定。たとえばIDがメルカリで売られたらどうするのか、そういった対策も講じる必要が出てくるでしょう」

 渡邉氏は、そもそもネットでNHKが観られることの需要にも疑問を呈する。

「いまや、自宅のレコーダーで録画して、出先でもスマホで番組を観ることができる時代です。果たして、テレビを生で観たいという人がどれだけいるのか。せいぜい、スポーツと緊急時のニュースくらいでは。前者を考えれば、たしかに、東京五輪に合わせて同時接続を始めるというNHK戦略は理にかなっています。が、後者に関しては、緊急時にはIDやパスワードなしでもネット視聴ができるようになるといいます。受信料の縛りに、ますます意味がなくなります」

 NHKは、民放5局が始めたネット無料配信サービス「Tver」にも参加することを明らかにしている。基本的に同じネット配信なのに、こちらはタダで、あちらは受信料契約があると観られる……。棲み分けもややこしくなりそうだ。

 民放から大反発を受け、コストだってかかる。どれだけ需要があるかも怪しい。それなのになぜ、NHKは「同時配信」したいのか。

「家庭の固定電話が辿る道と同じで、将来的にテレビでの受信料徴収が見込めなくなる。将来的に、スマホやPC視聴からも徴収できるようにするための布石でしょう。放送法上、今のところはスマホを持っているだけで受信料、とはなりませんが、今後はどうなるか。これまでは『テレビ持っていません』、あるいは『(ワンセグ機能のない)iPhoneです』もありえましたが、いまの時代、『ネット使ってません』はまずない。スマホを買う時に、強制的にNHKの受信契約を結ばせられる……なんて未来もあるかもしれませんよ」(先の局関係者)

 テレビとネット、そして“その先”をNHKは同時に視ている――?

週刊新潮WEB取材班

2019年3月14日 掲載

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